コウダヒロカズさんによる「渡来宏明/solitude symphony」へのコメント
Hi!ワタさんだよ。
今回はアルバム「solitude symphony」のミックス担当&アドバイザーとしても活躍してくれたコウダヒロカズ君のコメントです。
コウダくんはミュージシャンとしても活躍中ですが、(※恋はブラストビートのドラムはコウダくん。)ワイカーズのアルバムや前作ポップモノリスのエンジニアリングも担当してくれました。ですので共同製作は今回で3作目ですね。
まさに今のワタさんサウンドの守護神てきな感じでしょうか。
とくに私の場合ミックス死ぬほどやりながらも、同時に思いついたら音源ファイルをガンガン送りつけるというキグルイなので作業は困難を極めたと思います。
聴くとそんな苦労のあとはあんま無いよね。それがコウダマジック!
それではコウダくんのコメント、
下記よりどうぞ!↓
ミックス担当者によるsolitude symphony解説です。
01.solitude symphony
この曲以外でも随所に登場するメロトロンのストリングスは、ELOっぽいオンマイクな音でだったのですが、もう少し自然な感じを目指し、薄っすらリバーブをかけてホールで演奏しているような感じを出しています。
02.You're my girl
この曲のラフミックスでアルバム全体のドラムの音が決定した記憶があります。ベースがこもった音なのに対して、ドラムをハイ上がりにすることで、広い音域にリズム感を持たせるという構造美的なサウンドは、渡来さんも大好きなAC/DCがモデルです。
03.君は冒険家
曲としてはアルバムで一番好きです。リズムだけ聴くとメロコア風ですが、メロディの展開と、随所に散りばめられたギミックがうまく組み合わさって、非常にドラマチックだと思います。
ミックスでは、ドラムの音が重すぎず軽すぎず…という落としどころを見つけるまでが大変でした。
パトカーのサイレン風のギターが通過していく演出では、パンニングと音量調整に必要以上に拘っています。
04.二人で過ごそう
ダブルドラムとギター、パーカッションが一体となってリズム感を際立たせる仕上がりになっています。ダブルドラムの片方だけ右チャンネルに寄せるという渡来さんからのアイデアは驚かされました。
05.つまさきのストライプ
アルバムの中ではかなり音数が少ない曲ですが、ハモンドオルガンの中低音が豊かで、スカスカな感じがしません。ギターソロをフルートに差し替えればスタイルカウンシルみたいになりそうですね。
06.ウキウキピックミーアップ
めちゃくちゃ踊れるダンスナンバーなんですが、ベースがダブルトラックでステレオで鳴ってるので、ヘッドホンで聴くと謎の浮遊感があります。ゲストコーラスが入って一気に存在感が増した曲ですね。
07.いとこの記念日
この曲だけドラムがマルチマイクで録音されています(他の曲は基本4チャンネル)。とはいえミックスではオーバーヘッドのマイクをめちゃくちゃ大きく出しており、ハイファイな音作りとは真逆です。曲調に合わせてリミッターをかなり強めにかけています。
08.夜をはじめよう
ミックスの出来も含めて、かなりお気に入りの曲です。A面の(オープニングナンバーを除いた)1曲目「You're my
girl」がどっしりしたリズムなのに対して、軽快なリズムで始まるB面1曲目になります。各パートが違うリズムを刻んだり合流したりするリズムアレンジに注目して聴いてみてください。最初は僕の好みでベースをめちゃくちゃデカく出してましたが、常識的な音量に落ち着きました。
09.知る前が最高さ
このアルバムはほとんどの曲で、ギターはダブルトラック、キーボードはステレオで録音されてるんですが、この曲ではシングルトラック。ボーカルとコーラスはダブルトラックですが、パンは振らずに真ん中、ストリングスも真ん中です。その結果、ブレイク時のタム回しのステレオ感が強調されたように思います。このタムの音、音程感と残響がとてもいいです。
10.恋はブラストビート
めちゃくちゃキャッチーなサビメロのバックに、これでもかってくらい色んな音が詰め込まれてます。自分がプレイしたドラムについては、他の曲に比べて音が軽く、音圧が出しづらいので苦労しました。
11.世界に抱かれ
ラフミックスから完成まで、一番変化が少なかった曲じゃないでしょうか。他の曲が攻めすぎてるので、落ち着いて聴ける曲もあっていいのではないかと思います。クラップの音が一番よくできたのはこの曲でした。
12.君をみてたい
キーボードもギターもたくさん入っていて大変でした。どのパートもステレオで出しているため、音がかぶらないようにパンニングで振り分けて…といった処理は使えず、細かい音量調整をしています。
13.今宵ハッピーエンドで
君をみてたいの重層的なサウンドとは打って変わって、こちらが出ればあちらが引っ込み…といった、モグラたたきのようなサウンドです。Jellyfishのアルバムで、最後の曲にはアルバムに出てきた全ての楽器が使われるというのがあった気がしますが、近いものがあります。録音されたものの使われなかったフレーズや、同じフレーズでも別の音色で録られたものなど、この曲は特にアウトテイクがたくさんあるため、それらを活用すればいくらでもリミックスが作れそうです。
ラストのギターソロからのエンディングは、天からお迎えが来るような静謐な雰囲気が出ていて気に入ってます。
コウダヒロカズ