開業に必要な3つの鏡
開業までのプロセスには多くの苦労が伴います。
意思決定の連続で選択疲れを起こすほどです。
その中には間違えたら一生を棒に振りかねない選択もあります。
意思決定での失敗を防ぐため「3つの鏡」を意識して難局を乗り越えていきました。
体力勝負
はっきり言うと、開業は大変です。私はかなり順調に事が運びましたが、それでも身に堪えます。人生でめったに経験することのない金額や、初めての手続きや業務の連続です。忙しさに翻弄され、疲れを超えてしまいます。
「なんか大丈夫な気がしてきたぞ!」って時が危険です。
そんなときは、セルフチェックが大事です。怖い顔をしていないか、疲れた表情をしていないか、洗面台の鏡で客観視します。怖い顔をしていたら、そういう時に重要な決定はしない。ちょっとでも良いので、違うことをしてリセット。マラソンで言うと、走りながら太ももをペシペシたたく感じです。休むというより、気持ちをリセットする感じです。これだけでも全然違います。
タイパとコスパのいい読書
そして自主勉です。開業は大変ですが、みんなが通った道です。しっかり舗装されています。豊富な前例があるので、数冊の参考書に目を通すだけでなんとかなります。
むしろ重要なことは、開業ノウハウよりも幅広い分野の本を読むことです。読書で異分野の世界に触れて、視野を広げることが大切です。
歯医者をやっていると、どうしても視野が狭くなります。
視野がどんどん狭くなっていき、考え方が凝り固まってしまいます。
誰かが勝手に決めた保険点数の増減に一喜一憂するようになり、個別指導におびえながら、レセプト請求をこねくり回す人生なんて、楽しいのでしょうか。
私の尊敬する出口治明さんは「メシ・風呂・寝る」の人生から「人・本・旅」への変革を訴えられていました。
人と話して、たくさん本を読み、旅に出て刺激をもらう。
この中で読書がもっともコスパもタイパもいいです。
図書館に行けばタダで読み放題です!超高価で入手困難な「貞観政要」だってタダで読めちゃうんです。昔は門外不出の秘伝書であったものも、普通に入手して読める。凄い時代です。
偉くなったと勘違いしやすい医療従事者こそ、異分野の読書で世界を広げなければなりません。
第三の鏡
開業時には巨額のお金が動きます。そのため、甘い言葉ばかり吹きかける人が寄ってきます。
先生の力になりたい
先生のためを思って
先生は素晴らしい!
こういうことを言う人たちには注意してください。マーケティングリサーチとかいう、もっともらしいデタラメな数字の羅列をもってきて、バラ色の開業医人生を夢見させる。あなたを踏み台にして儲けたいだけです。
「お前はバカか。それは間違っている」くらい言ってくれる人が大切です。
開業のときも、今のスタッフにも私の年下はいません。
院長が一番若いんです!
だから、みんなが臆することなく言ってくれました。
久しぶりに親父に怒られました。
ダメなことは忖度せずはっきりと言ってくれたおかげで、無事に開業できたのです。
開業時も、開業後もそうですが、お山の大将になったら終わりです。
特に歯医者は患者さんから「先生」と言われるため、ふんぞり返りやすい。
人は必ず間違える。そして間違いに気づかないものです。
その間違いを忠告してくれる人を大切にしなければならない。
間違いを指摘してくれる人は本当に貴重な存在です。
「あなたは間違っている」と面と向かって進言することは、なかなかできることではありません。
言われる側もそうですが、言う側だって気分が良いわけがない。
だから、ほとんどの人は言わない。言って人間関係をこじらせるくらいなら、曖昧にするでしょう。こんな時代ですから。
だから三鏡のなかで人の鏡が最も大切なのです。
開業はとても大変です。ですが今振り返っても、まったく後悔していません。独立したほうが自分らしく生きている感じがします。