もちつき
餅を作るには、時間と手間がかかる。
昔だったら、じいちゃんばあちゃんも含め家には多くの大人がいたので、作ることも出来たのかもしれない。
今は核家族で親も働いていて忙しく、
また地域では数年のコロナ禍で集まることが出来なかった影響か、ご年配の方々もすっかり腰が重くなってしまったおかげで、自治会などでの餅つきイベントも大分減ったと聞く。
もちろん餅はスーパーに売っているし、それこそ食べなくたって済む物かも知れない。
ただ、つきたての餅はうまい。
先日、自治会の餅つきに参加した、
地元の大勢の人が関わって作ったこの食べ物は、子どものみならず、大人だって笑顔にしていた。
顔が見えるからだ。
作った人の顔が見えるし、美味しそうに食べている顔も見える。
ヒーヒー言いながら杵をついている誰かのお父さんの顔、それを笑顔で煽ってる自治会のおじいちゃんの顔、おしゃべりしながら餅をちぎってるPTAのお母さんの顔、目をキラキラさせながら臼を見つめる子どもの顔。
その場でしか見えない顔がある。オンラインでは感じる事の出来ない顔がある。
子ども達から見ると、普段は関わり合いのないノッペらぼうな大人も、こういう地域イベントを通じてだんだん顔が見えてくるのだろう。
顔が見える関係。大人は地域の子ども達を気にしてくれて、子ども達は地域の大人から無条件に愛されていると感じる。
それが地域の繋がり、という事かも知れない。
餅つきで握力のなくなった手をぷるぷる振るわせながら、つきたてのを頬張ると、それは温かくって、優しさの味がした。
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