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ドラゴンメイドと壺を考える話

 お初にお目にかかります、渡部(わたべ)と申します。
 本記事は、筆者が【ドラゴンメイド】を構築・運用・改善する際に考えた事を、3/24よりちまちまと書き足していったものです。
 なお、あくまで「考えた」話であって「解説」や「指南」の類ではありません。娯楽記事です。執筆開始時期の関係で、情報が古い場合も考えられます。予めご了承ください。

前提として

 【ドラゴンメイド】を知る多くが言うように、このデッキは運用難易度が高いと良く聞きます。

 ・初動が細い。
 ・手札事故が起きる。
 ・僅かな妨害で止まる。
 ・少しでも動けば無数の選択肢や分岐が発生する。
 ・相手によって適切なプレイが求められる。
 ・「プレイ中は正解だと思ったのに実際は間違いだった」が頻発する。

 こんなところでしょうか。
 しかし、大型非公認大会で結果を残せるぐらいには優秀なテーマであり、プレイヤーの頑張りが正しく反映されるデッキです。デッキ構築やプレイングを磨けば、自ずと勝ち星は増えていくでしょう。
 ですがその為には入念な準備が必要です。対応力を問われるプレイング、対戦相手が使うカードの知識、自分が挑む大会環境への理解、そして何より重要なのは、適切なデッキ構築です。常に全力を発揮できるよう、可能な限り運の要素を排除した形にまとめたいところ。何戦もする大型大会であればあるほど、手札事故を起こさない構築が求められるでしょう。

 本記事では、【ドラゴンメイド】が採用しうる「壺」について記述しました。21.4現在は《強欲で金満な壺》と《金満で謙虚な壺》の二種が考えられますが、今回のお話ではその「壺」とは何なのか、採用のポイントについて論じていきます。
 しかし前述の通り、デッキ構築は可能な限り運の要素を排除すべき、とする考えを是とするなら、強金と金謙では金謙に分があります。これは数多の入賞レシピを見ても明らかでしょう。

 なので、「なんだもう結論出てるじゃないか」と思う方は、これ以上は時間の浪費に繋がりかねませんので、別の記事をお読みになる事を強く推奨いたします。また、本記事を読めば勝てるようになるだとか、手札事故を起こさないようになるだとか、そんな夢のような効果はありません。内容が絶対に正しいと言う事もありません。あくまで参考程度に、こう言う考えの人もいるんだな程度にお考え下さい。

何故壺なのか

 そもそも何故メイドが壺を採用するのでしょうか。
 ドローソースだけなら、壺以外にも複数存在します。《手札抹殺》や相性の良い《トレード・イン》など、採用を検討できるカードはあります。

ドロソ

 しかし採用されません。現代遊戯王において《手札抹殺》は相手を利する可能性が高く、《トレード・イン》はLv8モンスターをコストに要求している為、手札事故を回避する為に手札事故を生む矛盾構造を孕んでいます。採用されない他のドローソースも、大なり小なり欠点を抱えているから使われないんですね。
 ですが多くの壺は、分かりやすく相手を利するデメリットもなく、明確に事故になる要素が小さい優秀なカードです。だから多くのデッキで採用され、結果を残す訳です。

 【ドラゴンメイド】を良く知る諸兄ならご存知の通り、メイドは初動が細く、一度の妨害で不利を被る可能性の高いテーマです。なので、その脆さを補強する為に各種壺を発動し、手札を整えたいと言う事ですね。
 初動がないなら初動を引きたい。妨害が足りないなら罠を引きたい。後攻1ターン目なら相手の盤面に対する解答を引きたい。相手を利する事なく、自分の手札状況に左右される事なく、最小の動きで最大の結果を得られる可能性が、壺にはあるのです。

 デッキとしての【ドラゴンメイド】黎明期、既にレシピには壺が見られました。この時採用された壺は《強欲で金満な壺》です。
 それもその筈、当時のメイドで必須と言われたのは《ドラゴンメイド・ハスキー》と《天球の聖刻印》ぐらいで、残り9枚は自由枠とされたからです。この傾向は、後に《ドラゴンメイド・シュトラール》が登場しても変わらず、《金満で謙虚な壺》が登場するまでテンプレートとしてプレイヤーに定着していきました。

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 ただ、強金がメイドと全くの好相性かと問われると、断定はできません。最も力のあるカードがEXデッキに集中している以上、これを消費する壺が最高のドローソースとはならないでしょう。

 話が変わり始めたのは、《金満で謙虚な壺》が登場してからです。
 ただドローする強金と違い、デッキトップをめくってピンポイントに必要なカードにアクセスできる金謙は、初動が細いメイドのみならず、多くのデッキで有効と判断されました。EXデッキに致命的なダメージが入らない仕様も、強金とは違った利点を多く見出せた事もあり、採用率の上昇に貢献しました。

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 グッドスタッフ気質のないデッキなら、とりあえず採用を検討してもいいぐらいには環境に定着しましたね。しかし素直に採用していいのか、それを考えたいのが本記事の趣旨の一つです。

《強欲で金満な壺》

info強金

・ドロー効果
・アドバンテージ+1(3除外1ドローは考慮しない)
・EXデッキ構築に余裕がない
・EXデッキランダム裏除外

 《強欲で金満な壺》は、EXデッキの構築を間違わなければ何も考えずに発動できる、メイドの基本となるドローソースです。
 発動タイミングはメインフェイズ1開始時に固定されているし、EXデッキ裏除外はランダム(=対戦相手が選ぶ)、ドロー効果なのでデッキからカードを引くだけで処理が終わります。発動時の手札やフィールドがどんな状態かを考慮せずに済み、効果が通るかどうかも相手次第。

 これはつまり、およそ状況を選ばないカードと言えます。発動できるならとりあえず発動を検討してもいいぐらいに、単純に力のあるドローソースです。もちろん二度目の発動だったり、既にEXデッキをある程度消耗した状態で発動するかは考える必要がありますが、逆に言えば発動に際して気を付ける要素はそれぐらい。

 EXデッキ裏除外も、相手に選ばせる形になる為完全なランダムとは言えませんが、自分の考えや行動が反映されない領域である為、やはり考える要素は後に来ます。ドローしたカードを見て初めて行動方針が決まる為、諸々は一連の処理が終わった後考えればいい訳ですね。

《金満で謙虚な壺》

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・サーチ効果
・選択肢3 or 6
・EXデッキ枠に幅を得られる
・EXデッキ裏除外を自分が選ぶ

 《金満で謙虚な壺》はプレイヤーに多くの選択肢を与えます。
 そもそも発動するのか? いつ発動するのか? 発動するならEXデッキを何枚除外するのか? 何を除外するのか? 除外するカードを中盤以降使うのか? デッキトップから何を加えるのか? 処理後にどう動くのか? 考えた通りに動けるのか?

 発動する前から後まで、何ならゲーム全体を俯瞰して考える事が多いと思います。
 直接的なカードアドバンテージにこそ繋がりませんが、サーチしたカードを正しく機能させ、より有利な状況を生み出す為のプレイが可能になります。
 メイドのように初動が細いテーマならその効果は絶大。初手が事故気味でも、金謙を通して事故を回避できるし、マッチ二本目以降ならサイドチェンジした対策カードを掘りに行けるのは他にない強みと言えるでしょう。

大雑把な違い

 まずドロー効果とサーチ効果の違い。
 これは未だ遭遇が考えられる《超雷龍サンダー・ドラゴン》の存在が大きいでしょう。21.4制限以降は《闇の誘惑》の規制解除もあって、遭遇率に変化があると思われます。
 超雷龍は重要な初動であるティルル、チェイムを機能不全に陥れる強力なカードです。初手にパルラがいるかどうかでゲームが決まりかねない事も。

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 これを防ぐにはサーチ効果を使わない動きを要求されます。この時機能するカードはドロー効果を持つものに限られ、メイドが採用する壺では強金ぐらいしかない訳ですね。

 次に、何をアドバンテージとするか。なお、強金を3除外1ドローで運用するのは、発動側が有利な状況の時ぐらいなので、考慮に値しないものとします。
 強金を6除外2ドローと定義すると、金謙はどうあれ手札交換。直接アドバンテージを得られるのは強金です。万人に分かる強さが示されています。しかしドローであるが故に、価値のあるカードが手札に加わるかどうかは引いてみなければ分かりません。
 半面、金謙ならその心配は少ないでしょう。何ともして初動が欲しければ6除外してめくる範囲を広げればいいし、初動があるなら妨害に使えるお片付けや神罠を選択できる。価値あるカードが手に入る可能性は非常に高く、状況に応じてベターな選択ができます。しかしすぐにカードアドバンテージを得られる訳ではありません。

 この差をどう考えるかは、人によるし、環境によります。
 妨害を貫通しうる手数を得る為、強金を優先する。
 可能性を広げ勝ち筋を手繰る為、金謙を優先する。
 どちらも間違いではありません。強金が好きならそれも良し。金謙が好きならそれも良し。しかし、やみくもに発動しても勝ちには繋がりません。その効果を活かすには、壺の特性と、それに合った構築が必要だと思います。

現代の壺は難しい:金謙は手の内を晒す

 強金と比べ、金謙は情報アドバンテージを軽視しているように見えるのは私だけでしょうか。

 デッキトップはめくられ、相手も確認できる。
 手札に加えたカードは相手も知っている。
 選ばなかったカードはデッキボトムに送られる。

 単純2ドローと違い、サーチされたカードによっては、相手に手札全体の状況が透けて見えてしまう事も少なくありません。特に初動が細いメイドなら、手札に加えたのがチェイムと言うだけで、他に初動がない可能性や、手札にメイド魔法罠が不足してると受け取られかねません。手札誘発がめくれたのに選ばなければ、既に十分な数手札誘発を抱えている、と考えるのも無理からぬ事です。そんな透けた手札でしっかりと動き切るには至難の業だと思います。

 事実、メイドを使ってcs環境で結果を残す者は、どうにも一部の実力者に偏っているように見えます。この辺りはTwitter等で検索すれば、誰を指すのかお分かりになるでしょう。メイドの分布が多いcsでも、有終の美を飾るのは大概一部の実力者の方々である事が多いように見えます。
 これは単純に環境やテーマの理解度やデッキ構築が上手と言うだけでなく、各行動の裏目を考える能力や、実際金謙で透けてしまった手札でも動き切るプレイングの上手さが理由だと考えられます。金謙で失った情報アドを、別の情報アドやプレイングで補填できている訳ですね。

 そもそもからして【ドラゴンメイド】は行動の選択肢が多いテーマであり、対戦相手や状況に応じて適切なプレイが求められます。この辺りが「難しい」と揶揄される所以なのですが、事もあろうに金謙は、その選択肢をさらに広げてくれます。これはすなわち、ただでさえ難しいデッキを、さらに難しくしていると同義であると言えます。
 発動して無数に提示された選択肢の中から、勝つ為の選択ができるかどうか。金謙をただ使うだけなら誰でもできますが、強く運用するには相応に頭を使わないと難しいのですね。

 もちろん最大限効果を発揮できるよう練習する事は大切です。しかし、できない事をわざわざやって自爆するくらいなら、採用せずに別の手段を講じるのも一手です。【ドラゴンメイド】にはそれが可能なデッキスロットの余裕があり、勝つ為の構築として金謙の採用を蹴るやり方も十分考えられるでしょう。

現代の壺は難しい:強金 とにかく 不安定

 強金の項で、発動の際考える要素が後に来ると述べました。
 発動の際悩む必要がない。効果処理もドローするだけ。金謙と違い、脳みそ筋肉でも発動さえすれば最大限効果を発揮してくれます。
 こう書けば、考える要素は「金謙>強金」の不等式が成り立つように見えますが、それはゲーム中に限った話です。

 強金が難しいポイント、それはゲームが始まる前の段階――デッキ構築の時に訪れます。ここでは特にEXデッキ構築に絞ってお話します。
 前環境で結果を残した【ドラゴンメイド】のデッキレシピでは、シュトラール、ハスキー、天球の三枚をフル投入し、強金で全て除外される可能性を減らした構成が基本でした。この基本構成は金謙が登場して以降も大きな変化はありませんが、残る6枠に関してはその時代に応じてシビアな選択がされてきました。

 《超魔導竜騎士-ドラグーン・オブ・レッドアイズ》が全盛期の頃なら、その妨害を受けずに除去を行える《超融合》と、融合先である《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》《捕食植物ドラゴスタペリア》が。

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 教導ギミックが暴れていた時は、EXデッキに《旧神ヌトス》や《ウィンドペガサス@イグニスター》を仕込む事で相手のはしごを外したり。

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 《PSYフレームギア・γ》が搭載されてからは、シンクロ先に《混沌魔龍カオス・ルーラー》や、《PSYフレーム・ドライバー》の除外対策に《星杯竜イムドゥーク》が採用されました。

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 常に時代に応じた採用がなされ、それは今後も続いていくでしょう。

 しかしこれらを採用し備えたとしても、強金を発動すれば除外され、戦術の幅が狭まる事も少なくありません。いわんや、シュトラールやハスキーが全て除外されれば、メイドの主戦力すら失ってしまい、苦しい戦いを強いられる事は間違いありません。
 だからと言って、現代遊戯王において同じカードをEXデッキに複数枚採用するのは、自らの首に縄をかけるのと何ら変わりません。例えそれが、自由枠分の戦術崩壊を嫌ったものであっても、メイドの基本構成以外の採用はオマケであると考えた方が、強金を使う上では良さそうです。もしEXデッキをより効率良く使いたいと言うなら、強金よりも金謙を使った方が肌に合うでしょう。

壺が馴染む構築:強金でテンポを握れ

 強金を主軸に据え、金謙を採用しない、あるいは最低限に抑えるメインデッキ構築の方向性について。

 そもそも強金のような、ドロー効果と相性のいいデッキとは何かを考えれば、自ずと方向性は定まっていきます。
 例えば安定性の高い【十二獣】は、《強欲で貪欲な壺》を強く使えるデッキです。デッキトップ10枚の除外がそれほど痛手ではなく、低いデッキパワーを、手札誘発や罠で補強できます。
 例えばEXデッキをほぼ使わない【叢雲ダイーザ】は、強貪や強金と相性の良いデッキです。発動コストの除外は痛くも痒くもなく、むしろ火力を上げる高いシナジー性が魅力的。罠を主体とした構成である為、手札を増やす行為が妨害を増やす行為と同義です。

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 すなわち、ドローによって行動や妨害の数を増やせる、グッドスタッフ気質の高いデッキに適性があると言えます。しかし【ドラゴンメイド】はコンボ性の高いデザイナーズデッキです。ただドローするだけでは、強金の強みは活かせません。
 手札が増える事を構築に反映するなら、「細い初動をカバーする」「妨害された後でも動ききる手数を得る」方向が考えられます。相手の手番を凌ぐ事を考えるなら、複数の相手に対して強い拘束力を持つカードを優先的に採用し、何をドローしても一定以上戦えるように組み上げるやり方もあるでしょう。現環境に則した一例を挙げるなら、多くのデッキに対して高い拘束力を期待できる《アーティファクト-ロンギヌス》が挙げられます。

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 実際に採用するかどうかは別問題として、決まればターンスキップも可能な拘束力は魅力的です。ロンギヌスに限らず、カードアドバンテージを生まない効果や、発動側がディスアドを負う効果でも、強金で直接カードアドバンテージを得られるなら、差し引きゼロで運用できると考えられます。力強く動ける点が強みと言えるでしょう。

 【ドラゴンメイド】は上級メイドと下級メイド、下級メイドと魔法罠など、特定の組み合わせを引くと強い動きが可能になります。ですが、何を引くか分からないドローによって強く動ける手札になるかと問われると、そうではないでしょう。せっかくのドローが即応できない上級モンスターや、不安定な手札誘発で潰れてしまうのも考え物ですし、強力な補助になるお心づくしやお片付けも、モンスターとの併用を前提としている為、片方だけではカードの価値を損ねてしまいます。この辺りが強金の弱みでしょう。

 ドロー次第で展開がガラリと変わりますが、デッキ全体の速度はやや低下します。これは前述した【十二獣】や【エルドリッチ】などにも見られるように、複数のターンを跨がなければ相手のライフを削り切れない火力の低さからも見て取れます。
 中低速と言われた前環境でメイドが結果を残せた事、依然と比べ速度が増した現環境で苦しい戦いを強いられている事と、強金の採用数が減ってきている事が、無関係とは思えませんね。

壺が馴染む構築:金謙で手札の価値を高めろ

 金謙を主軸に据え、強金を採用しない、あるいは最低限に抑えるメインデッキ構築の方向性について。

 現在多くのデッキに採用されている金謙ですが、これは単に最新の壺だからとか、皆が強いと言っているからとか、そんな馬鹿丸出しな考えが理由ではありません。
 メイドの強金が強く機能していた時代は、【エルドリッチ】や【召喚教導】【サンダー・ドラゴン】などの中低速デッキが多く分布していました。これは最悪1ターン何もできなかったとしても、盤面強度があまり高くないまま、ライフが残る状況が多かった事を意味します。
 しかし現環境はそこまで速度の遅い環境ではありません。【電脳堺】に始まり【竜輝巧】【鉄獣戦線】など、当時環境にはいなかった展開型のデッキがシェアを伸ばしています。ライフは残らないか、残っても巻き返しが絶望的な相手です。

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 環境の推移により、不確定なドローでアドバンテージの獲得を目指すよりも、しっかりと妨害を敷設する、先攻展開を決める等、1ターン目でデッキとしての動きを完遂する事が求められています。しかしメイドでそれを行おうとすると、初手五枚程度では噛み合いが完全にはならず、中途半端な結果に終わりかねません。
 これを解消しうるのが金謙です。その効果を活用できれば、手札で浮いたカードが、状況をより有利に傾ける価値ある一枚に変える事ができるかもしれません。

 では金謙を使って動ける手札に整うよう構築するとしたら、どんな組み方が望ましいのでしょうか。これは現在主流のデッキレシピが大いに参考になるでしょう。
 金謙の使用を前提とするなら、メイドの採用数は上級・下級ともに必要最低限でも問題ありません。むしろ必要以上に数を増やすと、金謙でめくれた選択肢の価値を損ねてしまう危険性があります。前述の通り、メイドは複数のカードと組み合わせた時に最も強い動きができるテーマです。この強みを活かす考えと、金謙の効果は実に好相性です。
 極端な手札事故を気にする必要がない為、デッキのメインパーツはコンパクトに収める事ができ、空いた枠に環境を見据えた手札誘発や強力な妨害札を用意する事ができるでしょう。特にマッチ戦において強力に作用し、後攻から相手の妨害を突破する《冥王結界波》が欲しい、先攻で封殺用に《王宮の勅命》が欲しい等、相手のデッキへの対応力を上げる効果もあります。

 金謙で手札を整え即時動き出す事を是としている為、必然的にデッキの速度が高まります。これはゲーム速度の上がった環境についていく為に有利となり、展開型デッキが数多く存在する現環境に合わせた変化と言えます。
 【オルフェゴール】や【ドラゴンリンク】全盛期のような極端な環境でなければ、デッキスロットに余裕のある【ドラゴンメイド】は、環境に合わせて柔軟に対応できる点が優秀ですね。

壺を併用する:取捨選択の妙

 現在鉄板とされるのが、強金と金謙の併用です。その比率は強金3:金謙2とも、2:3とも、3:3とも言われ、プレイヤーの考えが特に反映されやすい部分だと思います。
 得られるメリットは前述の良いトコ取りです。強金でカードアドバンテージを獲得し、金謙で手札を整え速度を上げる。壺を多く採用する事で手札事故を気にする事なくゲームを始める事ができるでしょう。
 しかし同時に、非併用時にはなかった欠陥を抱える事になります。

 まずは壺の重複です。
 片方のみ3枚採用していた時よりも、初手率は上がりますが、同時に複数の壺を引く確率も上がってしまいます。
 強金にも金謙にも、発動に際して制限があります。強金ならメインフェイズ1開始時にのみ発動でき、金謙は発動するターンにドロー効果が機能しません。併用した場合、強金でドロー後に金謙は発動できず、金謙発動後はメインフェイズ1開始時ではない為強金が発動できません。強金が無効になれば金謙が発動できるようになりますが、どのみち壺はどちらか一方の効果しか通らないと言う事ですね。

 では、初手に強金と金謙が一枚ずつあった場合、どちらを優先して発動すべきでしょうか? もし強金を発動して、さらに壺を引いた場合はどうでしょう? 金謙でめくれたデッキトップに複数の壺があったら、選択肢の価値が損なわれると思いませんか?
 これらは、分かりやすく手札や選択肢の価値を傷つける問題です。壺がだぶつく事で動きが鈍ったり、より良い選択ができない構造的欠陥が、併用構築には存在します。もし併用する場合、壺がかぶった時にどちらが効果的かを予め勉強しておく必要があると思います。

 次に、複数回発動するデメリットです。
 手札に壺があれば発動したくなるのがデュエリストのサガ。しかしどちらの壺もEXデッキを消費して発動します。強金を3除外1ドローで使用する場合は考慮しないものとして、基本は金謙でも6枚除外で発動するでしょう。EXデッキは最大15枚。3枚が全体の1/5に相当する為、発動コストは決して安いものではないと考えるべきです。
 その壺を二回発動すれば、実に半分以上EXデッキを除外する事になり、残り僅かとなったEXデッキをリソースとして、相手のライフを詰めなければなりません。金謙なら除外するカードは自分が選べる上、その枚数も調整が利きますが、強金の場合ランダム(=相手が選ぶ)である為、必要なカードが残るかは運に左右されます。

 メイドはEXデッキの依存度が低いと言われていますが、非メイドユーザーが考える程重要度が低いとは思えません。上級メイドのステータスが高い事もあって、EXデッキを用いずとも戦える――と言えば聞こえはいいですが、要所要所で不安の残るゲーム展開になるでしょう。
 メイドにとってEXデッキはあって当然、ないと困るが基本です。壺はそのEXデッキを消耗して、各行動に力を与える諸刃の剣であると言えます。複数回発動したなら、早期決着が望ましいでしょう。
 惜しむらくは、【ドラゴンメイド】が速攻を苦手とする点です。レベルの高いメイドの攻撃力は十分な火力ではありますが、相手のライフを削り切るには複数体の攻撃が求められます。しかし、壺を使ってもショットキルが可能なほど恵まれた手札にはなりにくく、相手も抵抗する事を考えれば、どうしても数ターン要してしまうのが実情です。

小話:金謙の事故回避率

 ところで、メインデッキを40枚、下級メイドを9枚と仮定し、且つ初手5枚に下級メイドが1名も存在しない確率は、「25.82%」だそうです。

名称未設定

 下級メイドが存在しない初手5枚のうち1枚が都合良く金謙だとして、これを発動した場合、残るデッキ35枚のデッキトップ6枚に1枚以上 下級メイドが存在する確率は、85.61%となります。
 これはデッキ35枚から、初手6枚をドローし、その中に9枚投入した下級メイドが1名以上存在する確率を求めるものと同じ計算式です。
 逆算し、金謙を使ってもデッキトップ6枚に下級メイドが存在しない確率は「14.19%」となります。

 最初に挙げた事故率25.82%に、金謙を使っても事故を回避できなかった確率14.19%が、同時に起きる可能性は実に「3.66%」となり、翻って事故回避率は驚異の「96.34%」となります。
 ……と仰々しく計算しましたが、実はこれ、より簡素に言い換えると、デッキ40枚、下級メイド9枚、初手11枚の条件下で、メイドが欠勤しない確率が上記の数値である、と言い換える事ができます。11枚も引けば一名くらいは出勤しますよね。

 もちろん、この確率は手札に金謙がない可能性を考慮していない為、正確な数値ではありません。実際にはそこそこ下がりますし、どれだけ理詰めで構築しても事故る時は事故ります。事故を回避したとしても、相手の盤面が強固であれば、思うように動けず負けてしまう事もあるでしょう。ですが、金謙を組み込むだけで圧倒的に事故率が下がる事がお分かりいただけたかと思います。

うららとの闘い

 壺を語る上で、避けては通れないのが《灰流うらら》の存在です。

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 ドロー、サーチ、リクルート、果ては墓地送りすら阻止するこのモンスターは、現代遊戯王を象徴する手札誘発です。その採用率は原初の壺を彷彿とさせ、このカードを採用しないデッキは存在しないとすら言える程。当然壺にとっては天敵です。為す術はありません。

 為す術がないとは言いつつ、一応対策になるカード自体は存在します。皆さんご存知、《墓穴の指名者》や《抹殺の指名者》、ガンマですね。これらを併せて運用する事で、壺の効果を通す事ができます。

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 しかしこれらの対策カードは、手札の噛み合いやデッキの回転率を下げてしまう副作用があります。採用する場合は、その辺りとのトレードオフになるでしょう。

 ところが、これだけうららに対して耐性がないにもかかわらず、結果を残したメイドのデッキレシピには、対策となる指名者が見当たりません。対戦環境の変化に伴い、噛み合いや回転率とうららへの対策を天秤にかけた時、前者を優先する判断をした、と言う事だと思われます。
 特に墓穴については、次のターンも効果が無効になる点が良くないと考えられたのでしょう。相手から受けるうららは確かに脅威ですが、それは相手も同じです。自分も発動したい手札誘発が、自分の墓穴で機能不全になる事を嫌ったのなら、墓穴を採用しない十分な理由になるでしょう。

 話を元に戻しましょう。
 幸か不幸か、現代遊戯王においてうららが刺さらないカードは多くありません。どのデッキも差はあれど、サーチ効果や墓地送り効果を発動します。つまり、相手はうららをいつ発動すべきかを問われる訳です。

 その点から考えた時、強金はうららに対して若干の有利を取れます。
 効果が通ればアドバンテージを稼がれてしまう為、止めにかかる相手は多いでしょう。ところが話はそう単純ではありません。特に、相手が【ドラゴンメイド】なら、ガンマの存在を警戒しなければならないからです。
 アドバンテージの獲得を嫌ってうららを発動したら、ガンマを踏んで大変な事に……なんて状況は大会でも見かけます。
 なら強金は見逃して、メイドの初動にうららを当てればよい――確かにその通りではありますが、ドローで得た罠を構えて手番を渡されるだけになる可能性も否めません。
 メイド側の引きの強さにもよりますが、初動にうららを当てたのに、エルデやお心づくしで強引に動かれた、なんて事も考えられます。
 前述の通り、金謙とは違って、強金の場合は手札の隠蔽性が担保されています。相手からすれば、うららを撃ちたい場面が多く、どこが最も効果的なタイミングなのかが分かりにくいのです。

 逆に金謙の場合、情報アドバンテージの損失が災いし、うららが重く刺さる可能性が高まります。特にマッチ戦一本目、金謙の最初の発動に対して、相手が安易にうららを発動する事は稀でしょう。その結果デッキが【ドラゴンメイド】であるとバレてしまい、続く初動の効果にうららを発動されてしまいます。金謙を発動した後はその危険性を排除しきれない為、手札に加えるカードは攻めよりも守りに重きを置く事になるでしょう。
 さらに、金謙の発動後に致命的なうらら直撃を避けるなら、自分が最も通したい効果を発動する前に、うららを消費させなければなりません。相手がうららを撃ちたくなるような、何らかの囮が必要になるでしょう。またサイドチェンジ後は、相手が対策カードを嫌って金謙に対してうららを発動する事も考えられます。いずれにせよ、道筋はつけなければならないでしょう。
 想定通りに動かせれば、自然と勝ちやすくなるのが金謙の強みです。相手から受ける妨害も計算に入れて、手札のポテンシャルを発揮できるよう、プレイングを磨きたいですね。

 壺を併用していた場合、ごり押しではありますが、最もうららに対して耐性を持っている状態と言えます。前述した壺の重複も、うららを撃たれる事を前提とするなら、1:1交換が成ったと考える事ができます。発動タイミングの関係で強金は無効になりますが、金謙の効果が通る事になり、有利な状況を構築しやすくなるでしょう。
 ですがこの場合、EXデッキの消費が気になる所です。貴重なうららを消費させた事はプラスに働きますが、その後のプレイングを、コストに見合ったリターンに変換する義務が発生します。

実際に採用する:環境を見定めろ

 壺の善し悪しを説いた。
 うららの話もした。
 さぁ後は皆さんでお考え下さい……ではあまりにご無体。実際に戦うであろう相手に応じて、どちらの壺を優先した方が良いのか、あくまで個人的に述べたいと思います。
 なお、この項は四月下旬に書かれていますので、投稿時点とは情報に差異が生じる可能性があります。予めご了承をば。

 前提として壺を発動するメイド側は、通常のドロー一枚で状況を変え得るような、分かりやすいパワーカードはメインデッキには採用しないものと定義します。多くの大会入賞レシピを見ても、メインデッキからライストや超融合、拮抗勝負等を採用している例は稀でしょう。
 これをもとにマッチ戦全体を俯瞰し、どちらがより有効かを考えます。自分が出場する大会に、どのテーマがより多く参加するかを考えてデッキを調整できれば、テンプレート化したレシピをそのまま真似ただけのデッキよりも、ずっと戦いやすいと思います。

▼鉄獣戦線
 現在勢力を伸ばしている11期メインテーマの一つです。
 メイドからすれば、さも当然のように現れる《召命の神弓-アポロウーサ》がまず良くありません。《鉄獣の抗戦》からリンク召喚される《鉄獣戦線 凶鳥のシュライグ》の非対象除外は脅威ではありますが、より脅威と認識すべきは、墓地に送られた鉄獣戦線下級モンスターの効果によるリソースの確保です。
 これらに対抗する為には《無限泡影》や《屋敷わらし》が必要ですが、これを強金で引きに行くのは無謀が過ぎると言うもの。当然必要なのは金謙でしょう。相手はこちらの金謙に対してうららを発動するぐらいしか対抗策がなく、妨害を受けにくいのも評価できます。

▼電脳堺
 制限改訂によりややシェアは落ちたものの、未だ脅威度の高い高速テーマです。
 先攻を取れなかった場合、手札誘発の通り具合でゲームが決まりかねません。先攻を取ったとしても、相手の展開に対して柔軟な対応ができる布陣を敷けない場合、物量差で負けてしまいます。
 これを防ぐにはやはり金謙を用いるのがベストでしょう。先攻なら万全の体制を敷く、後攻なら《真竜皇V.F.D.》をいなしつつ、切り返しを狙うか強固な防御態勢に入る動きが考えられます。

▼コードトーカー
 堅実な展開と高い一撃能力、豊富な罠で状況の硬直を狙うテーマです。
 カウンター罠を多数採用し、《大捕り物》等の厄介な永続罠も構える為、必然的に手数が必要になります。よって優先すべきは強金です。
 しかし後攻から攻める場合、大量の罠を敷設される為、これを超える為に全体除去が欲しくなります。これを強金で引きに行くにはやや無理筋である為、金謙でデッキを掘りに行きたいと思うでしょう。相手もそれが分かっている為、金謙に対して何らかの妨害を加える可能性が高いと思われます。
 先攻なら間違いなく強金ですが、後攻なら金謙が本命となります。本命を通す為の囮として強金を発動する事を考えれば、併用が良さそうです。

▼十二獣
 圧倒的安定性から繋がるエクシーズモンスターが強力なテーマです。
 十分なデッキスロットに手札誘発を採用できる為、見かけ以上に妨害が厚いのが厄介なところ。ゲーム展開自体は中速~低速なので、貫通力を得る為に強金を採用するのが良さそうです。
 余談ですが、鉄獣戦線の勢力が増した為、メインから《屋敷わらし》を採用するケースが散見されます。わらしは「発動無効」の効果である為、これを逆手に取りお心づくしを複数発動できる可能性が生まれます。攻め入る際の要所になるでしょう。

▼召喚影依/教導影依
 根強い人気と確かな強さを誇る中速テーマです。
 基本的にメイドは中速デッキに対して有利ですが、それゆえに一挙手一投足がとても大切になるデッキです。お互いが重要なポイントに妨害を加えて動きを止めにかかる事を考えれば、妨害を踏み越える貫通力を得る事でより勝利が近づくでしょう。よって、強金を採用したいところです。

▼閃刀姫
 柔軟な対応力と層の厚い妨害が魅力のメタビテーマです。
 このデッキに対して最も有効なのは、魔法罠の全体除去と《王宮の勅命》です。これをいち早く発動する為に、金謙を優先しましょう。ですがメインから《ハーピィの羽根帚》や勅命を採用している構築は稀だと思います。
 だいたいはマッチ二本目からが勝負になるでしょう。初手の試行回数を増やせば、その分閃刀姫側がレイやロゼにアクセスできない事故を起こす可能性も高まります。

▼サンダー・ドラゴン
 高い制圧力を持つ融合モンスターが強力な中速テーマです。
 前述の通り超雷龍によるサーチ封じが厄介な為、その影響を受けない強金が優先されます。
 どうやら巷では鉄獣戦線の増加とその対策により、ロンギヌスやわらしの採用数が増えた事で動きが鈍り、結果シェアを落としているとの事ですが、頭の片隅に入れておいて損はないでしょう。

▼竜輝巧
 優秀なテーマモンスターと強力無比な制圧が得意な高速テーマです。
 このデッキに対しては強金でも金謙でもさして差はないと言えます。先攻を取られた上で《崇光なる宣告者》まで展開された場合は、後は手札とドロー次第になるからです。上手く噛み合う手札なら突破も可能ですが、おおよそどの効果も通らず手番を渡す事になるかと思われます。
 それでもなお優先すべきを考えるなら、僅かな可能性に賭けた強金が有効です。アルデクの無効効果は手札の天使族モンスターを消費する為、手数差で圧倒できれば巻き返しが可能です。その為には、手札誘発等で相手に状況を整えさせず、数少ない無効回数を惑わせる事が求められるでしょう。

▼幻影騎士団
 相手に何もさせない事を目的とした展開を軸とする高速テーマです。
 最強ロンゴミアントの成立は死を意味します。それを防ぐ為に手札誘発等の妨害を与えても、サーチ・セットされた《幻影霧剣》や、豊富な墓地リソースで継戦能力も高い為、メイドでは致命的な損害を与えるのが難しい相手です。唯一弱点らしき弱点として魔法罠による除去が挙げられる為、先攻展開を防ぎつつ、金謙で汎用除去カード等を引き込むのが良さそうではありますが……これ壺関係ないですね。

▼エルドリッチ
 罠デッキの最先端を行く低速テーマです。
 《スキルドレイン》や《手違い》等、拘束力の高い永続罠を発動されない限り、相手から受ける妨害は《黄金郷のコンキスタドール》による破壊、《黄金郷のワッケーロ》による墓地除外、《永遠に輝けし黄金郷》の万能カウンターの三種しかありません。これらさえ乗り越えられれば圧倒できる為、必要な壺は手数を得られる強金です。
 しかし既に厄介な永続罠が見えている場合は、除去カードを引き込む為にも金謙を優先したいところ。併用するか、サイドチェンジで壺の採用構成を変えるやり方も面白そうです。

▼エンディミオン
 魔力カウンターを主体に戦う中高速ペンデュラムテーマです。
 魔法の発動によって相手が利を得る為、壺の発動も場合によってはしない方が良い事も。しかし発動しなければどうにもならない場合も多々ある為、魔力カウンターの発生を少しでも減らす為にも、モンスター効果や罠に繋がりやすい金謙が優勢でしょう。
 しかし、メイド側が用意する妨害が、そもそもペンデュラムシステムと相性が悪い事もあって、攻め入るなら速攻を心掛けたいところです。

▼セフィラ/魔術師
 ペンデュラムから始動し強固な制圧盤面の構築を目指す高速テーマです。
 ペンデュラム召喚が主戦力のエンディミオンとは違い、こちら二種は他召喚法を多用し速攻を仕掛けてくる為、メイドでは分が悪い相手です。相手の速度に対応する為、強金よりも金謙による柔軟性が優先されるでしょう。

▼ドラゴンメイド
 悪い事は言いません、強金を優先しなさい。
 同じテーマで戦う場合、お互いの挙動はお互いが深く理解した上で、その効果を通すか通さないかの勝負になりがちです。ゲーム開始時点で既に情報アドバンテージの多くを互いに失った状態で戦う訳です。
 ですが金謙でさらに情報アドを失えば、自分が通したい動きが相手に筒抜けになり、結果的に本命の効果を通せず苦しい戦いになるでしょう。ミラーマッチにおける手札の隠蔽性は、動きの柔軟性よりも重要度が高いと考えます。

他の壺は?

 本記事では詳しく言及しませんが、メイドが採用しうる壺は他にもあります。しかし利点と欠点を天秤にかけた時、採用を見送られる場合がほとんどです。その理由を簡単に述べてみましょう。

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《貪欲な壺》
 優先的にデッキに戻したいモンスターがいません。余程展開系に寄せないと発動機会がないでしょう。手札誘発を戻して引き直す場合を考えても、現代遊戯王においてゲームがそこまで長期化する事は稀でしょう。魔法罠も戻せる《貪欲な瓶》の方がまだ可能性があります。

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《強欲で謙虚な壺》
 上位互換として金謙がありますので、そちらを使いましょう。

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《強欲で貪欲な壺》
 強金に似ていますが、メイドにとって重要なお召し替えや、数の少ない上級メイドが使用不能になる可能性があります。言い換えれば、構築の段階で不利を被る事になるでしょう。
 無理に採用する事もできますが、その場合は除外されたくないカードを手札や墓地など見える範囲に移動させてから発動する事になり、発動する為に余計な手順を踏む必要が生まれます。サポートの為にメインギミックを潰す必要はありません。

おわりに

 こうして見ると、cs構築のメイドが金謙を優先するのも分かりますね。連戦を前提にデッキを構築するなら、まず手札事故を減らし、いつでも最低限の動きはしたいところ。余程の地雷にでも当たらない限り、対面する相手は想像できますし、必要なカードの選択もしやすいのでしょう。
 また、大型大会に積極的に参加するプレイヤーは、知識に自信があり、読みも深い傾向にある為、金謙の見えないデメリットも帳消しにしやすいのでしょう。筆者も見習いたいですね。

 しかし、今でこそ金謙が優先されていますが、それは環境に合わせた適応による結果です。今後環境速度が低速化すれば、再び強金が優先されるようになるかもしれませんし、逆にさらに高速化するなら、壺の数を減らしてでも手札誘発の数が増えるかもしれません。
 また今回はcs環境を見据えた考えを軸としましたが、これが対戦数が絞られるランキングデュエルや、マッチ戦ではないYUDT等のシングル戦になれば、考えは全く別のものになるでしょう。
 蓋を開けてみなければ分かりませんが、適宜調整は怠らないよう、対戦環境の情報には耳を傾けたいところです。

 以上です。
 今後の【ドラゴンメイド】の躍進を願いながら、本記事を締めたいと思います。長い時間お読みいただき、誠にありがとうございました。

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