HARICOGRAPHY_2022 WINTER Flyer

　日が短くなり朝夕が冷え込む近頃、すっかり秋を迎えて冬支度といった頃合いでしょうか。張子屋としては年末年始の干支・縁起物張子を制作する日々です。制作に追われつつ今年を振り返れば世界中が激動の一年で、人類の過去・現在・未来について考えさせられることもしばしばでした。そんな中でも人類の都合とは一切関係なく絶え間なく移ろう春夏秋冬が、ただ存在していること自体の“美しさ”や“希望”を強く感じた一年でもありました。季節の“美しさ”や“希望”に対して人はいかなる関係を結んできたか、その関係性をかたちに成したものが、季節行事にまつわる人の営みが生む様々な物事なのでしょう。私のつくる干支や縁起物の張子もそういったものであることを願います。
　2023年の干支は「卯（うさぎ）」。昔から人と身近な動物であるためか、神話や民話の類で多く親しまれています。たとえば「因幡（いなば）の白兎」、「月うさぎ伝説」、「うさぎと亀」など、これらのお話に出てくるうさぎはどれも、どこか無邪気さが原因で失敗や悲劇という結末を迎えてしまいます。けれどもその無邪気さ故に愛すべきキャラクターであるとも言えますね。そんなうさぎにあやかって、2023年は失敗を恐れず高く跳躍できる年となりますように。

HARICOGRAPHY 渡部剛（2022年10月 木々の葉も落ち始め烏瓜の橙色が目立ってきた西荻窪にて）