ドラゴンメイドと兵隊竜を考える話
平素よりお世話になっております、渡部です。
本記事は、筆者が【ドラゴンメイド】を構築・運用・改善する際に考えた事を、ちまちまと書き足していったものです。
なお、あくまで「考えた」話であって「解説」や「指南」の類ではありません。娯楽記事です。執筆開始時期の関係で、情報が古い場合も考えられます。予めご了承ください。
はじめに
「ドラゴンメイド」が世に出て早三年ほど。その間に多くの新テーマが登場し、メイドがシステムとしては型落ちして、そろそろ久しいと言えるぐらいになってしまいました。
22.7現在、対戦環境では、発売間もない新テーマ「スプライト」や「ティアラメンツ」が幅を利かせています。特にティアラメンツに至っては、直近のリミットレギュレーションの改訂で無傷である事から、今後環境トップに居座る事が予想されていますね。
そんな中ドラゴンメイドはと言うと、最後に新規サポートが登場したのが11期最初の通常弾、2020年4月発売の「RISE OF THE DUELIST」に収録された《ドラゴンメイドのお片付け》が最後であり、現在に至る二年以上、新規サポートが未登場の状態が続いています。
一応、直接的な新規ではないものの、併用可能な出張ギミックとして《D-HERO デストロイフェニックスガイ》が採用されたり、《烙印融合》を組み込んだデッキが研究されたりと、デッキ単位での更新は続いておりました。
しかし、上記出張ギミックもリミットレギュレーションの規制を受けた為に、メイドとの単純併用は難しくなっています。
今現在【ドラゴンメイド】を構築した場合、手札誘発をふんだんに採用した純構築か、素引き前提の烙印型かの、二通りが考えられるでしょう。前者はいろいろとパワー不足、後者は《烙印開幕》が制限、《烙印融合》が準制限かつ《捕食植物ヴェルテ・アナコンダ》の禁止によって不安定化しており、どちらを選択したとしても苦しい戦いを余儀なくされています。
本記事では《兵隊竜》の採用を推しております。気軽に出張できるギミックがない今、ほぼほぼ純構築で戦わざるを得ないであろう【ドラゴンメイド】において、問題になりやすいのが手札事故です。
この問題に対する解答の一つとして、兵隊竜の採用と、それに付随する特殊召喚可能な下級ドラゴン族を採用を考えます。手札事故の軽減と、メイドが抱える絶妙な嚙み合わせの悪さを対策しようとする試みです。
ご注意していただきたい点として、本記事は筆者が身を置く対戦環境や、研究しきれていないメタゲームをもとに記述されています。よって、読者の皆様に対し、絶対の自信がある訳ではありません。また、根本的なテーマのパワー不足に関しては如何ともしがたい為、本記事で取り扱う事はございません。パワーの高いデッキをご所望なら【天威相剣】や、変わり種なら新規が強力な【斬機】等がおすすめですよ。
加えて、【ドラゴンメイド】は、デッキに対する理解度は勿論の事、環境や相手が使うデッキへの理解度によって、その強さが変わってくるデッキです。筆者の理解度が浅い場合もございますので、あくまで参考程度に、よく分からん事を言う人もいるんだな程度にお考え下さい。
《兵隊竜》とは
第10期(アニメVRAINS期)第二弾「CIRCUIT BREAK」にて収録された、地属性・ドラゴン族の下級モンスターです。
その効果は至ってシンプル。相手のチェーンを組む効果に反応し、デッキからLv2以下のドラゴン族モンスターを特殊召喚する、誘発即時効果を備えています。この効果は1ターンに1度の制約こそありますが、名称ターン1効果ではない為、兵隊竜が複数いれば、それぞれ効果を発動可能です。
登場時のみならず、OCGでは現在に至るまで、全く注目されていないノーマルカードです。後にマスターデュエルがリリースされ、N/Rフェスティバルや、リミット1フェスティバルにおいて、【ドラゴンメイド】を組む際にお呼びがかかる程度の認識かと思います。
このカードの評価が低い理由は以下の通りです。
1:効果の発動が相手依存である。
2:時の任意効果である。
3:特殊召喚できるモンスターの層が薄い。
まず相手依存である点に関して。
この効果は、相手がチェーンを組む効果を発動してくれなければ、意味を成しません。よって、相手がチェーンを組む行動を起こさず、モンスターを通常召喚して即バトルへ移行してしまえば、兵隊竜は効果を発動する事なく戦闘破壊されてしまうでしょう。
これでは、召喚権を消費してまで場に出した意味がありません。同じ召喚でも、普通にメイドを召喚した方が余程有意義です。
次、時の任意効果である点。
この効果は、相手が組んだチェーンに、直接チェーンする形で発動する必要があります。すなわち、間に別のチェーンブロックが挟まると、発動できなくなります。類似効果に、《雷神龍-サンダー・ドラゴン》や《青き眼の乙女》がありますね。
例えば、《烙印融合》に対して《灰流うらら》を発動できる場合、状況を見て兵隊竜を優先するのか、うららを優先するのかを問われる事になります。現代遊戯王において、この選択は非常にシビアであり、読み違えた瞬間敗着となりかねない為、単純にリスクを抱える事になります。
最後、Lv2以下のドラゴンが少ない点。
仮に兵隊竜の効果を発動できたとして、その場合特殊召喚できるLv2以下のドラゴン族モンスターに、ろくなカードがないのは致命的と言わざるを得ません。幸いにしてドラゴンメイドには、《ドラゴンメイド・ラドリー》《ドラゴンメイド・ナサリー》が存在していますが、前者は墓地を肥やせるが運任せ、後者は墓地に下級メイドが存在しないと呼ぶ意味が薄いモンスターです。
メイド以外となればさらに壊滅的で、せいぜいが後続の兵隊竜か、《妖醒龍ラルバウール》でサーチを試みるぐらいでしょう。
しかし、これらのデメリットを抱えて尚、【ドラゴンメイド】に兵隊竜を採用する価値があるのではないか、それを考えたいのが本記事の趣旨の一つです。
構築段階で考えた事
そもそも、何故兵隊竜を採用しようと思ったのか。
有能な読者の方ならご存知とは思いますが、【ドラゴンメイド】は手札事故――特に下級メイドの不在に悩まされる事で有名です。
現在デッキに採用されるメイドは、性能の上澄みをすくう形となっており、運任せのラドリーは採用を見送られる事が通例となっています。時には出張枠確保の為、強力な展開やリソース回復が可能なナサリーすら採用を蹴られる場合もあり、彼女らの労働環境は非常にシビアとなっています。
ですが、そのような少数精鋭の採用方針では、下級メイドが初手にない手札事故が頻発する原因になります。《強欲で金満な壺》や《金満で謙虚な壺》を併用して事故を回避するのにも限界があり、何らかの方針転換が必要な時期に来ていると筆者は考えました。
そんな時、目に入ったのが兵隊竜です。
このカードと、相性の良いLv2以下のドラゴン族モンスターを採用すれば、手札事故を回避できるのではないか。従来のメイドサポートと組み合わせる事で、動きにより広がりを持たせ、動線を太くできるのではないか。
マスターデュエルのイベントの折、枠を埋める為に仕方なく採用していたカードでしたが、場合によっては現環境でも運用に足る性能ではないか。研究するには十分なきっかけでした。
第一に考えたのは、兵隊竜の効果が通った際、どんなドラゴンを特殊召喚するのか、です。
【ドラゴンメイド】なら当然メイドを呼ぶべきでしょうが、その際呼べるのはラドリーかナサリーの二択。墓地が肥えていない状態でナサリーを呼ぶ必要はない為、必然的にラドリー一択になります。兵隊竜を採用する場合、同時にラドリーも一緒に採用する事が必須条件となるでしょう。
これは、ラドリー以外に特殊召喚したいモンスターがいない、と言う事ではありません。早急に「ドラゴンメイド」の名を持つモンスターを場に呼び込みつつ、自分にとって有利になる効果を持つモンスターとして、ラドリーが最適だからです。
この子は言うなれば、最序盤特化のドラゴンメイドです。皆さんご存知【ドラゴンメイド】は、先攻1ターン目や後攻1ターン目では大した動きは望めないミッドレンジ系テーマです。ある程度墓地が肥え、与えられる選択肢が増えて、初めて本領を発揮します。
この最序盤において、例え運任せでもデッキトップ3枚を墓地へ送り、動きに幅を与えるのがラドリーの仕事です。テーマカード1枚だけなら《ドラゴンメイド・パルラ》や《ドラゴンメイド・ティルル》と似た結果に落ち着きますが、2枚以上墓地に送られた場合のリターンは、【ドラゴンメイド】では破格と言えるでしょう。
運良くメイドモンスターや《ドラゴンメイドのお片付け》が墓地に送られれば何も言う事はありませんが、現実はそう甘くありません。大概墓地に送られるのは、《増殖するG》やうららと言った手札誘発である事が多いでしょう。できれば手札に抱えたいカードが墓地に送られると、損をした気分になります。
ですが、ここに落とし穴があるのではないかと考えました。そもそも素引き前提の手札誘発が墓地に送られた(=使えなくなった)からと言って、明確な損に繋がるのでしょうか?
確かに手札に抱えられず、相手の動きをけん制する事ができない状態は、ゲーム中不安を覚えるでしょう。筆者も何度となく、あの時増Gがあれば、うららを握っていればと、思わなかったゲームはありません。
しかし、そもそもからしてテーマと関係のない汎用カードは、基本的に素引き前提の運用が求められるカードです。初速の遅い【ドラゴンメイド】なら、ドローして嬉しいのは手札誘発ではなく、メイドの動きを強めるテーマカードではないでしょうか。
とは言え、墓地に送られると困るカードは、確かに存在します。特に《ドラゴンメイドのお心づくし》や《ドラゴンメイド・リラクゼーション》は、サーチ対象として優秀であり、且つ一度墓地に送られると回収手段がないカードです。
これらは採用枚数を絞っている手前、使えなくなると動きがより細くなる可能性が高まります。この辺りは各人の検討要素になるでしょう。
また、筆者は今もなお強金を採用したデッキ構築を続けていますが、これは兵隊竜との相性が悪いカードの一例になるでしょう。金謙なら、兵隊竜を召喚後に発動する事で、相手のうららを発動トリガーにする事ができますが、強金の場合それができません。
相手が組んだチェーンを発動条件にする仕様上、可能な限り相手のリアクションを利用する構築を心掛けたい所です。スタンバイフェイズに兵隊竜を展開する事ができれば、強金も強力な組み合わせになりますが、その為には《戦線復帰》や《リビングデッドの呼び声》等の罠を採用が求められます。その為だけにわざわざ遅い罠を採用するのは本末転倒でしょう。
ですが悪い話ばかりではありません。
兵隊竜にラドリーも採用する都合上、下級モンスターの量が増え、何もできない手札事故の可能性は大幅に減る事になります。兵隊竜の効果で兵隊竜を呼べば、序盤以外使わない兵隊竜をデッキから吐き出しつつ、ラドリーを展開してさらに墓地を肥やせるでしょう。
また、兵隊竜が場にいる状態で相手の妨害を受けた場合、兵隊竜の効果でドラゴン族モンスターを展開できる為、《天球の聖刻印》へのアクセスが容易にもなるでしょう。メイドが苦手とする1kill系のデッキに対する抵抗にもなる為、相手の動きに合わせて壁を用意するなど、最低限の備えをする事もできるようになります。
兵隊竜の効果を妨害するには、うららや《無限泡影》がメジャーですが、兵隊竜に対してこれらを消費するのは無駄が多い上、その効果で特殊召喚されるラドリーに対しても判断が分かれる所でしょう。そう言った相手からの妨害に対して、ある程度の耐性を持っている事も、このギミックの良い点だと考えます。
記事序盤に、兵隊竜は戦闘で簡単に処理されると書きましたが、現代遊戯王では召喚成功時の効果や、サーチ魔法やフィールド魔法の発動でチェーンを組まれる事が多いのもまた事実です。相手はこれらを蹴ってまず兵隊竜を処理するのか、兵隊竜の展開を許してでも自分の動きを優先するのか、その判断を強いる事ができます。心理的な圧を掛ける事で疲労を蓄積させる番外戦術も、立派な戦い方の一つでしょう。
運用段階で考えた事
一人回しでは意味がないので、実戦で試しました。ランキングデュエル(マッチ戦)とマスターデュエル(ダイヤ帯ランクマッチ+ルームマッチ)、さらにシミュレーターを使ったマッチゲーム、計五十戦程ですが、ある程度の所感は得られたと思います。
まず、構築段階で想定していた、兵隊竜を前にしても相手は動いてくるのではないか、と言う考えは、間違いではありませんでした。ですが、基本的に効果を発動できるのは相手ターンであり、展開したモンスターは壁にしかならない事が多かったと感じました。
ランキングデュエルでは、全員に効果の説明を求められましたが、説明後はその効果からどんなモンスターが特殊召喚されるのかを予測され、気にせずチェーンを組まれました。
多少悩む相手もおりましたが、壁が増える程度と考えたり、重要なカードへの妨害は成立したとして、状況を飲み込んだものと考えられます。ラドリーの墓地送りは、体感四割の確率で1枚以上メイドが含まれ、お心づくしやお片付けと組み合わせた動きがしやすかった印象です。
マスターデュエルでは、現在【相剣】やデスフェニが幅を利かせている事もあり、思うような結果は望めませんでした。
特にデスフェニは、対象に取って破壊する効果ではない為、兵隊竜の効果で特殊召喚されたモンスターを破壊され、後が続かなくなるパターンが散見されました。さらに、マスターデュエル環境では《PSYフレームギア・γ》が準制限で運用できる為、カードパワーの差に開きがある事から、そもそも採用しづらい環境であると感じました。
マスターデュエルのゲーム形式が、マッチ戦とは異なりシングル戦である事も、貫通力や封殺盤面と言う点で、そもそもドラゴンメイドとは相性が悪いのも、原因の一つでしょう。
なお「勇者」「ふわんだりぃず」実装後は、兵隊竜を使う余裕はありません。マスターデュエルで勝ちたいなら、素直に勇者を使えるデッキを使いましょう。
シミュレーターによるマッチ戦では、主にOCG未発売のカードを搭載した【春化精ナチュル+クシャトリラ】や、暗黒界の新規を含んだ【60烙印イシズティアラメンツ】等と対戦。新規サポートを搭載した【スプライト】は手ごわい相手でしたね。
前者は主軸を春化精とナチュルに寄せた構築だった為、主力モンスターのステータスの低さと、ほぼ確実にチェーンを組んでくる性質に助けられた印象が強いです。場にいる全てが攻撃可能なモンスターと言う訳ではない点も、兵隊竜との相性の良さを感じました。
後者の場合、召喚成功時の効果や、モンスターの展開にチェーンを組まざるを得ない為、兵隊竜の効果発動には苦労しませんでした。しかし、兵隊竜によって状況が有利に傾くかと言われれば否であり、兵隊竜がどうこうよりも、併せてセットしていたお片付けや、試しに採用していたラルバウールの噛み合いが良かった印象です。
総じて兵隊竜の効果発動に関しては、現環境ではそれほど気にならないと判断できます。
また、採用の主目的である手札事故の回避は成功しており、試運転中は目立った手札事故はなかったと記憶しています。特に、手札にメイドが一名もいない状態でも、兵隊竜とお片付けがあれば、トップドローを気にする事なく次に繋げやすい状態で手番が返ってくる為、ゲーム中の安心感はかなり向上しました。動きに幅と太さを与える仕事に関しても、必要十分な成果を上げていると言って良いでしょう。
特殊召喚するラドリーに関しても、単純に「ドラゴンメイド」モンスターの数が増える点に意味があります。墓地送り効果も、結果次第では眉をひそめる事も皆無ではありませんが、【ドラゴンメイド】は3枚フル投入するカードが多く、有利に働く可能性が低すぎる訳ではないようでした。
多くのユーザーが言うように、ラドリーはその不安定さ故に、いまいち評価されておりません。筆者にとっても評価の低いメイドでしたが、言う程弱いカードではないようです。きちんと考えてあげるべきでしたね。
試した後に考えた事
全体的な感触は良く、構築を環境に合わせて最適化できれば、多様な相手に対してしっかりと対応できる、ミッドレンジらしい結果が期待できると感じました。得られる選択肢こそ多くないものの、モンスターの展開や墓地肥やしによって、メイドの可動域が広がるのは、これまでにない利点です。
しかし全く問題がない訳でもなく、いくらか気になるポイントがあるのもまた事実です。
まず、兵隊竜の効果で特殊召喚するモンスターが、デッキから限定である点です。
実際にランキングデュエルのある一戦では、手札に兵隊竜、ラドリー、ナサリーの3体が初手5枚に集まってしまい、動きが硬直化した事がありました。効果を発動する前に特殊召喚したいモンスターを手札に抱えてしまうと、兵隊竜の仕事に支障が出るだけでなく、全体的な動きもぎこちなくなってしまいます。
特殊召喚したいモンスターを複数初手に抱える事例は、そう多く起こるものではないでしょうが、頭の片隅に入れておく必要はありそうです。この場合、全くの手札事故とは言わないものの、ゲームに勝てる手札とは言い難いでしょう。
筆者の想定では、自分のターンでも兵隊竜の効果を発動する事も考えていましたが、少なくとも先攻1ターン目で兵隊竜の効果を発動できた試しはありませんでした。
先攻1ターン目の場合、兵隊竜の効果を誘発してくれるのは増Gやうらら、泡影と言った手札誘発しかありません。これらを使ってもらうには、兵隊竜を召喚した後、《ドラゴンメイド・エルデ》の特殊召喚効果を使ったり、お心づくしの発動が考えられます。しかし前者は1枚、後者も2枚採用の場合が多いカードであり、都合よく兵隊竜と一緒に初手5枚にあるかと問われれば、否でしょう。
後攻1ターン目やゲーム中盤であれば、相手の制圧モンスターを逆用したり、墓地に送られたお片付けの効果を駆使する事で、容易に発動を狙えます。ですが、何の準備もない先攻1ターン目では、正しく相手依存となり、自分のターンでの兵隊竜発動は難しいと言わざるを得ません。
より発動を確実化するなら、メイド以外の何かで相手の手札誘発を釣る必要がありそうです。それこそ烙印融合のような、許すと致命的になりかねないパワーカードが求められるでしょう。もっとも、烙印出張を許すなら、そもそも兵隊竜の採用は難しいものとなるでしょうが……。
さらに、相手ターンに兵隊竜の効果が発動した場合の、展開後の動きについて、筆舌しがたい打ち止め感がありました。試した際はデッキに兵隊竜を2枚採用していましたが、兵隊竜→兵隊竜→ラドリーと展開した後は、手札誘発モンスターや、何らかの罠を伏せていない限り、基本的に相手の展開を眺めるだけになります。また展開したモンスターには、何ら妨害効果を持たないただの壁である為、相手の展開力次第では戦闘によって一掃されてしまう事もしばしば。
せっかくモンスターを展開したのだから、これを活用したいと思うのは筆者だけではない筈。ですが、場のモンスターを活かす何かをしようとすると、デッキパワーのさらなる低下を要求されるとも感じました。
具体的には《崩界の守護竜》等の、場にモンスターが存在する事を前提とするカードの採用です。これらはよくある、デッキが回った後強いカードの代表例であり、兵隊竜の採用理由である事故回避や、先攻での動きが強まる訳でもありません。
【相剣】が採用する《相剣暗転》はサーチ可能な1枚ですが、同様の効果を持つ《崩界の守護竜》は、【ドラゴンメイド】ではサーチできない汎用枠に収まっています。この差を埋めるのは難しいでしょう。
より兵隊竜を活用する
実戦で得られた経験をもとに、兵隊竜構築を最適化します。
兵隊竜の効果自体は通りが良いのですが、そこから特殊召喚されるモンスターはお世辞にも強いとは言えません。《白の聖女エクレシア》のように、誘発即時効果で逃げながら、デッキから切り返し能力を持つ《アルバスの落胤》を特殊召喚するような、環境で通用する動きは不可能です。
本をただせば手札事故の回避が目的な為、それ以上を望むとデッキ全体が歪み、本来のパフォーマンスを発揮できない危険があります。
ですが、序盤に特殊召喚するモンスターがラドリーだけでは、あまりにも選択肢が狭く、手札との嚙み合わせが悪くなる事も考えられるでしょう。そこでラドリー以外で、序盤に呼べば頼りになるモンスターを考えます。ただでさえ層の薄いLv2以下のドラゴン族モンスターの中から、筆者が選んだのはラルバウールでした。
手札を1枚要求されますが、特殊召喚成功時、場のモンスター1体を対象に取り、そのモンスターと種族・属性が同じモンスターを手札に加えます。
兵隊竜から呼び出された場合、場には地属性・ドラゴン族の兵隊竜と、闇属性・ドラゴン族のラルバウールが存在すると思われます。ドラゴンメイドで地属性ならナサリーかエルデ、闇属性なら《ドラゴンメイド・チェイム》が該当します。
特にエルデなら、サーチ後に下級メイドを特殊召喚できる機会が生まれます。それがナサリーやチェイムなら、更なるアドバンテージの獲得にも繋がるでしょう。ラドリーの効果で墓地に送られた場合でも、兵隊竜やラドリーの破壊に反応して特殊召喚され、サーチ効果へと繋げられる点もシナジー性が高そうです。
条件を満たせば、自身の効果でさらに1回特殊召喚できる為、手札に余裕を持ちやすい【ドラゴンメイド】なら、サーチ効果を活かしやすいと考えられます。ドラゴンメイドは光属性以外ならメインデッキに揃っている為、ドラゴン族ならおおよそサーチ範囲に捉える事ができます。
残念ながら現在の【ドラゴンメイド】では、メイド以外でサーチしたいドラゴン族は少ないのですが、万が一にも征竜のいずれかが禁止解除されたり、今後相性の良いドラゴン族が登場すれば、強力に作用するギミックになるのではと考えています。丁度最近発表された「深淵の獣」とは、本ギミックの相性は良いと考えられますね。
相手ターンでの展開後の為に崩界を採用するのは、状況を選ぶ上に無駄が多く、デッキパワーの低下を招く為難しいと前述しました。この点に関しては、筆者では改善案が思い浮かびません。
唯一、突破力や対抗策として採用されやすい《禁じられた一滴》が候補に挙がりましたが、各シーンで重要な働きをするこのカードを、安易に伏せて良いものか否か。
OCG環境ではサイドデッキに仕込まれる事が多いこのカードを、泡影が複数搭載されているメインデッキに組み込むのか? 《ハーピィの羽根帚》や《ライトニング・ストーム》が平然と飛んでくるマスターデュエル環境で、このカードを伏せるのか? 手札や墓地で発動する効果を多用する環境デッキ相手では、死に札にならないか?
一滴自体は強力な1枚でも、活躍の場が限られては、その運用には障害が多いものと考えられます。特に【ドラゴンメイド】の場合、対戦環境に合わせてデッキを調整しなければ、苦戦必至のテーマです。強さだけなら一級品の《三戦の才》が、何故採用されないのかに通ずる問題でしょう。
他に考慮したい事
▼兵隊竜の採用枚数
調整時は2枚で運用してみましたが、これを1枚に抑えるのか、むしろ3枚採用するのかは、判断が難しい所です。デッキの1枚1枚に質が求められる【ドラゴンメイド】において、カードパワーの低い兵隊竜を多く採用しても良いものか否か。
少なくとも、下級メイド11枚と兵隊竜2枚で、手札事故は起こりませんでした。今まで述べてきた兵隊竜の性質を考えても、3枚採用して壁を用意するだけなら、別のカードを採用した方が良いとも考えられます。ゲーム序盤にラドリーさえ展開できれば仕事はしたと考えるなら、採用枚数を1枚に絞るの事も悪くなさそうです。
▼エルデの採用枚数
兵隊竜の効果をより効率よく発動する為のカードとして挙げましたが、同時にラドリーの変身をしやすくする為に、採用枚数を増やす事が考えられます。特にナサリーと一緒に場にいる時、従来のエルデ1枚採用では、ナサリーかラドリー、どちらかしか変身できません。手札の回復速度を高めたり、ラドリーの効果で墓地に送られる確率を上げる為に、2枚目の採用は検討できるでしょう。
ただし、エルデはLv7の最上級モンスターです。枚数の増加は事故要素であり、特殊召喚効果は手札に下級メイドが存在する事が条件な為、発動が難しい場合もあります。いくら優秀でも、慎重な判断が必要です。
▼フルスの採用
お心づくしの存在から、本来ラドリーとセットで採用が考えられる《ドラゴンメイド・フルス》は、残念ながら採用が難しいままです。兵隊竜の効果がデッキから限定である点を考慮し、Lv2以下のドラゴン族をデッキに戻す等の使い方が考えられますが、兵隊竜が活躍できるのは、手札事故の回避とゲーム最序盤が中心です。中盤以降、わざわざ兵隊竜を使えるように状況を整えるよりも、盤面形成やライフカットに注力すべきタイミングで、横道にそれるだけの余裕はメイドにはないでしょう。
余談ですが、《おろかな埋葬》や《竜の霊廟》と言ったカードが、【ドラゴンメイド】において評価がいまいちなのは、中盤以降役割が持てないからです。同じ理由でラドリーの評価が今一つなのも、これら魔法カードと構造は一緒です。
逆に、同じ墓地送り効果を持つパルラが評価されている理由は、ピンポイントにお片付けを墓地に送る事ができるからです。それだけお片付けが強力、と言い換える事もできるでしょう。
中盤以降はメイドが墓地にたまる為、モンスターしか墓地に送れない魔法カードや、墓地に送れるかどうか分からないラドリーは、自ずと評価を下げられてしまう訳ですね。
▼お心づくしの枚数
エルデと同様の理由で、エルデ以上に採用枚数を増やしたいのが、このカードです。前述の通り、現状のメイドではこのカードの再利用は難しく、ラドリーの効果で墓地に送られた場合、その分動きが細くなる可能性が捨てきれません。ならばと採用枚数を増やして対応したい所ですが、このカードも事故要因になる点には注意が必要です。
また、本記事では兵隊竜を中心に記述している為、どうしても判断基準が兵隊竜にならざるを得ませんが、最も重要な事は、デュエルに勝利する事です。その為の手段が兵隊竜であり、敗北要素である手札事故をどうにかしたいのであって、手段の為に手札事故の要素を増やしたのでは意味がありません。それを踏まえた上で、お心づくしの採用枚数を考えたい所です。
▼壺の種類
今回は試運転と言う事で、強金を採用したまま兵隊竜を使いましたが、自分のターンでの発動を狙ったり、より手札事故を回避する為に、金謙の採用は是非検討したい所です。惜しむらくは金謙が準制限カードである事ですが、少しでも発動機会を得たいなら、こちらを優先すべきでしょう。
壺に関するあれこれは、壺の話にてまとめておりますので、是非ともご一読くださいませ。
▼ラドリーの効果最大化
墓地に存在する事で効果を発揮するカードを、採用するかどうかですが、これも難しいと言うのが筆者の考えです。
まず、積極的に墓地に送って機能するカードが、テーマ内ではお片付けしかありません。つまり、ラドリーを上手に使おうとして他のカードを採用する場合、十中八九がテーマとは関係ない汎用枠になります。具体的には《復活の福音》や《ブレイクスルー・スキル》、《仁王立ち》等が候補です。
これらのカードを採用する場合、墓地に送られた時の活躍よりも、素引きした場合の活躍を考えるべきです。
ブレスルや仁王立ちが採用されるデッキの多くは、《隣の芝刈り》を採用した60枚構築のデッキです。芝刈りによって大量の墓地送りが期待できるデッキと、ラドリーの効果を一~二度発動するデッキとでは、そもそもの構築思想・運用想定が違います。およそ40枚構築の【ドラゴンメイド】の場合、墓地に送られるよりもドローする可能性が高く、それ以上にデッキに眠ったままの方が遥かに高いでしょう。
さらにこの手のカードに限って、【ドラゴンメイド】ではドローした場合の評価が低いのです。福音はLv7-8のドラゴン族しか蘇生できず、変身効果によって容易にそれらを場に呼び込めるメイドでは使い道が少ないでしょう。ブレスルは墓地に送られたターンには機能しないのが致命的であり、仁王立ちは時間稼ぎばかりで状況の打開は不可能です。結果として、現代遊戯王で採用に踏み切るには弱い、となるのではないでしょうか。
これらのカードを採用するくらいなら、福音の代わりに《死者蘇生》、ブレスルや仁王立ちの代わりに《バージェストマ・ディノミスクス》の方が、まだ使い勝手が良いカードになるでしょう。
行動方針のすゝめ
兵隊竜の採用により、手札事故の可能性は大幅に減りました。しかしこれは、数ある問題の一つが一先ず解決しただけに過ぎず、ドラゴンメイドが抱える問題は他にも山積みです。
手札事故を解決したなら、次は足りない初速を高めたり、デッキパワー全体の向上、プレイングの洗練を目指したい所です。幸いにして22.7環境では、リミットレギュレーションの変更やカードプールの変化に伴い、以前に比べゲームスピードが緩やかになってきています。
主に【イシズティアラメンツ】が原因とされていますね。確かに環境トップメタのデッキ群は脅威ですが、全体的な速度の低下はドラゴンメイドにとって追い風です。
本項では優先度に関して考えてみましょう。
兵隊竜を採用した構築では、初手に下級モンスターが存在しない可能性は低くなりましたが、同時に下級モンスターが複数存在する可能性が高まりました。仮に兵隊竜と下級メイドを同時に初手に抱えた場合、どちらを優先して召喚すべきでしょうか。絶対の正解ではありませんが、一定の方針であれば、筆者でも示す事ができます。
▼お片付けの有無
兵隊竜と下級メイドに加え、お片付けを併せて引いている場合、兵隊竜を先んじて召喚したい所です。
お片付けはドラゴンメイドのテーマカードですが、その発動条件はメイドに限りません。自分の場に表側表示でドラゴン族モンスターが存在すれば良い為、手札に戻したい相手のカードと、兵隊竜を対象に発動が狙えます。兵隊竜の効果は通りが良いので、モンスターの全体除去を受けない限り、お片付けの発動が邪魔される可能性は低いでしょう。
お片付けを発動する頃には、兵隊竜の効果は既に一回以上発動済みと考えられます。ラドリーを展開して墓地を肥やしつつ、お片付けで相手の動きをけん制する動きが想定できます。さらに自分のターンでは、前のターンに召喚しなかった下級メイドが手札におり、お片付けの墓地効果を発動可能と言う、かなり恵まれた状況を作り出す事ができるでしょう。
無論これは理想論でしかなく、相手が敷いた盤面次第では突破が難しい場合も多々あります。例題通りの手札でも、相手によっては兵隊竜から召喚するのが最善手とは限りません。ですが、この動きなら相手ターンを凌ぎつつ、返しのターンの動きの幅は広くなり、相手の妨害を乗り越えやすい状態を作りやすいと考えられます。
▼チェイム・パルラの場合
兵隊竜と上記メイドを併せて引いている場合、相手ターンにおける自他の動きと、手番が返ってきた際の動きも加味して考える必要があります。
兵隊竜を召喚した場合、その効果で相手ターンでモンスターは展開できますが、お片付けがない分、妨害能力は皆無となります。何の備えもなく相手に手番を渡すのは、自殺行為です。相手は自由に盤面を整え、手番こそ返ってきますが、その際動かせるカードは、前のターンに召喚しなかった下級メイドが確定、それ以外は不確定要素となります。
ラドリーを特殊召喚し、その効果でお片付けが墓地に送られていれば話は変わりますし、トップドローで一滴を引いたのなら万事解決となりますが、その可能性は随分と低いものになるでしょう。
前述の通り、ラドリーの効果は優秀ではありますが非常に不安定で、全幅の信頼を置く類のものではありません。よって、兵隊竜と下級メイドしかない場合、兵隊竜から召喚するのはリスキーな判断になりやすいと考えられます。
チェイム・パルラは、1枚で天球にアクセスできるメイドとして有名です。前者なら、お心づくしをサーチして天球をリンク召喚するのではなく、お片付けやリラクゼーションを構えるパターンも考えられます。《ドラゴンメイドのお召し替え》にアクセスし、《ドラゴンメイド・シュトラール》の融合召喚を狙う事も可能であり、総じて何らかの妨害を用意する手段となります。
非常に難しいのですが、それらの妨害を駆使しつつ、次のターンの準備を整えるプレイングが必要になるでしょう。
お片付けの墓地効果が使える状態なら、兵隊竜の召喚後に発動する事で相手の妨害を誘い、兵隊竜の効果発動に繋げる事が可能となるでしょう。妨害されるにせよ許されるにせよ、ドラゴン族モンスターが二体以上並び、メイドにとって動きやすい状況が整います。
満足に動けず、天球をリンク召喚するだけになる事も少なくありませんが、天球自体がメイドにとって重要な妨害、兼リソース源になります。場合によっては、そのターンでの盤面解決だけが正解でもありません。
二つの例を挙げましたが、これらに共通する行動方針は、自分のターンでの手数の確保にあります。
【ドラゴンメイド】の敗北パターンの一つに、召喚したメイドに対する妨害が挙げられます。《エフェクト・ヴェーラー》、うらら、泡影は以前からメジャーでしたが、昨今はこれらに《幽鬼うさぎ》や《屋敷わらし》も加わり、より一層動きにくい対戦環境になっています。
手札誘発モンスターであれば、《墓穴の指名者》が対抗策として考えられますが、そう都合よく手札にある訳でもありません。ただでさえ線の細いドラゴンメイドが、数多の妨害を捌き切る為には、十分な手数を用意するプレイングを、常に心掛けなければならないでしょう。
おわりに
マスターデュエルのリリースにより、現実以上に初手を引く回数が増えた為、その分メイドのボイコット運動を目の当たりにする回数も増えた、と感じるプレイヤーも多いのではないでしょうか。
今回考えた兵隊竜は、手札事故こそ対策できますが、【ドラゴンメイド】全体のパワーアップや、対戦環境での分布増加に寄与するものではない、と言うのが筆者の考えです。《エクソシスター・マルファ》級の新規サポートを得られない限り、メイドの地位向上は難しいと言わざるを得ません。
環境トップと呼び声も高い【ティアラメンツ】への対抗策として、《ディメンション・アトラクター》のメイン採用も増えており、メイドを取り巻く環境は悪化の一途を辿っています。7月発売の新弾「DARKWING BLAST」では、新たなドラゴン族テーマが登場するものの、メイドとの相性は抜群とは言えず、組み合わせるのは難しいでしょう。
ですがそんな中でも、諦めずに研究を続けるプレイヤーが一人でも多く増え、対戦環境で通用する新たな形が見つかる事を、心から、切に願っております。
以上です。
今後の【ドラゴンメイド】の再興を願いながら、本記事を締めたいと思います。長い時間お読みいただき、誠にありがとうございました。
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