誰かに「湯神くんには友達がいない」を推したい
働き初めてから買う漫画は、大抵学生時代から買っていた漫画の続刊だった。
一人暮らしの1DKはうさぎ小屋のように狭く物を増やしたくないというのもあった。
そんな私が試し読みではまり、社会人になって以降、初めて買い揃えた漫画が「湯神くんには友達がいない」である。
話の大筋
タイトルにもなっている湯神くんは野球部のエースであり勉強も得意。日々徳を積み、予習復習をかかさず、計画を立てて物事に取り組む。制服のアイロンがけも自分でやっちゃうよくできた男子高校生だ。
これだけ聞くと湯神くんのことを好青年だと勘違いしてしまいそうになるのだがそうではない。行動が素晴らしいことに違いはないのだが、好青年とは言い難いものが彼にはある。
偏屈で変わり者。悪い人ではないが空気を読まず正論をずけずけ言ってしまう。自分が納得できないことは絶対にしない。周囲のことは気にせず我が道をまっすぐ突き進む。
扱いづらいのでクラスメートからは敬遠されているし、野球部でもエースなのに浮いているが、そんなことを湯神くんは気にしない。
好きな咄家の落語を聞いて研究したり、よい球を投げられるよう自分のコンディションを整えたり、なにかあったときに困らないよう徳を積むことに忙しいからだ。
超絶マイペースな湯神くんは誰かとつるむことを好まず友達は必要ないと言いきり、楽しいお一人様スクールライフを謳歌しているのである。
そんな湯神くんの隣の席に転校生の綿貫ちひろちゃんがやってくる。彼女はお父さんが転勤族であるが故に幼い頃から転校を繰り返し、段々クラスメートと深く関わらなくなってしまった女子高生である。
新しい学校では仲が良い友達がほしいと思っているが、あまりクラスには馴染めていない。
一方でストレス耐性があるのか、なぜか湯神くんとまともに会話が続く数少ない人間となる。
全くタイプの違う二人を中心に物語は進む。
ちひろちゃんは湯神くんを面倒な人だと思ったりしながらも、時折湯神くんがくれる率直かつ湯神ニズムあふれるアドバイスに救われて根は好い人なんだよなぁと思ったり、湯神くんの性格ゆえに起こる面倒ごとに巻き込まれてやっぱりなんだこいつと思ったりしながら次第に新しい学校生活に慣れていく。
その間、湯神くんにも徐々に変化が訪れ…ということは全くない。彼は彼のまま終始偏屈であり続ける。それは彼なりのルールに基づくものであり、思考や行動が一貫しているので最早清々しい。
最初は遠慮がちだったちひろちゃんが、だんだんと湯神くんの扱いが雑になり、他の人に迷惑をかけるのは悪いからと湯神くんに捨て犬を押し付けたりしているのも面白い。
二人の絶妙な関係性や湯神くんの湯神くんらしい言動、周囲で巻き起こるトラブルに思わず笑ってしまう。
いい意味でハラハラせずに楽に読める、疲れた社会人におすすめしたい漫画だ。是非読んでみてほしい。