今年の夏は、ソファの上で旅に出てみた
社会人2年目の夏。仕事中心の日常から少し離れて、自分を一度リセットしたくて、約1ヶ月の休暇を取得した。
自分にとって海外を旅することは、日常をリフレッシュする最高の方法だ。
これまで世界75か国を旅してきたのも、きっと肩書きや私生活に捉われないありのままの自分自身で、非日常を五感で体感することが心地よいと感じるからだと思う。
しかし今年になってから、海外へ行くことはかつてないほど難しい状況となってしまった。
そんな時に出会ったのが「僕が旅人になった日」という本。
僕が旅人になった日(ライツ社) https://www.amazon.co.jp/dp/4909044272/ref=cm_sw_r_cp_tai_5GDwFbCJ7PC7N
毎年休みの度に握りしめる海外への航空券の代わりに、この本を片手に取って、素敵なエピソードと世界を切り取った写真に溢れた本の中へと旅をすることにした。
この本は、noteで「#旅とわたし」というテーマで投稿された4000件以上の作品をもとに、TABIPPOが20人の旅人のストーリーをまとめた本。
「旅に出た理由は?」「旅って何?」「旅人になった日は?」という問いから始まり、様々な地を旅した個々人の唯一無二のエピソードが綴られている。
ユーラシア大陸を自転車で横断した人、末期ガンを宣告された父とカナダ最果ての地を旅した人、旅先でロバを買って逃げられた人、、
気付いたら一気に本を読み終わってて、ソファでお茶を飲みながら一息つく。普段日常と対峙していると、忘れがちな自分の過去の旅先での気づきを、本のエピソードを読んで再確認できたなあと感じた。
ドイツの農場でアフガニスタン出身の難民の方と働いていた際、メディアの報道だけで「難民」へのネガティブな印象を持っていた自分を恥ずかしく思い、自分の目で見て肌で感じたことを信じて生きていこうと決めた瞬間。ボスニア・ヘルツェゴヴィナの街中で熱中症で倒れた自分を助けてくれた、現地のナイスガイなおじさんのかけてくれた「Pay It Forward」という言葉。3週間のホームレス生活から始まったドイツ生活や、深夜に3時間ロシア語で尋問されたベラルーシ国境でも結果的に何とか乗り切れたこと。以下のエピソードを読んでいる際に、頭の中に浮かんできた過去の自分の経験だが、どれも自分にとっては、お金をいくら払っても絶対に買えない貴重なものだ。
今日も、テレビではニュースが流れる。「テロが起きた」「犯人はあの国出身だった」でも、その裏には、自分の国が悪者になり、悲しんでいる人がいる。事実を伝えるニュースは大事だ。でも、私はちゃんと想像したい。その国で生きている人たちの暮らしを、表情を、心の中を。「危ない」「怖い」そして「わからない」一つの情報だけを見てそこで思考停止してしまう、そんな大人になりたくない。ー01「イスラエルで見た戦争と平和」原歩未さんの文章より
マレーシアで出会ったひとが、私に言った言葉。「あなたが今受けた恩を、私に返そうとしないで。その分は、次に出会う別のひとに返しなさい」わかった私も次のひとに愛を渡せるひとになる。ー04 「働きながら旅をするマチュピチュでうたた寝しながら考えた」伊佐知美さんの文章より
アメリカ横断の日々はトラブルの連続でしたが、どんなに困難なことがあっても、「なんとかする」ということを学びました。そんなことしてなんの意味があるの?と思われるかもしれませんが、世の中なんてなんだかよくわからないことがほとんどで、そういう時に、自分の力でなんとか乗り越えるということがめちゃくちゃ大事なんだと思ったのです。ー05 「ニューヨークで『今から野宿』ね」野田クラクションベベーさんの文章より
海外に行けなかった今年の夏。それでも本を通じて、今後も自分が大事にしていきたい考えを振り返る素敵な旅ができた気がする。旅をそんなにしたことがない人でも、きっと日常が少しワクワクする考えに出会えるはず。
もうすぐ休暇が終わってしまうけど、少し日常につまずいた時はまたこの本を読んで、前を向いて歩いていきたいなと思った。