「ありのまま行こう」 3年・宮脇有夢
私には、5歳年上の兄がいる。
兄はおしゃべりで、変に周りの目を気にしないクレイジーさと優しさを兼ね備えている。
そんな兄も3月に医学部を卒業し、4月から僕らが生まれた地元の病院の研修医になる。面倒くさがりで不器用な彼が、手術でもやったら大変だ。患者さんが危ない。笑
まあ、それは良いとして、
小さい頃から、兄に憧れていた。というより、兄の性格が羨ましかった。
兄は、いつもありのままの自分で、私の一足先を楽しそうに生きてきた。私にはそういうふうに見えた。
兄は、サッカーを始めたのが遅かったのもあって、中学、高校時代は、あまり試合には出ていなかったが、諦めることなく、とにかく本気で打ち込んでいた。こういう人がいたらチームは強くなるなと、何度も思った。
また大学に行ってもサッカーを続け、山形県代表として天皇杯に2度も出場した。
試合を観に行った時、決してレベルは高くないかもしれないけど兄がプレーしている姿は、すごく輝いていた。
私もそうなりたいと思って、楽しそうな兄の人生を追いかけて生きてきた。
だけど、私はというと、
小さい頃から、周りの目を気にして、周りの人に対して見えない壁を作る。
ただの壁じゃない、鉄壁のシールド。隙間すらない。
いつも、なんとなくニコニコ笑って、何をするにも、何を言うにも、周りにどう思われるかが気になってしまう。
感情はあるの? プライドはあるの? とか友達に言われたことも多々ある。
そんな性格だ。
いや、違う。性格自体は、そうじゃない。
本当の私は、
確かに、人見知りで、マイペース。
でも、もちろん感情はあるし、プライドだってある。本当はクレイジーな面もある。
ただそれをありのままに見せることが小さい頃から何故かできなかった。
ありのままの自分でいることは、他の人にとっては簡単かもしれないけど、私にとってはとても難しかった。
こんな自分が嫌で、何度も自分と戦ってきた。
自分を全く表現できなかった中学時代。
チームの中心として本気で全国を目指せた高校時代。
そして大学、ア式蹴球部に入って3年。
FCの試合で決勝点を決めて勝つことができた時。関東リーグに出場し、初ゴールを決めることができた時。そんな時は、嬉しかったし、もちろん楽しかった。
もしかしたら、少しはありのままの自分に近づけたから出せた結果なのかもしれない。
鉄壁のシールドを少し崩せた時もあったと思う。
でもまだ、そんな自分に打ち勝っていない。
ありのままの自分をさらけ出し、楽しんでいたかと言われたら、そうではない。
何度も本当はいないはずの敵に負けて、自分の気持ちを押さえ込んでしまったことがある。
だから、このままでは終わりたくない。
もちろん性格は変えなくていい、兄のようにならなくてもいい。
自分は、自分でいい。でも今の自分はまだ自分じゃない。
本当の自分はこんなもんじゃない。
サッカーでありのままの自分を表現したい。
そして、大学サッカーラストシーズンを一番楽しみたい。
自分が楽しまなければ、同期や後輩を楽しませることはできない。早稲田の4年生は毎年かっこいい。私もそんな4年生になる。
最後に笑って、歓喜を味わいたいし、その中心にいたい。
だからやってやる。俺はなんだってできる。
◇宮脇有夢(みやわきあるむ)◇
学年:3年
学部:文化構想学部
前所属チーム:早稲田実業学校高等部