80年前のトイレが、センス良すぎた件
私は、今まで「現代のトイレは、昔よりオシャレである」と確信していました。
その理由は、幼少期、日本のトイレで大きなシェアを占めていた和式トイレ。幼いながらも、腰を落とすことが出来ず疲れる&匂いがこもる和式トイレはあまり好きでありませんでした。しかし、時代が進むにつれ、腰を落とせ匂いがこもりにくい洋式トイレが日本に普及。洋式トイレの方が何だかオシャレに思え、日本のトイレ文化は進化しているイメージがあったのです。
しかし、先日、「江戸東京たてもの園(東京 小金井市)」の前川國男邸に訪れ、その考えはガラガラと崩れさりました。
「江戸東京たてもの園」の前川國男邸
前川國男さんは、私は、恥ずかしながら「江戸東京たてもの園」を訪れて初めて知ったのですが、ル・コルビュジエに師事し、上野の東京文化会館や東京都美術館等を設計されたと言われる人物。
「江戸東京たてもの園」は、1942年に完成したご自宅を再現。外観は、モダンというか和風の構えですが、よく見ると無駄な装飾が無く合理的でシンプルなところがモダニズム精神を表している気もします。
邸宅は、自然光が美しい吹き抜けの居間を中心に設計。美しくデザインされた大きな窓から差し込む自然光は、時間や季節によって変化しそうです。光と共に生活することを、とても大切に思われていた方であることを感じました。
設置されている机や椅子なども、今にも通じるシンプルでモダンなデザイン。日本人の背丈に合わせたコンパクトな作りになっているのが使いやすそう。
自然光を美しく素敵に取り入れている点とデザイン性と使いやすさを考え抜かれている審美眼ににとてもセンスを感じました。
光を効果的に取り入れたトイレとバス
どこをとってもセンスを感じられた前川國男邸でしたが、一番、素敵だなと感じたのはやっぱりトイレ。
自宅にあった2つのトイレを見学出来ましたが、私のお気に入りはトイレとバスと一緒になっているタイプ。自然光が美しく差し込んでいるのがとても印象的で、光を大切にしているこの邸宅にとても合っています。
防犯上の理由などで、窓がないトイレが増えている現在ですが、やはり自然光が差し込むと開放感があっていいな。
そしてこの空間を特別にしているのは、何と言っても色の配色ではないでしょうか。
壁のタイルややトイレやバスに使われているのは、白でメインカラー。タイルの床とトイレのフタに使われている黒がサブカラー。床に置いてある籠は明るい茶色でアクセントカラー。このインテリア黄金比が、洗練された空間を演出していると思われます。
また、一番、私が驚いたのが黒のフタの存在です。フタを黒にすることで、グッと全体が引き締まりますし、何より遊び心がある!現代でも、こんな遊び心があるオシャレなことをする人はなかなかいません。
籠は恐らく、入浴時用のものですが天然素材の暖かみがモダンでシャープな空間に暖かみを添えています。
センスが良い人に時代は関係ない
洗練されているけれどもクールすぎず、自然の暖かみがある一種の「隙」がとても居心地が良さそうなトイレ(とバス)。この空間を80年以上も前に作られていたことに、驚きを隠せません。
デザイン性と使いやすさ、居心地の良さをトイレにまでしっかり考えられデザインし実現されているのは、さすが日本のモダニズム建築の祖と言われる方。センスが良い人に時代は関係ないのですね。
自分がどんなデザインが好きで、どのような空間でどのような気分で過ごしたいかを改めて考えさせれる空間でした。