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TC-16AS 改造編

TC-16ASをデジタル機に対応させる改造の方法を記しておきます。
自分用の備忘録としての要素を多分に含みますので、この記事の内容をなぞって作業した場合、すべての責任を私は負いかねることをご理解ください。

なお、D3000番台やD5000番台の一眼レフカメラ、またFTZを噛ませたミラーレスカメラでは、ボディ側にモーターが無いためオートフォーカスは動作しません。この記事の手順で改造しても意味がありませんのでご注意ください。


作業の概要

 TC-16ASは、ニコンの一般的なAFモーター非内蔵レンズとマウント部の接点配置が異なります。これにより、ニコンの現代の一眼レフカメラでAFを駆動させることができません。

TC-16ASの接点部分。左から1-3-1の順番になっている。
空きピンの場所を含めて1(ピン有)と0(ピン無)で表すと、「1-0-111-0-1」の順番。
AFモーター非内蔵レンズ(Ai AF Nikkor 80~200mm f/2.8)のマウント接点部分。
左から、「1111-00-11」の順番。

ですが、このTC-16ASの左から数えて4番目のピンを、左から2番目の場所に移動させると、接点ピンの配置が一般的なレンズと同じになりAFを駆動させることができるようになります。この改造では大まかに説明するとこの移動作業を行います。


必要なもの

  • TC-16AS本体

  • マスキングテープ(私はタミヤ製を使いました)

  • アルミホイル

  • ヤスリ(なるべく細いもの

  • 穴を開けられるキリ・ドリル

ダイソーの電動ルーター用ドリルを使いました。
本来は別売りのルーターにつけて使うものですが、このまま手で持っても使えます。

・ピンセット(なるべく先が細いもの
・ニッパー(なるべく先が細いもの、理想は精密ニッパー)

基本的にどの道具もなるべく細いもののほうが作業がしやすいです。
特にニッパーは細くないと作業が行えない(隙間に入らない)ため、買う際は気をつけてください。


作業手順

1.ネジを外す

(以下、「マウント」はボディ側のマウントを指します。この改造過程でレンズ側マウントに手を入れることはありません。)

 マウントのネジを大きく分けて2箇所外します。

 マウント内部には細かい接点の部品やとても小さいバネ(失くすとダメです、漬物石にもなりません)があります。このようにジップロック等の袋に入れた状態で手を突っ込んで作業をすると、部品が飛んでいくことを避けられるのでおすすめです。

途中からは内部構造がある程度わかると思いますので、袋の中で作業しなくてもいいと思います。
あくまで最初に開ける場合の保険として…

まず最初に外すのはマウント側面にある3本のネジ

側面部を眺めてみるとだいたい3種類のネジが使われています。その中で一番大きいネジを外します。すると、

この写真の2本の黒いネジで止まっている部分を除く、黒いプラスチック部分が一周外れます。外れたら、後玉保護のために適当なマスキングテープか何かでレンズ部分を覆っておきましょう。

次に、先程の2本の黒いネジを外します。このときバネが飛び出てくる可能性があります。気をつけてください。

ネジを外して覆っているパーツを外すと、内部はこのようになっています。
バネと接点の部品は固定されていないため、傾けると抜けてしまいます。
無くしてしまうとどうにもなりませんので、もうこの時点で抜いて別の場所で保管しておきましょう。

直下のネジを3本外すと、接点ピンを載せていた部品が外れます。

2.穴を新しく開ける

2番ピンの部分に穴を開ける

 接点ピンを一般的なレンズと同じ配置に動かすために、まずピン用の穴を開けます。私は「必要なもの」の欄で紹介したダイソーのドリルを使いました。

このようにテープ等で固定してから開けるとやりやすいと思います

まず0.5mmのドリルで穴を貫通させてから、1.0mmで穴を広げます。
この2本のドリルでは他の穴の大きさまでは広がりません。

次にヤスリで穴を削って広げます。裏側からも削ると良いでしょう。
穴が必要以上に広がってしまうと、接点ピンが穴を抜けてしまいます。そうすると改造は失敗です。慎重に広げましょう。

純正の穴と同じか少し小さいぐらいになったところで止める!

くれぐれも削りすぎないように、ぴったりサイズの一歩手前で止めましょう。

3.フレキシブルケーブル上の接点を動かす

 ピンを移動させるだけでは信号はもちろん伝達されません、フレキシブル基板上の電子接点も同様に動かす必要があります。
私はアルミホイルを用いました。

アルミホイルを
2番→5番ピンの距離に合わせてコの字形に切り出し
マスキングテープをこんな要領で切って
接点部分に貼り付ける
裏側は
このように折ってマスキングテープを貼る

大まかな流れはこんな感じなのですが、実際には接点の細かい位置などの調整が必要になります。

「接点部分に貼り付ける」の画像でわかるように、純正1番ピンの接点の幅が狭く、3番ピンの幅がとても広くなっています。
純正の設計では(もちろん)接点を移動する改造など考慮されていないため、2番ピンのスペースがとても狭く他の接点ととても接触し易いです。
接触してしまうとAFが駆動しないため、このすき間にアルミホイルをうまく配置する必要があります。
現物合わせででちまちまといじっていくのでうまく説明はできないのですが、2番ピンのアルミホイルはとても細くしなければならないようです。

また、私の場合はそれでも他の接点と接触してしまっていたため、前から見て右側の位置合わせの穴(丸い方)を左方向に広げました。これを行うと接点フレキをまるごと右にズラすことができます。電気的に関係ない場所なので問題ないとは思いますが、気をつけて切ってください。


4.ピンをもとに戻して固定

 接点ピンをピン保持の部品に戻します。このとき、先程開けた穴に入れるのを忘れないように、忘れたら意味がありません(笑)

1111-00-1の順番

1.ネジを外す を逆の手順で行いフタを閉めます。接点がバネと正しく接触するように閉めましょう。


5.カメラボディに付けて動作確認

 カメラボディに装着して動作確認を行います。付けるのはこのテレコン単体でかまいません。シャッターを半押ししてレンズが前後に動けば改造成功です。
動かない場合はおそらく接点とバネが接触していないか、5→2番ピンの導通がうまくいっていないか…とりあえず開けてみてひたすら調整しましょう。

(私はこの工程で2-3時間費やしました。このあたりに写真が少ないのは作業に嫌気が差してしまっていたからです)


6.ICピンを切断

 最後の工程です。ここまでの内容を行えばデジタル一眼レフでもおおむね動作しますが、一つだけ問題点があります。絞りの認識がf/1で固定になってしまうことです。
マニュアル露出で撮影するならば問題はありませんが、自動露出がうまく機能しません。これを解決するには、鏡筒下部にあるICの足を2本切断する必要があります。

赤丸で囲った2本のネジを外します。するとICチップを横から覗く形に見ることができます。

切断後

左から1、2番目の足を切断します。

とても細かい上に、なんせ今から38年前に製造された基盤です。下手に触るとどうなるかわかりません。ですので、なるべくならニッパーなどではなく極細ヤスリなどを使って地道に削り取るのが一番安全だと思います。私はめんどくさかったのでニッパーで破壊しました。
基板側とIC側で足同士が接触しているようにも思えますが(いまのところ)特に問題はないようです。

切断がうまく行ったらフタを閉じましょう。レンズを装着し、一眼レフのボディに付けてみて、

  • オートフォーカスが動作すること

  • 絞りが正常に連動していること

の確認をしましょう。正常に動作すれば、作業は完了です。お疲れ様でした。

最後に

 オークションサイト等で改造済みの個体を売っている方がいらっしゃるようですが、手先に自身がない方はそちらを購入するのが無難で良いかと思います。

この改造は、手順的に難しいものではありませんが、非常に部品が細かく失くしてしまうと替え部品はないこと、また全体的に劣化が進んでおり、脆くなっていたフレキシブルケーブルがちぎれたりといったことが起こる可能性があります。(実際私もちぎれかけましたがマスキングテープでリカバリーしました)手間と時間を考えると普通に買ったほうが得策です。

それでも金を節約したいんだ!という方や、俺は手先が器用だ!という方はやってみても良いかもしれません。

参考サイト

 以下のWebサイトを参考にさせていただきました。ありがとうございました。


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