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小さなコミュニティ経済圏の規模と、存続に必要な努力(アートコミュニティやクリエイターコミュニティと関連する話)

この記事だけでも完結すると思うのですが、一応関連しそうな記事を下にリンクしておきます。

まずこの記事の背景に、クリエイト系ビジネスにおいて、作業代行をするだけでは、利幅を大きくすることがしにくくなってきたので、打開策のメモとして書いておきます。

プロダクツを生み出す

小さなクリエイティブ系の会社は、基本的に大きなプロダクトの一部を外注先として「代行」発注されることが多く、これが経営基盤となっているケースが多いと思います。

以前にも書きましたが、現在の企業経営トレンドは「DX化によるリードタイム短縮」です。AIもこの流れに含まれます。
現状で実感がわかないのは、多くの経営者がDX化の意味を理解しておらず、現場に任せている段階だからです。管理会計においても、現場がDXについて学習中であることが影響しています。
現場の学習が終わり、システム導入が始まると「内製化」が進みます。コスト削減とリードタイム短縮の観点から見ても、これは間違いありません。

さらに時代は小規模な経済圏を構築することができるようになりました。
身近な例ではYouTuberやVTuberコミュニティです。
少しマニアックな例では、ニコニコライブコミュニティもそうですし、このnoteでもコミュニティは存在します。

つまりプロダクトからの代行外注を待つだけではなく、小さなコミュニティをつくる経営モデルを生み出す時代に入ったのです。

アイドルと推しと偶像と宗教

プロダクトを考える時、マーケティングリサーチから入ることが多いのですが、小さなコミュニティを作り上げるときに、従来型のマーケティングリサーチやデータドリブンの手法は役に立ちません。
ある程度の規模以上の人数が必要で、大規模なデータセットがなければ、統計的に有意な結果を得ることが難しいためです。

そこでモデルになるのが「新興宗教」と「伝統的宗教」の団体です。
新興宗教は明治以降に興った宗教団体が多いのですが、その中でもとりわけ昭和中期(戦後)に興った団体がサンプルとして使いやすいです。
伝統的宗教は、有名な伏見稲荷大社をサンプルにすると良さそうです。
細かなことは下記記事に書いてありますので、参考にどうぞ。

アイドルと偶像の共有点

多くの人々から崇拝され、特別な存在として扱われます。アイドルはファンから、偶像は信者や崇拝者から。そしてどちらも特定の価値観や理想を象徴する存在として、片方は推され、片方は崇拝されます。
また、どちらも視覚的な魅力が重要で、外見やパフォーマンス、形やデザインで引きつけます。それらを中心に人々が集まり、コミュニティが形成されます。そしてどちらも、感情的なつながりが強いことが特徴です。
また大衆からニッチコミュニティへの流れは、AKB48のプロダクトから流れができてきました。

アイドルのニッチコミュニティ展開は、ネット配信サービスやSNSと組み合わされ、最適化され、洗練されてきています。その結果YouTuberというポジションが確立しました。
AKB48時代から変化したことは、コミュニティが求める安心感と居場所感でしょう。
この流れは、伝統的宗教と新興宗教との違いと相似しています。
すなわち、違いを把握することで、どの程度持続可能か、どのくらいの規模でどのくらいの活動ができるかといった具体的なイメージを思い浮かべることができ、コミュニティ運営のヒントを得ることができます。

理想的なコミュニティ規模

宗教教団の最小教団員規模は50〜60人と言われています。
日本の学校制度では2〜3クラス程度の人数にあたるので、イメージしやすいでしょう。
ただしこの人数では持続性に欠けます。学校と違って、年齢に幅ができたり男女比にばらつきができたりするためです。
そのため、拡大していかなければなりませんが、実はこの初期人数はとても重要です。
これだけの人数ですが、全員に共通の向かうべき方向を指し示さなければなりません。上記した「感情的なつながりが強いことが特徴」を活かすためにも、このことは最重要項目です。

即効性現代利益の新興宗教と伝統的宗教の堅牢性

コミュニティを設計するにあたり、「何のために立ち上げるのか?」の部分が弱いと共感が呼べません。
そこで、モデルとなる団体の強味と弱味を把握することで、この設計に役立たせることができます。

新興宗教は、現代社会の不安や悩みに対して具体的な解決策を提示。一方で教義の安定性に欠け、物質的な豊かさの追求に傾倒する傾向があります。

伝統的宗教は、長い歴史と伝統を持つことで安定した信仰の基盤を築き、地域社会との結びつきが深い点が特徴です。反面、現代社会の多様化に対応するために、教義や組織の改革が必要となる場合があります。特に、若年層の離脱が課題となっています。

ここからまとめると、悩みや不安の解決と、地域社会との結びつきを強くしたコミュニティは即効性と長期堅牢性を持ち合わせることが見えてきます。

ここで気をつけるのが「地域社会」の定義です。
「リアルな場所」という意味もありますが、現代では「バーチャルな場所」も地域と捉えられる一面を持っています。その一つがニコニコ動画やYouTubeです。
両者ともコミュニケーションが可能なうえ、SNSと紐づいていることもあって、独自に地域文化を形成している場合があります。
つまり地域社会の定義には「ネット上の社会」も考慮する必要があります。

現代社会の不安や悩みの例

  • 経済的不安

    • 所得や収入の不安定さ、資産や貯蓄の不足。

    • 仕事の将来性や雇用の安定性に対する不安。

  • 健康問題

    • 自分や家族の健康に対する不安。

    • 老後の生活設計や介護に関する悩み。

  • 人間関係

    • 職場や家庭での人間関係のトラブル。

    • SNSやインターネット上でのコミュニケーションのストレス。

  • 社会的孤立

    • 若者の社会的孤立や友人関係の悩み。

  • 教育とキャリア

    • 学業や進路に対する不安。

    • 就職活動やキャリア形成に関する悩み。

これらの不安をうまく使ったYouTuberコミュニティがいくつか思い浮かびませんか?

ビッグキーワードではなく、スモールキーワードによるコミュニティ

上記キーワードは非常に大きなものなので、すでに先人によって埋められています。今から参入するのは難しいです。Googleの検索と同じですね。
そこでスモールキーワードのコミュニティを狙うことが堅実です。
これもロングテール理論と一致している部分があります。

スモールキーワードコミュニティの例では、ミニ四駆コミュニティ(ルール無用JCJCタイムアタック)やレトロゲームコミュニティ(レトロゲーム実況)、DIYコミュニティ(やってみた系)、廃道・酷道・険道の旅ログコミュニティなどがニッチな感じです。
これらのコミュニティはエンターテイメントと言うよりも、もともとニッチなので、仲間を見つけたい欲求(不安)から生まれたと考えても良いかと思います。

拡大したコミュニティの適正規模

スモールキーワードコミュニティですが、ハンドリングが可能な人数はおよそ1,000人/アクティブです。これは某新興宗教法人が数十年間活動してきた中での人数です。
ここからさらに非アクティブ、つまりパッシブと言っても良い人数が必要で、新興宗教では家族や親戚といった人たちが対象です。その人数はおよそ2,000人。つまり、アクティブ・パッシブ合わせて3,000人のコミュニティが作れればまずは安定することは間違いないでしょう。

人が増えるためにはツールが必要で、それが今までは「紙」のメディアだったのが、現代は電子に変わったというわけです。

この数字に近いと思われるプロダクト

安田現象さんというアニメ作家がこの規模のコミュニティを作った中では既知の範囲で近い事例です。
支援者数がまさに近い人数で、支援できなくとも、作品ができたら見に行くパッシブなメンバーがいることを考えると当時良いコミュニティができていたのではないでしょうか?
現在はそんな小さなコミュニティは突破している感じですが、成功事例としてこのくらいの人数でコミュニティを大きく動かすとどうなるのかイメージしやすいと思います。
反面、このくらいのクオリティや、宗教教団の信仰に当たるコンセプトを強く保つ必要があることもわかります。

価値は消費される

コミュニティを立ち上げる際に最初に直面する壁の一つが、提供するコンテンツの不足です。これは「ネタの枯渇」とも言えます。最初にコンセプトを固め、展開も計画したのに、次第に飽きられてしまう…(再生数が減少する)という話はよくあります。

なぜこうなるのかというと、価値の消費が早かったからです。いわば「価値の燃費」が悪かったのです。

コンセプトを練ったつもりでも、実際には十分に練りきれていなかった結果です。そもそも「コンセプトとは何か?」という問いに立ち返る必要があります。コンセプトとは、宗教教団で言うところの「崇拝対象」のようなものです。コンセプトが甘いというレベルではなく、崇拝対象は「探す」しかありません。

過去親鸞や弘法大師空海など、現在では大聖人ですが、当時信仰対象を探していた歴史があります。
その結果、親鸞は専修念仏の教えに出会い、浄土真宗ができました。弘法大師空海は密教の奥義を学び、大日如来を中心にした密教に出会い、真言密教をたちあげ、高野山に一大拠点を作り上げています。

昭和に興った新興宗教も、開祖となる人は少なからず何らかの崇拝対象を探しています。
つまりコンセプトを練るとは、信仰対象を探すことであり、その対象の謎が深ければ深いほど価値の燃費は上がります。

良い例としてはエヴァンゲリオンでしょう。1995年公開以来、2025年で実に30年間続きました。

それでも価値は消費されていきましたので、新たな価値を投入しなければなりません。(だから終わらせたのではないか?)
新たな価値を投入し続けているのは、ガンダムやプリキュア。ドラえもんもその一つですね。

小さなコミュニティを存続させる努力

この「価値は消費される」ことを念頭に置いて、消費されつくされないように価値を塗る変え続ける=新しい興味の対象を提供し続けることが重要。
新興宗教では教義のアップデートをしていますし、伝統的宗教では御札や祭儀名目、授与品、御朱印などで対応しています。

これと同じことをコミュニティに対して行う必要があります。
それらをうまく運営することで、適正規模のコミュニティは持続することが可能になります。

まとめ

コミュニティを築いて新しいビジネスを作り上げるヒントとして記事を書いてきました。

従来のビジネスモデルの限界

  • クリエイティブ系の会社は受託業務に頼りがちですが、発注元がAIやDXを導入し、ワークフローに変化が生じた場合、経営トレンドからも内製化が進むため、将来的に受託業務が減る可能性があります。

コミュニティ形成の重要性

  • ポスト主軸事業を考えるに当たり、コミュニティを形成し、安定した収益源を確保する事業を考えると良さそうです。

  • 宗教団体を参考に、コミュニティ運営のヒントを得ることができます。

成功するためのポイント

  • スモールキーワード
    大きなキーワードではなく、ニッチなキーワードでコミュニティを形成することが大切です。

  • コンテンツの継続的な提供
    常に新しい価値を提供し続ける必要があります。

  • 最適なコミュニティ規模
    アクティブなメンバー1000人、パッシブなメンバー2000人程度の合計3000人規模が理想です。

  • 価値の継続的な提供
    コミュニティのテーマとなる「崇拝対象」を深く掘り下げ、常に新たな価値を提供し続ける必要があります。

色々情報入れすぎましたが、まとめるとこんな感じです。


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