Vol.3 Web増刊号:スナップ/作品と呼びたくない
スナップ/作品と呼びたくない!
写真について Vol.3のメインテーマはスナップではない。
「なんとなく撮り溜めてきた写真の山」「手に持ったカメラと目線を大まかに一致させて撮る、あるいは体の延長線上において撮る」「生きてきた時間の流れのなかで、目の前を撮ってきた写真」……。
写真に興味が薄い人のスナップってなに?という疑問に答える際であれば、この類の写真もスナップだと一括りにしてしまうところだが、ここは一丁厳密にいきたい。Vol.3で取り上げたのはスナップとは少し違う、人生に密着した写真・撮影なのだ。
となると問題はスナップの方だ。厳しく考えた時に、スナップとはなにか。
そんな疑問にぴったりの本がある。
スナップとはなにか
甲斐義明『ありのままのイメージ――スナップ美学と日本写真史』はスナップショットという語の歴史と受容を精査した上で、広義のスナップと狭義のスナップをそれぞれ「手持ち小型カメラで素早く撮影された写真および撮影技法」「被写体に気づかれずに撮影された写真および撮影技法」と定義する。狭義のスナップを支える「スナップ美学」がどのようにして1つの制度となり、日本写真史に影響を与えてきたのか、検討を行う方向の多様さに圧倒される。
当書が厳密に定義する語はスナップだけではない。文中の1つ1つの言葉の意味、範囲が明らかにされている……ないし、そうしようという姿勢が示されている。
こうして言葉を明確にしていく思想は、筆者本人による当書のブックガイドの補足にも現れる。
この補足を読んで大層驚いたのは、私自身がプロジェクトを呼ぶ作品のよう制作と、この「プロジェクト」の定義がまったく同じだったのである。そうやって「作品だ!」という意識をズラしてからの景色はまるで違ったものだった。言葉の取り扱い方ひとつで制作に対する姿勢も変化しうるのだ。
『ありのままのイメージ――スナップ美学と日本写真史』ブックガイド
当書を開くのに二の足を踏んでいる人には、Webに公開されている目次と合わせて、先に筆者本人による以下のブックガイドに目を通すことをオススメしたい。紹介されている本を読まずとも、解説部分だけでも当書のおおよその雰囲気が掴めるだろう。
巻末にブックガイドが付いていたり、こうしてwebで公開されたりするのは本当にありがたい。正直なところ紹介されている本の半分も読めていないし、家には未読の本が積み上がっているのだが……。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?