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バルヴェニー蒸留所へ

2023年8月にバルヴェニー蒸留所を訪れました。
この蒸留所はウィリアム・グラント&サンズ社が所有しており、すぐ隣には同じく同社が所有するグレンフィディック蒸留所があります。
販売量で世界最多を誇るグレンフィディックには豪華なビジターセンターがありますが、バルヴェニー蒸留所のビジターセンターは、それと比べると入口が分かりにくく、少々入りにくい雰囲気があります。

ビジターセンター

ただし、蒸留所ツアーの内容については、今まで参加したツアーの中でも満足度が高かったです。
その体験を共有できれば幸いです。

ツアー開始前のサービス

ツアー開始前の待ち時間には、ウェルカムコーヒーがサービスされました。テイスティングをより楽しむため、テイスティング前の朝食でも刺激物を避けると聞いていますが、提供されるものはありがたく頂戴しました。
参加者と何処から来たのか、どのウィスキーが好きなのか?等々定型の身の上話をしつつのんびりとした空間で過ごした後、指定の時間になると、皆、オレンジ色のベストを着てツアーに向かいました。

建物はフロアモルティングの建物
建物内

バルヴェニー蒸留所は、スコットランド内でも数少ないフロアモルティングを行う蒸留所の一つです。
さらに、使用する原料大麦の約1割は自社栽培によるものとの事。
契約農園から大麦を調達することは聞きますが、、自社で栽培する大麦を使用するというのは珍しいのかなと(他の自社栽培の大麦を利用している蒸留所としては、ロッホリー、キルホーマンなどかなと)。
バルヴェニーの年間生産量は700万リットルであり、これを踏まえると、自社栽培による大麦の量も相当なものだと推測されます。フロアモルティングに用いられる建物の面積は、他の同様の施設に比べてもとても広く感じました。

キルホーマンのフロアモルティング
スプリングバンクのフロアモルティング

フロアモルティングと、製麦業者(モルトスター)が工場で行うような機械を使った大量モルティングとの間で、味にどの程度違いが生じるのかは正直分からない部分があります。
ただ、フロアモルティングは伝統的な製法を守ることでブランドの個性を際立たせやすくする効果があるのかもしれません。
バルヴェニーだけでなく、実際にフロアモルティングを行っている蒸留所(キルホーマン、スプリングバンク、ボウモア、ラフロイグ、ハイランドパーク、ベンリアック、グレンギリー)も、クラフトマンシップを重視している印象を受けます。曖昧な感想ですがこれらの蒸留所も、作り手の情熱を感じる事の出来る蒸留所でした。

話をバルヴェニー蒸留所のツアーに戻しますが、麦芽を乾燥させるために使用するピートは、スペイサイド産であるとの説明がありました。

キルンの火入れ口

ピートの印象が強くなバルヴェニーですが、ピーティーなウイスキーが世界的に人気を集めていることから、新しくピーティーなウィスキーを市場に投入したとのことです(後でテイスティングを記載)。

ステンレスマッシュタン
何故かキニンヴィーの発酵槽もあり。笑

生産量が多い蒸留所では、マッシュタンのサイズが大きく、発酵槽の数も多い傾向にあります。
興味深いことに、キニンヴィー蒸留所の発酵槽もここに置かれていました。隣接する同じ系列の蒸留所間施設間で建物を共有しているのかなと思いました。
バルヴェニーでは、発酵時間は65時間から72時間と、比較的長く設定されており、この長時間発酵で香り高く風味豊かなウォッシュを生み出すとの事です。

ポットスチル。
ポットスチルを見た後に外へ

ポットスチルの見学を終えた後、ツアーは屋外へと移動しました。
屋外には大量の数の樽があ、迷路を作れるのでは?と感じました。
(屋外で樽を乾燥させているそうです)

大量の樽
樽。。。
クーパレッジ内

蒸留所内にクーパレッジ(樽製造および修理工房)が設置されており、日々樽のメンテナンスや再利用が行われていることを説明されました。
また、ウィスキーの風味における樽の重要性についても学ぶことができました。
実際に、ウィスキーの風味の大部分(約70%程度!?)は、樽由来であるとの話もあり、品質の良い樽の確保&メンテナンスはウィスキー製造において非常に重要な要素である事も理解しました。

ウィスキーの浸透が分かる
K9の記載のある樽

いくつかの樽には「K9」という印が付けられており、これは犬のケビンがマーキングした樽に記されるものだということです。
ウィスキーの熟成における樽の役割の重要性は上記の通りですが、犬の嗅覚を満足させる樽がどのような熟成の違いを生み出すのかについては、非常に興味深い点でした。

熟成倉庫の入り口

残念ながらウェアハウス内での撮影は許可されていませんでしたが、ウェアハウスでの特別イベントとして、12年熟成のバーボン樽とシェリー樽から、ハンドフィルする体験がありました。
この際には、カッパードックという器具を使用してウィスキーを樽から取り出し、ボトルに詰めることができました。

ハンドフィルしたバルベニーのシェリー樽12年

もったいなさすぎて、少しづつしか飲めません。苦笑。
その後、ビジターセンターに戻り、お待ちかねのテイスティングの時間です。

テイスティングセット計5杯
テイスティングボトル
テイスティングボトル

アメリカンオークトースト12年:ハニーのような甘さに加え、麦の風味が強く感じられます。非常にソフトでありながらも、オイリーな質感も。
フレンチオーク16年:桃やペアーのようなフルーティーさが際立ち、アメリカンオークに比べてやや濃厚ながら、なおソフト。
ポートウッド21年:レーズン、プルーン、デーツのような濃厚なベリー風味が特徴で、ナッツのニュアンスもあります。
ウィークオブピート14年:滑らかで甘みがあり、軽やかなピート感。バニラ、塩気、ウッディさも感じられ、ピート初心者にもおすすめできる一本です。(スタッフの方曰く、イージーゴーイングなピート)
カスクアンドキャラクター19:シェリー樽でフルマチュレーションされたもので、ベリーの風味が強く感じられる。

どれも素晴らしく美味しかったですが、この際の私のお気に入りはポートウッド21年です。価格も、なかなか魅力的でした。笑

バルヴェニー蒸留所は生産量が多いにもかかわらず、(グレンフィディック蒸留所とは一線を画し)クラフトマンシップを強く感じられる蒸留所だと思います。
このツアーは非常にお勧めですが、予約が平日のみ&小人数(8名)なので予約がなかなか取りにくいという事が難点かもしれません。

ではではまた。

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