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ヤドカリ

 

ヤドカリは自分に合う宿を探して借りて生きている。

私は生涯ヤドカリだった。

物心がついてからは無意識に自らの居場所である「宿」をいつも探していた。
小学生時代にいじめられた経験があったため、中学生になる頃にはいじめに対して過度な恐怖心を抱いていた。そのため私は常に誰かの主張に隠れて過ごした。
AさんがBさんの悪口を言えばそうだねと頷き、BさんがAさんの悪口を言えば同じくそうだねとなんとなく同意とも言えない同意をしておいた。そうして「自分はこう思う」と発言することを避けて過ごしてきた。

親の言うことも先生の言うこともよく聞き、たくさん勉強した。そして、親と先生の言うまま地元で一番の高校に進学した。
誰かの意見に宿っておけばいい、そう思いながらいつもなんとなく生きていた。 
だがそれも高校では通用しなかった。


私は高校で挫折した。


今までみんなの言う通りに生きてきたけれど、その生活が自分のキャパシティーを超えてしまったのだ。
勉強にも部活にもついていけなくなった。なんとかついていこうと勉強も部活も必死に取り組んだが、二年生の二学期のある日を境にベッドから起き上がれなくなってしまった。 

また、その頃から精神的に不安定になることが多くなり、初めて行った心療内科でパニック障害と診断された。パニック障害とは不安障害の一つで、突然激しい不安に襲われる。また、急に動悸や吐き気、過呼吸などを引き起こす。

その頃には学校でも家でも度々パニック発作を起こした。

当てもない不安感に襲われ、過呼吸になった。学校では、教室に入ると過呼吸になり、もっぱら保健室で過ごすようになった。ひどい時は制服を着ることも難しく、着ようとするだけで過呼吸になった。
勉強ができた自分の居場所も、部活を頑張っていた自分の居場所もなくなった。


人生で初めてヤドナシになった。


当時は家庭内環境も悪かったため、基本的に家に居ることは私にとって苦痛だった。
学校に行けばクラスの仲間も部活の仲間もいた。でももう私は彼らとは一緒に居られなかった。一緒に居るとどうしても彼らと比較してしまい、その度に自己嫌悪になり過呼吸になった。

学校にも家にも居場所がなくなった私は、裸のヤドカリのように居場所を求めてさまよった。


続きは明日…

すなねこ🐈

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