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【早稲田カップ2025 epilogue】 「だからみんなと生きていく」 R7卒・北村公平

”早稲田大学ア式蹴球部の北村公平”としては最後の発信になります。
こんなにも有難い経験をさせていただけたことに改めて感謝しております。


震災についての報道はあらゆる媒体で、あらゆる場面で、幾度となく目にしてきた。


それでも、


1年前、初めて訪れた陸前高田の景色を前に、言葉を失ったことを今でも覚えている。


ほぼ全ての建物が高台に移され、見渡す限り何もない広野。
想像を絶する高さまで到達した津波の痕跡。
力強く聳え立つ復興のシンボル。

そのどれもが言葉はいらないほどに当時のことの大きさ、凄惨さを物語っていた。


胸が締め付けられるような感覚、時が止まったかのように静まり返るあの空気。
ただ映像で見ていては感じることができない感情であることだけはわかった。



それは2度目の訪問となった今年も同じでした。
きっと何度見ても慣れることのない景色。
そして、絶対に風化させてはいけない景色。

ことあるごとにみう(新4年・伊藤未羽)が言っていた
”私たちが震災当時の記憶がある最後の世代”
という言葉。

この言葉通り、伝えていく責任が私たちにはあります。
でも実際に体験した人でないとそれを言葉にすることは難しい。
だからこそ、実際に現地に行って、見て、聞いて、感じるしかない。

改めて早稲田カップという場を創って下さったOBOGの方々、気仙沼・陸前高田の皆様に感謝申し上げます。
この場がこれからもずっと続いていくことを願っています。

素直に答えると、震災当時小学2年生だった私には起きている事象に対して理解が追いついていませんでした。
どのテレビ局をつけても速報のテロップで画面が一回り小さくなっていて、
太平洋沿岸に赤い線が灯る日本地図があって、
茶色い波が街中を飲み込んでいく映像が流れているだけ。
今になって考えるとそれは、自分事として捉えられていなかっただけなのだろうと気がつくことができました。


温かい陸前高田の方々と接し、子どもたちの無邪気でまっすぐな笑顔を見てようやく自分事として理解できた気がした。


全ての日程が終了し、子どもたちに「またね!」というとき、本当に寂しかった。
もしかしたらもう会えないかもしれない。
子どもたちの成長をまだまだ見ていたい。
そんな気持ちでした。


その寂しさの正体は何か。震災に対する理解とは何か。継承とは何か。


それは、体格的に劣っていても果敢に立ち向かい次々に相手をかわしていく姿を見たことか。
ユニフォームがワンピースになっちゃうような子が振りかぶった相手の足元にスライディングでブロックに行く姿を見たことか。
誰かの後ろに隠れちゃうような子がサッカー教室で懸命にリフティングのコツを掴もうと教えを乞う姿を見たことか。
チームのために体を投げ出しどんなに苦しい状況でも諦めず立ち上がる姿を見たことか。
口数は少ないけど小学生ながらメイクもネイルもできちゃうような子が試合に負けてただ1人大号泣する姿を見たことか。
その子の両脇を静かに支えてあげる女の子2人の姿を見たことか。



きっとどれもが正解。



子どもたちが日々何を見て、何を考えて生活しているのかはわからないけど、
サッカーボール一つでみんなが繋がって同じ夢を描けること。
こんなにも尊いことなのかとサッカー人生の最後の最後にして思い知らされました。




そう、
一人一人が尊く儚い、一つの人生を生きているから。
その人生には必ず終わりが来てしまうものだから。
その人生の終わりはいつ訪れてしまうかわからないものだから。



だから皆、今を懸命に生きているのだと思います。



今を生きること。



簡単のように思えてとても難しいこと。

その大切さを子どもたちに改めて教えてもらいました。
笑顔が眩しく、輝いていた。みんなが繋がっていた。


うまく言葉にすることはできないけれど、この笑顔を守っていくこと、新たに創っていくこと、横にいる仲間との繋がりを感じること。
これらは震災を理解し、それを継承していく第一歩でありながら最も重要なことであるように思います。

こうしてみんなに出会うことができたのは偶然であり必然。
どの出会いにも必ず意味があり、自分の糧となってくれるものだと思います。


みんな同じ空の下。生きてさえいればまたどこかでみんなに会えるかもしれない。

みんなが成長した姿をまた見れるように、
その時に北村公平もかっこいい大人でいれるように、


懸命に今を生き、日々成長し続けます。






「だからみんなと生きていく」







陸前高田サッカー協会の方々をはじめ、運営に携わっていただきました方々に改めまして御礼申し上げます。
松田さん、松本さん、是非またご一緒させてください。

そして、2年間お世話になった鬼柳SSSの選手、保護者の皆様、本当にありがとうございました。炊き出しやお土産など毎年本当に温かく受け入れていただき、人間として何が大切であるのか教えていただきました。みなさんとの繋がりを胸に今後も頑張ります。

選手のみんな、2日間ありがとう!みんなまっすぐで素直でそんなみんなからたくさんパワーをもらいました。
ごうたが青年になって、さくらがお姉さんになって、やまとがあらゆるものを食べなくなって、なぎがカレーうどんをこぼさなくなって、しゅうきのユニフォームがちょうどいいサイズになって、りこに彼氏ができた頃くらいにまたみんなに会いたいです!
眩しいみんなの輝きに負けないくらいのかっこいい北村公平で待っています!
必ずまた会おう!





最後に今までたくさんの経験をくれたア式、本当にありがとうございました!



終。

さくら、さみー、ぽかぽか(東北大学 陸前高田応援サークル ぽかぽか)のみなさん、ありがとうございました!また来年もぜひ!

◇北村公平(きたむらこうへい)◇
学年:R7卒
学部:文化構想学部
前所属チーム:桐光学園高等学校

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