私の推し活 EP5:コロナ期

2020年4月から自粛生活に突入すると同時に、自身の仕事もテレワーク勤務に切り替わった。漠然とした不安が漂い、身動きの取りにくい日々が続いた。

そんな状況の中、TPDはインスタライブやSHOWROOMなどの配信ツールを活動に取り入れ、在宅でも楽しめるコンテンツを提供してくれた。

SHOWROOMに関しては、課金イベントの期間が半年に及んだことからその手法に賛否が巻き起こったものの、自宅から配信されるプライベート感満載のメンバーの様子を見られることは願ったり叶ったりであり、鬱屈した気持ちも吹き飛んだ。

夏にさしかかると無観客ライブが開催され、またオンラインのトーク会も行われるようになった。画面越しではあるものの、特典券を何枚も握りしめていた頃と同じように、話のネタをあれこれと考え、ひと時の交流を楽しんだ。

しかし、直接推しに会えない、また友達にも会えないという寂しさは、いくらお金を費やしてもなかなか埋めることができなかった。

SNSで気を紛らわせようにも、政治的分断を扇動するニュースや、閉塞感がもたらす心ない言葉が飛び交っており、余計に落ち込む始末であった。

ふと気がつけば、2012年3月にももクロのライブで現場デビューをしてから既に9年が過ぎていた。

諸行無常はアイドルも然り、ヲタクもまた然り。時が経つにつれ、新しい現場に身を移す者、プライベートに軸足を移す者など、一人、また一人と周りから姿を消していく。

リアルなコミュニケーションをアイドル現場に依存していた自分にとって、コロナ禍の到来は孤独感を強く惹起させるものであった。

精神的に辛い日々が続いていたが、世間ではGo Toキャンペーンを皮切りとして規制緩和の動きが進むようになり、ライブシーンも回復の兆しを見せてきた。

先代から数えて結成30周年となるライブは6月の開催が延期となっていたが、ようやく12月に行われた。感染予防策として往年のコールが制限される中、ピンク色に光るペンライトを遠慮気味に振り回した。約1年ぶりにライブを見たせいか、妙に照れ臭くてドキドキしていた。

年末にはTPDの冠番組の復活イベントがシブゲキで開催された。「ROAD TO 2020」を副題としたこの番組は、この年開催される予定であった東京オリンピックの出演を目指すべく、2013年10月から1年半に渡って放送されていた。イベントでは当時共演していた古田新太も登場し、初々しかった頃のメンバーを懐かしんだ。

翌年、2021年1月からは推しの出演する舞台がスタートした。東京公演だけではなく、大阪や静岡、名古屋、広島と、久しぶりに遠征を満喫した。楽しかった現場の日々を思い返すと同時に、上西星来の成長ぶりにひとしきり感動していた。

推しの舞台を堪能した後は、例年6月に開催される周年ライブを待ち侘びていた。しかし4月に入ってからも、一向にその発表はされなかった。

「もしかして…。」

悪い予感は的中した。5月末に公式サイトから"大切なお知らせ"がリリースされたのである。

大切なお知らせとは、ヲタクにとって決してポジティブではない通告を意味する。TPDが9月いっぱいで活動休止するという文章を読んで、今までの記憶が走馬灯のように駆け巡った。

(続く)