福徳人形(富山県・富山市)_20190225
海洋堂の源流?
かつて加賀百万石と謳われた前田藩の支藩であった、富山藩で生まれた富山土人形のうち、「福徳人形」という郷土玩具を張子にしました。
実物は2cmに満たない極小の土人形で、かつて駄菓子屋で「福徳袋」と呼ばれる袋に入れられて売られ子どもたちに親しまれていたそうです。
また全国的には「がらがら煎餅」「がらがら菓子」と呼ばれるものがありました。
「がらがら煎餅」「がらがら菓子」というのは、最中の皮や瓦煎餅などでつくった蛤(はまぐり)や鞠(まり)の形をしたものの中に小さな玩具を入れたものです。
富山ではありませんが、お隣の石川県金沢市にある諸江屋という和菓子屋さんでは年末年始限定の縁起菓子として、福俵や打出の小槌などに福徳人形や金花糖(木型に砂糖を詰めてつくる砂糖菓子)の入った「福徳せんべい」を販売しています。(↓これは楽しい。。)
要するに現在では「お菓子のオマケ」だったり「ガチャガチャ」に入っているような豆玩具ですよね。
中川政七商店と海洋堂がコラボした「日本全国まめ郷土玩具蒐集シリーズ」のようなものは、相当古くからあると言えます。
たくさんの種類がある福徳人形
福袋式の「当物(あてもの)玩具」ということで、この福徳人形は多くの種類があります。
※↓こちらの情報は訂正が下記にあります。
今回つくった犬、だるま、天神以外にも、鷽(うそ)、鳩、福良雀(ふくらすずめ)、鶏、牛、猫、亀、蛤(はまぐり)、鱒(ます)、鯛、金魚、桃などなど、、全部で25種あるそうです。
※2/26修正
instagramで富山土人形を制作されている方(@tuchihinさん:富山土人形を制作されている「土雛窯」の方)から、上記の種類のうち、富山の福徳人形では、金魚や猫はいないというご指摘を頂きました。
また鶏、牛、猫、亀、蛤(はまぐり)、鱒(ます)は「替えもの」と呼び、以前紹介した「鷽(うそ)」のように、神社に納めていたもので、これは福徳人形とは分けて考えるのが正しいそうです。
「福徳人形」と「替えもの」を混同して扱っていたことを反省するとともに、虚空に向けて放っているような自分のテキストが、実際の制作者さんの目に留まりフィードバックを頂けたことが、非常に有難く励みとなりました(いつかお会いして現物を拝見したりお話を伺いたいです)。
福徳人形以外の富山土人形
「福徳人形」というものは「富山土人形」という大分類の中のひとつです。
はじまりは嘉永年間(1848〜1855)と言われ、富山藩主の前田利保が藩の産業開発のために名古屋の陶工を招き窯を築き、その子が藩主の命で天神臥牛(菅原道真の使いである牛。〜天神の境内によく牛の像が祀られていますね)を献じたのが、富山土人形のはじまりとされています。
前田家は菅原道真を遠祖としているため天神さま(菅原道真)にまつわるモチーフが多いのはそのためです。
富山土人形の衰退と復興
江戸末期から明治までに最盛期を迎える富山土人形ですが、時代の推移による産業構造の変化などで衰退していきます。
また戦災で原型や窯のほとんどが焼失し、戦前までは数軒いた制作者も渡辺信秀氏がひとりで制作していました。
個人的には渡辺さん作の犬の土人形がとてもかわいくて好きです。
その渡辺氏も高齢になり(2003年に逝去)、後継育成のために人形作りを教えていたグループが「とやま土人形伝承会」「土雛窯」として土人形の伝統をつないでいるようです。
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【張子制作MAP】
18/47。中部地方は残すところ、新潟県、石川県、福井県、長野県、岐阜県の5つです。
【バックナンバー】
<北海道>
・木彫りの熊とセワポロロ(北海道)_20190122
<東北地方>
・下川原焼土人形/鳩笛(青森県・弘前市)_20190126
・犬っこ(秋田県・湯沢市)_20190127
・相良人形(山形県・米沢市)など_20190128
・堤人形/赤芥子(あかけし/宮城県・仙台市)_20190129
・三春駒(みはるごま/福島県・郡山市)_20190130
・花巻人形(岩手県・花巻市)_20190201
<関東地方>
・黄鮒(きぶな/栃木県・宇都宮市)_20190204
・横向き虎(茨城県・ひたちなか市)_20190205
・虫切り獅子頭(群馬県・高崎市)_20190208
・鷽(うそ/東京都・江東区)_20190123
・佐原張子(千葉県・香取市)_20190209
・鴻巣の練り物(埼玉県・鴻巣市)_20190211
・大山独楽(神奈川県・伊勢原市)_20190220
<中部地方>
・鬼の豆面(愛知県・豊橋市)_20190131
・甲州親子だるま(山梨県・甲府市)_20190221
・浜松張子(静岡県・浜松市)_20190222