宮島の鹿猿(広島県・廿日市市)_20190719
瀬戸内海に浮かぶ名勝、厳島神社
今回は瀬戸内海にある日本三景の一つ、厳島(いつくしま/通称:宮島)。その島には1400年の歴史を誇り、世界文化遺産としても知られる厳島神社があります。海の中に建てられた鳥居をはじめ、海に浮かぶようにつくられた美しい境内や社殿など、汐の満ち引きで表情が変わる光景が素晴らしい、一度は訪れてみたい名勝です。
また平清盛が信仰したことで発展した神社としても知られており、『平家物語』には清盛の夢枕で、「厳島の宮を造営すれば、必ずや位階を極めるであろう」とのお告げを聞いたというエピソードが残されています。
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宮島へ渡った鹿と猿
今回は鹿と猿をモチーフとして手びねりの土人形や張子としてつくられる「宮島の鹿猿」を張子にしました。
なんで鹿と猿がモチーフになっているのかと言うと、かつて宮島に海を渡って鹿がやってきたという伝承があり(奈良のように保護はされていませんが実際に生息しているそうです)、その後猿も増えていったそうなのですが、鹿の背中に猿が乗って島に渡ってきたというのが、この郷土玩具のかたちの元になっているようです。
現在は観光地の負の側面と言いますか、餌付けされて人馴れし繁殖した鹿や猿(特に猿)が人へ被害を与えたり、環境に負荷をかけてしまっているようで、地域問題化しているようです。
郷土玩具の張子制作にともない日本各地を調べていると、こういった「地域資源」が逆に「地域問題」となってしまう例も出てくるので複雑な気持ちになります。。
宮島張子
『郷土玩具辞典/斎藤 良輔(編)/東京堂出版』によれば、明治末期まで「鹿猿」は存続しており、そこから長らく中絶するも、大正末期に復活して今に至るそうで、その時々でフォルムなどデザインの変遷があります。現在の手びねりの土製「鹿猿」は、宮島内のお土産物屋か宮島町伝統産業会館で入手可能なようです。
ちなみに宮島町伝統産業会館では厳島神社を建てるために集められた宮大工や指物師(たんす,長持,机,箱火鉢など板を差合せてつくる木工品の専門職人)の流れを汲んだ木工品の宮島細工を購入したり制作体験ができるようです(なんともみじ饅頭もつくれる!)。
とまあ、もともと「宮島の鹿猿」は素朴な土人形なのですが、この宮島には張子の歴史もあり「宮島張子」と呼ばれるものが存在します。
昭和50年頃に宮島細工をつくる職人さんが始めたのが起こりで、美しい彫りで特徴を出す宮島細工とは対照的に、張子特有の丸みを帯びたフォルムに色彩豊かに着彩され、温暖な気候ならではのカラフルな色使いです。
宮島にある宮島民芸工房というところでつくっています。
つくり方は通常の張子が型の外側に和紙を貼っていく「オス型成形」に対し宮島張子は和菓子や落雁と同様に、型に対して内側に和紙を貼っていく「メス型成形」だそうです。
ちなみに我が家で所有しているのは「白ふくろう」。
他にも今回つくった「鹿猿」をはじめ、厳島神社に奉納される舞楽の陵王や、鷽(うそ)などたくさんの種類の張子がつくられています。
こちらは僕のつくった鹿猿です。ところで猿が持っているの何だろう?
いつか宮島民芸工房に行った時に聞いてみたい。
【張子制作MAP】
33/47。中国地方は島根県、山口県を残す2県となりました。中国地方も魅力的な土地がたくさんあって、特に古事記関連の土地はいつか巡ってみたいです。