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吹き抜ける風(3回シリーズ)

目次
1.練習中
2.授業中
3.道

1.練習中
「あーしんど」
何本目?俺ら。いつまでやらされんだ?

兄貴すげーよな。嫌いだけど。ソンケーはする。マネの子が最近気になるな。でも俺は頭もよくないし、性格だって良くない。まぁほぼ兄貴を見てるだろうしな。なんか面白い事ねーかな。兄貴はいつも注目の的なんだよな。かっこいいし、賢いし、性格も真面目で、人気者。でも嫌いだ。昔から、親も兄貴の味方で、いつも俺は悪者扱い。ケッやってらんねー。

俺ら、陸上競技部は今度の試合に向けて練習中。俺の専門は100。100mって意味。

「はい、お茶」

「おう、サンキュ」

「どうしたの?なんか力入ってない感じだけど」と麻奈が声を掛けてきた。さっき言ったマネのコ。俺の女、じゃないけど。

「いや、別に」

「ふーん、ならいいけど」

「翔君いつもながらにすごい頑張ってるね。」

「あぁ、試合近いからじゃね?」

「まぁね、そうだろうけど。」

「気になる?兄貴」

「まぁね」


「おい、おめーら、何くっちゃべっとる!練習しろ」と兄貴の声。もう怒り方がまるでおっさん。でもみんな慕ってる。俺はキライだけど。


「はい、集合。今日はここまで。お疲れさん。」

よっしゃ、終わった。あっこでラーメンでも食べて帰るとするか。旨いんだよな、あっこのラーメン。ニンニク効いててすげーうめー。秀平と行くか。

「おい、秀。ラーメン行くぞ。」

「すまん、俺最近予備校通いだして今から行くとこ。お前は行かねーの?予備校とか。もうすぐ受験だぜ?」

「それ言うな。それ禁句。親にもさんざん言われてるしな!」

「いや、でもそろそろ考えといた方がいいぜ。あとあと後悔しねーように、な?」

「んーそれなんかつまんねーんだよな。まっじゃいいや、俺一人で行ってくる、じゃあな」
「そーいうのお前らしいな。じゃな。」

予備校ねぇ。俺には興味ねえな。
「おばちゃん、いつもの。」

「はいよ、あれ?今日は一人かい?デートかな?」

「いや、違うと思う。予備校だってよ。真面目だねぇ。」と俺。

やっぱうめえ。今日もニンニク効いてて最高だ。

「予備校かい、意外と真面目なとこもあるもんだ。で、お前さんは?」

「俺はぜんっぜん興味ねー。だれかカワイ子紹介してくれね?」

「あんた何言ってるの。ほんっとしょーもないガキだねぇ、まったく。お兄ちゃんとは大違いだ。」

「うっせー、おばちゃん。でもこれやっぱマジでうめぇ。さいこっ!」

「あんたはノー天気だねぇ、まったく。うれしいけどね、私は。

 で、進路どーすんのさ?」

「うぜーよ、そればっか。おばちゃん、雇ってくれね?」

「何言ってんだよ!あたしゃ、忙しいんだよ!!あー忙しい、忙しい。」

はいはい、またかわされてしまった。結構本気なんだけどな…。それにしても、みんななんでそんなに勉強好きなんだ?俺にはサッパリわかんね。旨いな、やっぱ旨い、いつも通りだけど旨い。ここの雰囲気好きなんだよな。ここの大将も寡黙でカッコイイしな。進路かぁ。ん~ムズい。俺には走る、しかねえしな。走るのはやっぱ好きだもんな。

「おばちゃん、ここお金おいとく。ツケの分も。」

「あら、気前いいねえ。どうしたの今日?」

「いや、いつものように旨いな、と思ってさ。」

「まぁ、どしたのかしら?ヒョウでも降るのかね?」

「降るかもな。

 じゃ、ごっそーさん、おっちゃんまた来ます。」

寡黙な大将は背中で返事。いつも通りだ。

 

走りながら働くのもいいか。好きな事しながら金稼ぐ。うん、いいかも。俺に合ってるかもしれない。ちょっと兄貴に相談してみよっと。

自転車をこぎながら、夜風が気持ちよくて、爽快だった。

 

「ただいま。おっ兄貴!いいとこにきた。」

「おっどした?なんかいい事でもあったか?」

「いや、ちょいと進路相談。てか俺の道。ききてえか?」

「いや、聞きたくない。また、いつもの走って金稼ぐ、とかだろ?お前には無理。ぜーったいムリ。言いたい事はそれだけか?じゃな。俺は忙しいんでな。」

「まてよ。まてまて。今回は違うぜお兄様。うふっ、じゃねーけどな。いや、俺ね、いつものラーメン屋の雰囲気好きでさ、ラーメン自身も旨いし。あそこで働きながら走るの続けようかと。どうこれ?結構良くね?」

「ばーかか、お前。お前はまだ高校生だ!現実を考えろ!!とりあえず、今から今日の復習と明日の予習をやれ。ていうか、宿題をやれ!!今すぐにだ!」と兄貴は自分の部屋のドアを思い切り閉めた。

ちぇっ。しょーもねー。兄貴にはこの俺の気持ちがわからんのかねぇ。せっかくいい案だと思ったのにな。まっとりあえず宿題すっか。あっノート借りるの忘れた。まぁ4限目だしなんとかなるだろ。今日はもう寝るとするか。

「あっ蓮。帰ってたの。ご飯は?」と一階から母さんの声。

「いらない、ラーメン食べてきた。もう寝るわ。」

「あそう、おやすみ。」

「うん、おやすみ。」と俺は真っ暗な中でもんもんとしていたが、しだいに寝てしまっていた。

                        2.授業中 につづく

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