ドラゴンメイドと出張を考える話
平素よりお世話になっております、渡部です。
本記事は、筆者が【ドラゴンメイド】を構築・運用・改善する際に考えた事を、ちまちまと書き足していったものです。
なお、あくまで「考えた」話であって「解説」や「指南」の類ではありません。娯楽記事です。執筆開始時期の関係で、情報が古い場合も考えられます。予めご了承ください。
前提として
本記事における「出張」とは、大部分がテーマAで構成されたデッキに、極少量のテーマBを混ぜる事だと定義します。また当記事内ではその意味を、テーマAの補助・補強を目的としたものである、とします。
ここで言うテーマAとは、特定の挙動を中心とする単一テーマである事が多く、テーマBとは、テーマAとは全く違う挙動をするテーマと考えております。
例として挙げるなら、【トリックスター】に《超魔導竜騎士-ドラグーン・オブ・レッドアイズ》の出張セットを採用するようなものです。これはテーマAを補強する出張とはやや意味が異なりますが、デッキパワー自体は間違いなく上がっている為、強くはなっているでしょう。
似て非なる例として、【幻影彼岸】を挙げましょう。このデッキは、両テーマが同じLv3モンスターを複数展開する能力、墓地で効果を発動するカードが多いなど類似点が多いのが特徴で、組み合わせた時デッキとしてのまとまりが非常に良くなります。
時の環境デッキとして名を馳せた事から、その噛み合いの良さは実証済みと言って良いでしょう。また、このデッキに対して、どちらかがもう一方の出張と呼ぶプレイヤーはいないと思います。むしろ後に追加された《電脳堺姫-娘々》や、《サイコウィールダー》《サイコトラッカー》等が出張していると言えるかもしれません。
本記事では、【ドラゴンメイド】に対する、
1:《ブルーアイズ・ジェット・ドラゴン》を軸とする青眼出張
2:《D-HERO デストロイフェニックスガイ》出張
について記述しました。一応ですが、勇者ギミックの出張についても少々書き足しておきましたが、メイドとは相性が悪いと断じておきます。
21.12現在のトーナメントシーンは正しく出張環境と言って差し支えなく、様々なデッキが勇者やデスフェニを採用し、対策も出張を前提としたサイクルが回っています。
しかし、かつてドラグーンが出張していた時と違い、これから紹介する各ギミックはゲーム決定力が高くありません。トーナメントシーンでに活躍するぐらいには影響力はありますが、文字通りそれ一色に染め上げるまでの力はないのがポイントです。
前述の【幻影彼岸】のように、圧倒的な相性で以て、一つのデッキとして完成するレベルの噛み合いの良さならいざ知らず、本記事で紹介する出張ギミックは、デッキを構成するメインテーマに対し極わずかですがズレが生じています。このズレをどう考えるかも、出張ギミックを採用するかどうかを決める要素になるでしょう。
青眼出張
個人的な感想にすぎませんが、メイドと組み合わせた時最も力を発揮するのが《ブルーアイズ・ジェット・ドラゴン》採用まで、と考えています。巷では《ブルーアイズ・タイラント・ドラゴン》も採用する動きが見られますが、筆者はそこまで採用する必要はない――もっと言うならメイドには不要と思っています。
理由は後述するとして、ジェット採用に必要なパーツは以下の通りです。
青眼本体とジェットの採用枚数に関して異論は少ないと思います。霊廟が三枚確定ではない理由としては、一ターンに一枚の使用制限がある事、霊廟自体に相手への攻撃・妨害能力がある訳ではない事等が挙げられます。墓地肥やしが重要なメイドであっても、中盤以降は役割を持てなくなるのもマイナスでしょう。
この出張の核は霊廟にあります。
霊廟一枚で出張ギミックの準備が整う点や、メイドとの相性の良さから採用数を増やしたくなります。しかし、後になって無駄引きしてしまう可能性を抑えたり、出張枠をギリギリまで抑える事でデッキスロットに余裕を持たせたりと、採用数を絞る事に意味がない訳ではありません
無論、三枚採用した際の初手率や、メイドの初動安定化に寄与する霊廟が弱い訳ではありません。現代遊戯王における墓地アドバンテージの重要性は言うに及びませんが、それは墓地を活用できるカードが機能すればこそ。特にメイドであれば、変身効果の重要度が高い割に、メイド本体に耐性がない為容易に対処されてしまい、墓地の活用に至らないシーンが多いのも事実。
この辺りは個人の肌感覚や利点欠点のトレードオフとなるでしょう。
青眼出張:利点
ジェット出張の最大の利点は、デッキスロットの圧迫や、出張にあたって発生する不純物が最小限に抑えられる点です。
ジェットギミックの核である霊廟は、そもそもメイドと相性の良いカードであり、デッキの中で完全に浮いているカードが青眼二枚になる点は、他の出張セットとの大きな違いになるでしょう。
霊廟の採用は不純物要素の減少だけでなく、《ドラゴンメイド・ナサリー》や《ドラゴンメイドのお心づくし》などの、初動にならないカードが機能し始める副次的効果も見込めます。さらに、霊廟に対して《灰流うらら》を相手が発動すれば、本命であるメイドの効果が通りやすくなるなど、見えにくい利点もあります。
次点のメリットとして、現在環境で流行中のデスフェニに対して極めて強く機能する点が挙げられます。デスフェニの破壊効果によってジェットの特殊召喚条件を満たし、ジェットが場にある限りジェット以外のカードを破壊から守る事ができます。
デスフェニに限らず、OCGから破壊が消える事はあり得ない為、今後の環境の推移に左右されない強さが保証されている点も見逃せません。墓地送りや除外には無力である為過信はできませんが、少なくともデスフェニや《流離のグリフォンライダー》による破壊が除去の中心にある間は、有用性が担保されていると言っても良いでしょう。
コンパクトに済む出張枠ながら、対戦環境に対してメタが張れるギミックと言うだけで優秀なのですが、メイドの場合、アドバンテージを得る為に重要な変身を守る役割をこなしつつ、使い減りしない融合素材としても一役買う等、相性の良さは他の出張と比べて一線を画します。
また、火力の大幅な向上が挙げられます。打点3000は融合しなければ出せない数値であり、上級メイドのわずかに足りない打点を補う上でも、使い勝手が良いと言えるでしょう。仮に打点を超えられなくても、ジェットには戦闘時に相手の場のカードをバウンスする事ができる為、突破能力は申し分ありません。
破壊であれば自分・相手問わず蘇生効果が発動する為、一見して削りきれないライフポイントを刈り取れるシーンが増えます。メイドであれば、《ドラゴンメイド・ハスキー》による効果破壊はもちろん、相手モンスターを戦闘破壊しても特殊召喚の条件が整う為、ジェットによる蘇生・追撃がしやすいと思われます。従来のメイドでは難しかったショットキルがし易くなる事からも、青眼出張は特に攻撃面が強化されるギミックであると言えるでしょう。
青眼出張:欠点
まずはデッキスロットの圧迫が挙げられるでしょう。メイドはデッキスロットに余裕のあるテーマである、と巷では認識されているようですが、それは事実半分虚構半分と言った所でしょうか。
確かにテーマとしての必須枠に加え、《灰流うらら》等の汎用必須枠を揃えてもなお十枚前後余裕があると言われますが、対戦環境で勝とうとするとすぐに埋まる枠数だと思います。つまり、対環境を見据えた採用のいくらかを削って出張枠を確保しなければならない、と言う事になります。
前項にて、青眼出張は攻撃面が強化されると述べましたが、同時に対応力を失う出張であると筆者は考えます。ここで言う対応力に相当するカードとは、例えば《幽鬼うさぎ》などの採用必須ではない手札誘発だったり、《バージェストマ・ディノミスクス》や《神の通告》と言った罠が該当します。
ジェットが場に居れば破壊耐性を得られるのは大変魅力的ですが、ジェットを場に呼び込むには条件があり、どうしてもワンテンポ遅れてしまう欠点を抱えています。またメイドができる除去はお片付けによるバウンスが主であり、ハスキーの破壊効果は状況を整えなければ使えません。能動的に運用できない点は、分かりやすい欠点と言えるでしょう。
除去をモンスターだけでなく、魔法・罠にも向け、ジェットの蘇生効果を発動しやすくする工夫が必要です。その際採用を検討したいのが《サイクロン》のような汎用除去ですが、現環境では《コズミック・サイクロン》が優先されやすく、同時に魔法・罠を伏せてくる相手が限定的な事も、ジェットを難しくしている要因です。
余談ですが、魔法・罠に対する除去を、シュトラールの無効効果で賄おうとするのは不可能です。これは、魔法・罠の無効破壊と、ジェットの蘇生トリガーである「場のカードが破壊された場合」の条件が合わないパターンがある為です。
手札から発動した魔法・罠や、セット状態から発動した魔法・罠に対して、シュトラールの効果を発動し、発動自体を無効にし破壊した場合、これらは場で破壊された扱いを受けません。これはシュトラールに限らず、《神の宣告》等の召喚行為そのものの無効、魔法・罠の発動無効を含んだ破壊効果は、同様に場で破壊した扱いにならないルールである為、蘇生トリガーにならないのです。
対して、既に表側表示で存在する永続魔法・永続罠の効果の発動であれば、シュトラールの効果で無効にし破壊しても、蘇生の条件を満たす事ができます。永続魔法扱いのペンデュラムカードや、永続罠扱いの《V・HERO インクリース》についても同様です。
この辺りは遊戯王カードWikiの「無効」のページが詳しいので、後学の為にも是非ご一読くださいますようお願い申し上げます。
デスフェニの流行により《屋敷わらし》や《墓穴の指名者》等の採用率が上がっている点も向かい風であり、せっかく準備を整えても《青眼の白龍》本体を除外される等、機能不全を起こしてしまう可能性も否定できません。特にメイドは墓穴が効きにくいテーマなので、汎用手札誘発以外に撃つべき何かがないのなら、相手は嬉々として青眼を撃ち抜いてくるでしょう。
もちろんメタが分散する利点もあります。しかし、ジェットは相手に見えているギミックであり、且つ対処が容易な部類である為、ゲーム展開によっては囮になりにくいのが難点です。《増殖するG》やうららが本命なのに、ジェットの蘇生効果が受け身である事から、発動タイミングが来る前に本命を動かさざるを得ない、などと言ったシーンが散見されるかと思われます。
筆者は元より、メイドはメイドとして戦った時が最も強いと認識しており、余程相性が良くなければ出張はしない方が強いと考えています。現在流行のデスフェニ出張も、ギミックが融合テーマである点や、圧倒的なカードパワー、対戦環境が出張を軸に動いている点などから、採用しても良いとは思っていますが、圧倒的な相性の良さまでは感じていません。
ジェット出張は霊廟のサポートが重複している点や、同じドラゴン族である事から、デスフェニを凌ぐ相性の良さを発揮していますが、ギミックとして機能するまで手札やデッキスロットを圧迫する事は変わりません。どの出張にも言える事ですが、正しく機能しなければ出張パーツはお荷物でしかないのです。
また、多くのプレイヤーが叫ぶ、素引きしても融合素材になるからゴミ化しにくい件ですが、これはあまりにも消極的な考えだと思っています。
現代遊戯王は昔と比べてかなりシビアな戦いを強いられており、有名プレイヤーが口酸っぱく「事故らない構築を」と発言している以上に、たった一枚でも機能しないカードが手札にあれば、それだけで苦しくなるのが現在の対戦環境だと思っています。だからこそデスフェニ出張でも、《D-HERO ダッシュガイ》や《D-HERO ディヴァインガイ》の素引きで悶絶するプレイヤーが後を絶たない訳でして。
ジェットに関しても同じ事が言えます。現在主流のデッキレシピでは、メイドが初ターンで融合するのは稀であり、多くがメイドの通常召喚と罠の敷設で終わる事が多いと思われます。そんな中で青眼本体やジェットを素引きすれば、本来引いていたかもしれない手札誘発や罠も構えられず、防御が薄いまま手番を渡してしまう可能性が広がります。
いくらデッキスロットが最小で済むからと言っても、連戦を強いられる大会を前に事故要素を増やすのは、相応の覚悟が必要になるでしょう。
青眼出張:タイラント
ジェットを出張させた上でメイドと相性が良い、と言う理由で搭載しようとするプレイヤーが多いようですが、筆者の中では評価が低いです。これはデッキ構築の際に採用する壺や汎用罠などによっても変わってきますが、それを差し引いても採用する理由が乏しいと考えます。
タイラントを【ドラゴンメイド】に採用する利点ですが、大雑把に以下の二点が挙げられます。
1:打点3400の全体攻撃
2:メイドが採用する罠と好相性
前者はそのまま相手の前盤面を一掃する圧倒的攻撃力が魅力です。メイドの主戦力たる《ドラゴンメイド・シュトラール》に100及びませんが、その分相手モンスター全てに攻撃でき、上級メイドが持つ破壊耐性も併せてライフカットが非常に捗るかと思われます。
後者においては、《ドラゴンメイドのお片付け》と組み合わせる事で相手のカードだけ手札に戻せたり、《無限泡影》や神罠を再利用したりと守りにも適した効果を備えています。
しかしタイラントには、メイドと組み合わせて運用するのが難しい理由がいくつか存在します。
まず召喚自体が難しい事。タイラントは特有の召喚条件か、融合召喚でなければEXデッキから呼び出す事ができません。《やぶ蛇》等で条件を無視して特殊召喚できない、と言う事ですね。
融合素材に《青眼の白龍》本体を指定されているのが問題で、ジェットとの兼ね合いからすぐに墓地に送られる為、融合素材になる事がほぼないと考えられます。一部では、素引きしてしまった青眼本体を使って融合する、と豪語するプレイヤーもいるようですが、序盤ならシュトラールを呼びますし、中盤以降は霊廟等で墓地に送られ融合素材にできない場面が多いでしょう。
さらに、EXデッキに強力なカードが集中しているメイドにおいて、タイラントにどれ程枠を割けるのか、そもそも疑問です。
以前の壺の話でも申し上げたように、《強欲で金満な壺》を採用するなら採用数を増やさざるを得ず、EXデッキの自由度が著しく低下します。その場合、従来の固定枠九枚にタイラントを適量追加する為、《ストライカー・ドラゴン》やその他自由枠に皺寄せが来るでしょう。《金満で謙虚な壺》を主軸にするなら、融合召喚が難しいタイラントよりも、思考停止でデスフェニを採用した方がよほど強いと言わざるを得ません。
ただでさえ場に呼びにくいタイラントの為に、貴重なEX枠を割けるのか、よく考えて採用するかどうかを決めなくてはなりません。
最大の問題点が、利点でも述べた罠との相性です。
罠コンボは一見強力そうに見えますが、前述の通りそもそも場にいる事が稀である上、罠以外に耐性を持たない為場持ちも悪く、一発ネタの域を出ません。この時点で、相性こそいいものの、実戦で活躍するか疑問視する理由になります。
また戦闘後の罠セット効果ですが、こちらも21.12現在の環境下ではあまり有効とは言えない状況です。一度使った罠を復元できるとあれば、強力な効果を持つカードを選びたい所ですが、その為にはまずデッキ構成から見直す必要が生まれます。必然的に罠重視の構築になるでしょう。
しかしデスフェニや勇者の出張が流行している今、発動までにワンテンポ置く罠は、ゲームスピードに追いつけません。魔法対策になる《魔封じの芳香》《王宮の勅命》の採用率上昇に伴い、《コズミック・サイクロン》や《ツインツイスター》等の速攻魔法による魔法・罠除去が主流になった事も向かい風です。これにより、そもそも罠に信用をおけない状態になっています。
以上の理由から、青眼出張におけるタイラントは評価が低い、と筆者は考えています。これが出張ではなく、純【青眼】なら融合召喚の機会も多く、効果も十分生かせる構築・構成になると思います。
ですが、本記事はあくまで【ドラゴンメイド】に対する出張の是非を考える内容である為、このように結論付けました。
デスフェニ出張
21.12現在、どのデッキであっても、採用できるならした方が強いと話題の出張セットです。この場でわざわざ説明しなくても、その強さは皆様の方が良くご存知でしょう。必要パーツは以下の通り。
自身のデッキに応じて、採用する融合素材に違いが現れるぐらいで、出張パーツについては固定と思って構わないでしょう。採用される融合素材としては、ダッシュ+ディヴァインが主流で、次点に《D-HERO ディアボリックガイ》+《D-HERO ディナイアルガイ》でしょうか。
前者の組み合わせなら、出張先のデッキを選ばず、メインテーマの動きを邪魔しない馴染みやすさが特徴です。後者の場合、融合素材となった二体の展開力が強力であり、手番を跨げば強力なリンクモンスターを呼びやすくなるなど、組み合わせに応じたメリットがあります。
デスフェニ出張:利点
この出張における強さは、採用するパーツ全てがいずれも強力である点です。
融合する為のフュージョンDはデッキ融合が可能であり、カード名によりアナコンダの効果範囲である点や、素引きすればデッキ本来の展開後に発動して盤面が強固になる点が挙げられます。
前述の通り、出張は機能するまでにラグがあればあるほど弱くなります。ですがこの出張の場合、他とは違い圧倒的に準備が容易であり、その結果も期待できると言えます。
青眼出張の場合、霊廟を素引き出来なけばギミックの準備もおぼつかい事を考えれば、如何にデスフェニ出張が即効性に富んでいるかが分かります。
融合召喚されるデスフェニは、誘発即時効果による除去能力や、破壊されても復活する事から、不死鳥と言うよりもゾンビじみたしぶとさで相手に圧をかけ続けます。攻撃力ダウン効果も、わずかに足りないメイドの打点を補う上でも有効です。
除去効果は自分の場のカードも破壊する必要がありますが、自爆する事で相手から受ける妨害を回避し、仕事をこなしてくれます。次のターンに復活できれば、同じ仕事を繰り返し、制圧力が落ちません。
この自爆除去と復活のループを止めるのは難しく、一番の対処は召喚を阻止する事です。しかし、前述の通りアクセスが容易であり、特に厄介な素引きフュージョンを防ぐ為に、相手のうらら発動をギリギリまで渋らせる(=それ以外の通りが良くなる)など、プレイングにも影響を及ぼす程警戒されている一枚と言っても過言ではないでしょう。
また採用される融合素材も、全く機能しない不純物にならない点が強力です。
かつて流行したドラグーン出張の際は、融合素材に通常モンスター二種を採用しなければなりませんでしたが、この出張の場合効果モンスターである事、それらは墓地で効果を発揮する事が大きな違いになります。
デスフェニにはドラグーン程の決定力はありませんが、無駄になりにくいカードで出張パーツを構成できる点は、費用対効果に優れていると言えるでしょう。
メイドに出張させた場合、単純に構えられる妨害が一手増えるだけでなく、うららの使い道が限定される為にメイドの効果が通りやすくなるなど、分かりやすい利点を得られると考えられます。
一発ネタの域を出ませんが、デスフェニが存在する事で上級メイドが破壊耐性を得る為、デスフェニの除去効果で上級メイドを選べるようになります。これによりデスフェニが墓地に行かなくなる為、相手が狙っているであろう墓穴を回避できるなど、癖がありながらも意味のある運用が可能です。
メイドはゲームが長引けばアドバンテージを稼ぎやすく、勝ちやすくなるテーマですが、デスフェニの挙動はまさにゲームの長期化に向いており、メイドが得意とするゲーム展開に持ち込みやすくなる出張と考えられます。
出張させる際に採用する融合素材も、メイドの場合ダッシュ+ディヴァインになると思われ、これらの効果も長期戦向けの効果です。前述の青眼出張ほどデッキ全体の噛み合いは良くありませんが、採用して弱くなる出張ではないでしょう。
デスフェニ出張:欠点
前述のようにデッキスロットの圧迫が問題ですが、この出張の場合、青眼出張よりも圧迫の度合いが酷いと言えます。
メインデッキの五~六枚に加え、さらにEXデッキに二枚の枠を用意しなければならず、EXデッキに枠を取っている以上採用する壺にも影響が及びます。その為デスフェニを出張させる場合、デッキ全体の構成を見直す必要があるでしょう。
具体的には、金謙を主軸とした構築に変え、この出張において重要なデスフェニとアナコンダを使える状態に保たなければなりません。
強金の場合デスフェニ本体が除外される可能性があり、メインデッキに採用した出張枠五枚分が無駄札になりかねません。アナコンダが除外された場合、フュージョンDを素引きできなければデスフェニを呼べなくなり、メイドにとって邪魔な融合素材をドローしてしまう可能性が高まります。
デスフェニ出張は準備の簡単さが売りなのに、その強みを潰すような強金は使えないでしょう。
多くのプレイヤーが嘆く融合素材の素引きも欠点です。
メイドにとってデスフェニの融合素材は、その動きに何ら寄与しない邪魔なカードです。青眼出張の場合、最悪シュトラールの融合素材にしてしまうと言う逃げ道がありましたが、デスフェニ出張の場合その逃げ道すらありません。
こう言うと、例えば《禁じられた一滴》やディノミのコストにすればいいと言う方もおられると思います。しかし、それができるのはディアボ+ディナイアルの組み合わせであり、主流のダッシュ+ディヴァインではほぼ不可能と言えます。
ダッシュ+ディヴァインは、そもそもデスフェニを融合召喚する為だけの素材です。フュージョンDを発動する前に墓地に送ってしまうと、本命のデスフェニを呼べなくなり、後々ドローしてしまうかもしれないフュージョンD等の出張パーツが機能を失ってしまいます。
勝つ為にやむを得ず融合素材としての役割を捨てるにしても、ディヴァインは発動コストとしてもう一体D-HEROを除外しなければならず、ダッシュを墓地に送らなければ役に立ちません。ダッシュは単体で墓地にあっても役に立ちますが、リターンはささやかなものと言えるでしょう。
ディアボ+ディナイアルは、融合するまで後生大事に抱える必要もなく、繰り返し展開できる点が強みとなります。その過程でデスフェニを呼べるこの組み合わせは、前者との大きな差別点になるでしょう。
しかしこれは、ギミックとしては優秀ではあるものの、出張としてはいささか引っ掛かりを覚える要素です。ギミック内で完結するのは魅力ですが、デッキのメインテーマとの噛み合いを無視しているように見えます。
元よりメイドとD-HEROとでは噛み合いも何もあったものではありませんが、完全に浮いた状態にしてしまうと、手札に抱えた時のゴミ具合に拍車がかかってしまいます。
ダッシュ+ディヴァインではコストとして使う事もできない。融合するまで大事にしなければならない。しかし状況に迫られれば出張自体を無駄にしなければならない。かと言って手札コストとしての役割を求めてディアボ+ディナイアルを採用する場合、出張枠をより多く割く事になり、その分事故率も上昇してしまいます。
多くのジレンマを抱えたデスフェニ出張は、正しく機能しなければ出張パーツはお荷物である、を地で行く出張らしい出張と言えるのではないでしょうか。
後攻でデスフェニを使う場合は、アナコンダやフュージョンDの制約がメイドにとって重すぎるのも難点でしょう。ご存知の通り、メイドは上手に変身する事で少しずつアドバンテージを得ていくテーマですが、上記の制約はメイドの長所を潰すものです。いくらデスフェニが強力でも、メインテーマの補強にならないのでは出張させた意味が薄れてしまいます。
その他、《ドラゴンメイド・チェイム》やシュトラールと併せて《超融合》で吸われてしまったり、そもそもメイドが手札を貯め込みやすいテーマである事から、ディヴァインのドロー効果が機能しにくいなど、状況によって細々としたデメリットが考えられます。
個人的な懸念ですが、デスフェニの自爆により自陣の守りが薄くなるのも気になるところです。これは特に先攻一ターン目、素引きしたフュージョンDを即発動した場合によく起こるでしょう。
序盤ならまだライフポイントに余裕がある為許容できますが、中盤以降、ライフが少なくなればなるほど、デスフェニ単騎での除去効果はゲーム終了の危険度が上がると考えられます。
デスフェニ本体は破壊されれば次のターン復活の機会を得るので、壁としても優秀である点を考えれば、破壊しても問題ないカードを用意しておきたいところです。調べてみると、どうやらアーティファクトが注目されているようですね。出張分と合わせて枠の問題は未解決ですが。
勇者出張
デスフェニと比べると広く出張している印象はありませんが、一部の相性が良いデッキ等に出張しているパターンが散見されます。場合によってはデスフェニと一緒に出張している場合もあり、妨害だらけで相手にすると対処が難しくなるでしょう。
筆者の調べによると、意外にも《アラメシアの儀》本体が三枚フル投入ではないようです。水遣いによってデッキからのサーチできるだけでなく、墓地からのサルベージにも対応しているからと考えてよいでしょう。儀本体以外は全て確定枠です。
余談ですが、勇者ギミックを出張としてではなく主軸に据え、汎用カードでデッキを構成した【勇者グッドスタッフ】なるデッキも結果を残しています。他の出張とは違って強いコンボ性やシナジー性はありませんが、《クリッター》等の汎用カードで脇を固め、デッキとして形になるのは、デッキビルドパック産のテーマとしては順当な流れなのではないでしょうか。
勇者出張:利点
この出張がすべき仕事は、大きく分けて二つです。
一つ、メインテーマを動かす前の露払い。
一つ、継続的な妨害の生成。
前者に関しては【幻影勇者】や【勇者プランキッズ】のように、大量展開に対する相手の泡影や《原始生命態ニビル》への対策が主です。展開系のデッキが結果を残し分布が増えた事で、メインデッキにニビルを採用している例も増えた為です。
後者に関しては、《運命の旅路》を維持している事を前提とするものの、毎ターン壁兼妨害になるグリフォンライダーをサーチできるのは優秀です。グリフォンライダー自身が、無効効果を使うとデッキに戻ってしまう事を上手にカバーしているデザインになっています。
勇者トークンもグリフォンライダーも攻撃力は2000と抑えめですが、相手から受ける妨害がなければ、打点や壁としても運用可能な点も悪くありません。
メイドに採用した場合、勇者ギミックの発動に対し、相手が手札誘発を使ってくれやすいのが良い所です。水遣いの効果にはうららやわらし、アラメシアの儀には増G、グリフォンライダーにはうさぎや泡影と、メイドが嫌いやすい手札誘発を勇者ギミック全てに向ける事ができるでしょう。
勇者出張:欠点
勇者ギミックは確かに優秀ではありますが、やっている事はそこまで大袈裟な内容ではありません。水遣いから始動し、最終的にグリフォンライダーを場に呼び、備えるだけです。自分のターンなら勇者トークンにドラコバックが付き、バウンス効果で相手を攻める事ができますが、妨害の質自体はそこまで高い訳ではないのです。
それを踏まえた上で勇者出張を見てみると、少なくともメイドにとっては好ましくない欠点が見えてきます。
まず何よりも、デッキスロットの圧迫が酷いです。ジェットはメインデッキ五枚、デスフェニはEX枠も削られるとは言え七枚。対して勇者の場合メインデッキに九枚枠を割かなくてはなりません。
前述の通りメイドはある程度枠に余裕があるテーマですが、必須枠を除けば十枚前後しか余裕がありません。本来ならその枠に、対戦環境を見据えたカードを採用する所ですが、勇者を出張させる場合、その自由枠全てが勇者によって潰れてしまいます。
にもかかわらず、得られるリターンはグリフォンライダーによる妨害一枚だけ。如何に万能カウンターが強力とは言え、九枚分の枠を使ってまで用意する妨害としては、あまりにも質が低いと言わざるを得ないでしょう。
より致命的なのは、《アラメシアの儀》発動による誓約です。
儀を発動するターンは、特殊召喚したモンスター以外の効果が発動できません。これにより通常召喚した下級メイドの効果を使えない為、墓地肥やしもサーチも行えず、メイドとしての動きを自ら封じてしまう事になります。
《ドラゴンメイド・エルデ》やお心づくし、お片付けの墓地効果など、メイドの特殊召喚効果を使えば制約を回避した動きができますが、それが可能なのは中盤以降の話です。最も重要な序盤の動きとしては落第点であり、メイドの長所を潰す相性の悪さが見て取れます。
それでもなお勇者が一定の評価を得ている理由は、採用デッキとの相性による所が大きいと筆者は考えます。
現時点で知る、勇者を出張させた上で結果を残したデッキとしては、【幻影騎士団】【プランキッズ】が挙げられます。どちらも儀の誓約と相性が良く、展開した際はグリフォンライダー以外の妨害要素を複数用意できる点や、展開しきっても息切れしにくい点が似通っています。これらのデッキはどちらも、メインテーマのみでも十分な妨害を用意できるテーマであり、それに加えて勇者による妨害一手分の追加が強力に働くデッキであると言えます。
採用の是非
以上、三つの出張について論じましたが、いずれも一長一短である事がお分かりいただけたかと思います。
では実際問題、どの出張を採用すればよいのでしょうか。あるいは、出張しない方が強いのでしょうか。これを決めるには、まず自身が身を置く対戦環境について知る必要があるでしょう。
例えばcs環境なら、勇者を採用した【幻影騎士団】や【プランキッズ】が特に強力なデッキと言う認識で間違いありません。それらを強く意識するなら、メイドと特に相性が良い青眼出張は機能しずらくなると考えられます。
前者なら破壊による妨害よりも、《FNo.0 未来龍皇ホープ》や《幻影霧剣》による効果無効がメイドにとっては厄介であり、これらに対し破壊をトリガーに特殊召喚するジェットは活躍の場が限定的になります。
無論、《幻影騎士団ラスティ・バルディッシュ》やデスフェニ、グリフォンライダーによる破壊がありますので、完全に無駄と言う事はないでしょうが、相手が効果無効を得意としている以上、ジェットの攻撃時バウンス効果も失敗する可能性が高く、有効性は高くないと言えます。
後者の場合、考えられる妨害が《プランキッズ・ハウスバトラー》による全体除去やグリフォンライダーとなる為、一見して相性がいいように見えます。しかし実際の所は、バトラーの全体除去でメイドが吹き飛ぶ為アドバンテージを得られにくく、融合素材になったプランキッズが後続を大量に呼び込む為、相手がメイド以上にアドバンテージを獲得する盤面になりやすいと考えます。
当然火力を用意できない為攻撃が相手のライフに届かず、開いたアドバンテージ差で押し切られてしまうでしょう。ジェットが与える破壊耐性も、バトラーによって全て吹き飛んだ後では活かしきれず、ジェット単体では相手の盤面を崩し切るのは難しくなっているはず。
ジェットが無理ならデスフェニを、とも思いますが、上記二種は展開系のテーマであり、ショットキルが比較的容易なデッキです。ジェットにしろデスフェニにしろ、単騎で強い拘束力を持つ訳ではない為、自陣が切り崩された場合立て直しが困難な相手です。
これらを止めるには複数の手札誘発で展開自体を阻止し、自分の手番で必要な妨害を用意するのが理想ですが、そうなると手札誘発に枠を割く事になり、出張自体が難しくなると考えられます。安定して先攻を選択できるなら多少の余裕があるでしょうが、何度も対戦を繰り返すcs等ではそれも難しく、構築には頭を抱える事になります。
一方、公式イベントであるランキングデュエル等では、csと違って対戦相手がある程度固定である事が多く、開催店舗や開催地域に応じて方向性があるのではないでしょうか。その傾向を信じるなら、環境速度に応じて出張ギミックを選択できるようになります。
もしcsに似た高速環境なら、そもそも出張ギミックを採用する余裕すらないかもしれませんが、中速以下の対戦環境なら、前述した二種の出張を採用できる余地があると考えます。
中速帯で対戦しそうな相手には、【相剣】【鉄獣戦線】【エルドリッチ】等が想定でき、総じてこれらのデッキであればデスフェニが活躍しやすい相手です。対戦相手が出張でデスフェニを使ってくる環境なら、青眼出張が安定した動きを見せてくれるしょう。
当然ですが、出張ギミックを採用する場合は、それに合わせてデッキを微調整する事が必要になります。ジェットを活かすなら破壊による除去を増やす、デスフェニを活かすなら破壊耐性を持つカードを増やす等、より能動的に、より攻勢を強められる構築が望ましいでしょう。
ただ採用するだけではない、あなたが考える一歩進んだ強みを構築しましょう。
無論、いくら参加者が顔馴染みでも、YUDTのようなシングル戦であったり、敗北が許されない店舗代表戦のような、これまでの傾向を信用できないパターンも考えられます。場合によっては顔見知り間で凄惨なメタゲームが展開される場合もあり、予断を許しません。
番外編
自分が使う側の出張について述べる記事ですが、メイドで主流の出張に対しどう対策すればいいのかを、個人的な感覚で少々述べたいと思います。
個々の対策を考えるよりも先に念頭に置いてほしいのは、出張ギミックを打倒してもゲームに勝てる訳ではないと言う事。
かつてドラグーンが出張し環境を席巻した際は、ドラグーンさえ突破できれば勝ちやすい環境でした。大概一滴でドラグーンを含む置物を無力化し、その上で状況を逆転させやすかったからです。【サンダー・ドラゴン】や【召喚教導】など、置物を用意しやすいデッキが多かった事も要因の一つでしょう。
しかしそれは過去の話。現在は、突破しようとすれば自爆回避し復活するデスフェニがおり、旅路がある限りグリフォンライダーの供給が容易な勇者が存在します。前述の通りゲーム決定力こそ低いですが、ドラグーン以上の継続性が厄介です。
それぞれに対して有効な対策カードは多々あれど、その全てを採用するには枠が足りません。いくら有効だからと言って、デスフェニに対して安易に壊獣を採用する訳には行かず、旅路に効くからと言ってうさぎを積む訳にも行きません。手札事故のもとになります。
これらを相手取る時は、デッキを構築する際に、一枚のカードに複数の役割を持たせるよう心掛けると良いのではないでしょうか。この考え方は出張対策のみならず、通常の構築でも必要な考えですが、現環境は妨害が多様化した為に、機能の兼用がより重要になるでしょう。
例えばデスフェニ対策をするなら、《天球の聖刻印》に対する墓穴メタにもなるわらしを採用する等が挙げられます。
墓穴だけでなく《抹殺の指名者》対策にもなる《アーティファクト-ロンギヌス》も候補に挙がりますが、やむなく戦闘破壊で押し切る際、ダメージステップでも発動可能な点が好相性です。蘇生は言わずもがな、サルベージにも対応可能な効果範囲により、水遣いのサーチ効果にも有効である点は見逃せません。
直近のcs分布を見ても、上位を占める【幻影騎士団】【プランキッズ】【エルドリッチ】に対して有用性が高い事も評価点です。わらし一枚で広範囲を見られるのは、他の直接的な対策カードにはない利点です。
ただし、効果範囲に気を取られてパワーの低いカードを採用すると、その分デッキの運用が難しくなる事は覚悟しなければならないでしょう。
確かにわらしは使える手札誘発ですが、わらし自体が直接アドバンテージを生む訳ではありません。《D.D.クロウ》のように、相手に対して最も有効な一手に差し込んで初めて力を発揮するカードです。シビアな運用が求められるメイドとは、プレイヤーに対して優しくない選択になるでしょう。
他のデッキについては、筆者が門外漢である事もあって言及は避けますが、メインテーマの動きを補助しつつ、同時に環境対策、出張対策になるカードの模索・採用が望ましいと考えます。
おわりに
身も蓋もない言い方ですが、結局のところ、どれだけ環境に対して研究を重ねても、主戦力であるメイドに向かい風が吹いている以上、最後まで勝ち切るのは至難の業と言えます。上記の出張は確かに強力ではありますが、メイドの立ち位置を変えてくれる程圧倒的なパワーはありませんし、その結果が昨今のcsにおけるデッキ分布にも表れています。
唯一救いがあるとすれば、次回のリミットレギュレーションで、現在主流のデッキに対して規制が行われる可能性が高い事でしょうか。理由はどうあれ、暴れ過ぎだと筆者も思っています。記事公開の半月後には改訂情報が発信されると考えた場合、記事公開が遅きに失したと反省すべきですが。
しかし、元々【ドラゴンメイド】は対応力の高いテーマであり、環境の変化に応じて構築を変える事で勝ち星を上げてきたデッキです。苦手なデスフェニの流行で、安定的な破壊除去が行われるからこそ、ジェットが強く運用できる下地ができる等、積極的な出張採用が検討できます。
逆に、今後新規カードの登場やリミットレギュレーションの改訂等により、対戦環境からデスフェニの分布が減少すれば、ジェットは不安定化し、採用されなくなるかもしれません。何らかの変化があるごとに、デッキを調整し、適切な形に仕上げたいところです。
以上です。
今後の【ドラゴンメイド】の復権を願いながら、本記事を締めたいと思います。長い時間お読みいただき、誠にありがとうございました。
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