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知れば知るほど、知らないことが増えていく
下川町には、一の橋という地区がある。
商店や住宅地が集まっている市街地から、オホーツク海の方へ車で走ること15分くらい。
2019年の年末、一の橋に60年以上暮らしているご夫婦に、取材をした。
おふたりとも下川町外の出身で、仕事のために移住してきて、下川で出会い、結婚し、今も一の橋に住み続けている。
住み始めた当初や、出会った頃の写真は、引っ越す時にほとんど破棄してしまったそうで、残念ながら見ることはできなかった。
けれど、40年前、30年前頃からの写真は、今でもアルバムにたくさん残っていて、思い出話とともに見せてくださった。
取材をしにうかがったら、2時間くらい話をしてくださり、お昼ごはんまでご馳走になった。
一の橋のご夫婦の取材はもちろん、本を読んだり、調べものをしたり。
いまは「自治ってなんだ?!」という問いの大風呂敷に、さまざまな方のエピソード、写真、話し手の方々の取材中の表情の機微、話し手の方々の生い立ち……そういった情報を集めている状況だ。
同時に、それらが手元にたくさんあり、「自治ってなんだ?!」という問いを中心に、ぐるぐる、洗濯機のように回転している。
ぐるぐる。
取材が仕事の一部になっている方ならきっと共感していただけるだろうが、知れば知るほど、知らないことが増えていく。
一の橋のご夫婦はもちろん、一の橋で働いている方や、町役場の方など、他の方々から頂戴した情報もあるから、さてこれからどのように整理し、“編集”して伝えるべきか──。
まだなかなか、筋道が見えない。
しかも「自治ってなんだ?!」という特集における読者層のターゲットは、実は、下川町の人々だ。
だからこそ、うつくしくまとめるだけでは、嘘がある気がして。
洗濯機のぐるぐるは、強制的にストップができるけれど、わたしのこの頭の中のぐるぐるは、いつ静まるのか見えない。
自分で立てた問いの大風呂敷の中で、さっそく迷走しているのでした。とほほ。