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【#Real Voice】 「数字の呪い」 2年・中谷颯辰

あの⽇、「⼼が腐っている」、「⾼校選択間違えたな」と両親に⾔われた。


⼩さい頃は何かで1 位をとったり、50 メートル⾛のタイムが早かったり、テストでいい点を取ったり。
そうすれば親が褒めてくれた。それが嬉しかった。ただそれだけだった。
しかし、歳を重ねるにつれて無意識に数字に縛られていた。

特に⾼校⽣の頃はそうだった。

実家のある⼤阪からスポーツ推薦で静岡の⾼校に進んだ。
進学校だったこともあり、教師たちから勉強に関して、うるさく⾔われていた。初めのうちは気にしていないつもりだったが、気づけば毎⽇練習から帰って、すぐ勉強机に座る⾃分がいた。
まあそのおかげもあって、テストや模試では学年上位5位ぐらいには⼊っていた。


もちろん、サッカーにおいても常に数字を気にした。
毎⽇何本パスミスしたか、何回ボールを奪ったか、何点取られたか、など。常に⾃分のことを考えてプレーした。
その結果、最終的には最後の⼤会で⽇本⼀になることができた。


そして私は3年間の⾼校⽣活を終え、⼤阪の実家に帰省した。
両親とはたまに顔を合わせてはいたものの、ゆっくり話すことは久しぶりだった。
初めはもちろん楽しい話や冗談混じりの話で盛り上がった。
そして帰省してしばらく経つと、私の⾏動や⾔動に対して、家族で⼝論になった。


そして、「⼼が腐っている」「⾼校選択間違えたな」と⾔われた。


呆然としていた。

その時気がついた。
私は数字を鎧のように⾃分を守る道具として使っていたのだと。
数字が⾃分を表現する⼿段だと捉え、誰にでもわかる数字というものが⾃分の価値を⼤きくしてくれるのだといつのまにか思い込んでいた。

両親から⾔われた⾔葉は、私が⾼校3年間で築き上げた "鎧" を簡単に壊し、私⾃⾝に突き刺さった。

鎧が無くなった私はとても弱かった。
丸裸になった私にはいいところがなかった。

学校では休み時間も勉強をし、放課後はすぐにサッカーに励み、それが終われば寮に戻ってイヤホンをつけて、勉強を始める。
サッカー以外で⼈との関わりをほとんどしていなかった。
そうすると、⼈との関わり⽅が下⼿になっていた。

サッカーでは、個⼈の数字を意識しすぎたために、周りの選⼿への気遣い、声かけ、繋がりを⽣み出すことができなかった。
誰かのために頑張ることができなくなっていた。

ア式にきて思う。
数字では測れないものもたくさんあると。


もちろんこれからも数字は求め続ける。
これはアスリートとしてやり続けなければならないと思う。
私が⽬指す将来のためにも必要なものだ。

[愛されるプロサッカー選⼿になりたい]

そのためにも数字では測れないものをこれからもっともっと⾃分の中に持っていたい。
たとえ数字という鎧がなくても堂々と胸を張って、⽣きていけるように。



中谷颯辰(なかたにそうしん)
学年:2年
学部:基幹理工学部
前所属チーム:静岡学園高校


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