【#Real Voice 2022】 「失くした感情」 3年・福井寿俊
「将来は絶対プロサッカー選手になる。」
高校2年生の冬に決めた。
4歳からサッカーを始め、今年で18年目。
野球をしたら、左打ち右投げで将来有望なのではないかとキャッチャーだった父は喜び、
本気でイチローを目指そうとしていた3歳とはうって変わり、
右足でボールを蹴り始めた。
友達から勧められたサッカーであり、
サッカーは友達を作るための1つのツールでもあった。
ただただボールを蹴るのが楽しくて、ボールを追いかけるのが楽しくて
毎日のようにボールを蹴っていた。
それが決して飽きることはなかった。
プロの世界なんてものは果てしなく遠い別世界のもので、
1mmも真剣には考えていなかった。
ただこんなにも楽しいサッカーを一生続けていたいなと。
その感情は変わることなく高校まできていた。
高校に入って、周りに恵まれ、更にサッカーは楽しくなった。
そういう高校を選んだつもりであったし、我ながら本当にいい選択をしたと思う。
そして、高校2年から3年にかけて徐々に進路を考えていくうちに、
プロサッカー選手になりたいと本気で思うようになった。
自分はこのために今までサッカーをしてきたんだと思った。
難しいことはもちろん分かっていたが、それは明確な目標になった。
そして、当然のように分かってはいたが、特別秀でた実力もなかったため、
高卒でのプロは無理と決まり、大学への進学を決意した。
絶対にプロになる。
ただその一心で
大学サッカーへの強い期待と希望を持ち、
いや、持ちすぎたのか、
進学して、サッカー以前のランテストに敗北。
2年生からという少し変わった入部にはなったが、
プロへの目標がぶれることはなかった。
その思いがあったからこそ、1年間耐えることが出来た。
要は、挑戦したい思いでいっぱいだったのだ。
しかし、そんなにうまくいくわけもなくBチームで1年間過ごす。
そこで試合には出られていた。
そして、3年生の昨年。
大学に入って1番楽しかったであろうIリーグ(インディペンデンスリーグ)を経験し、
その後、夏からトップチームに関わり、2試合だけだが試合に出た。
しかし、ここで大きな障壁にぶつかる。
サッカーがつまらなくなった。
これは今までサッカーを続けてきて、初めての感情だった。
さらに試合に出ることができない自分がいるおかげで、
プロという目標はどんどん薄くなっていき、
目標と同時にサッカーが大好きという感情さえぶれていった。
そこからというもの、どんどんプレーは悪くなり最悪の循環にハマった。
そして、
同ポジションにプロが3人いるから試合には出られないと諦めるようになった。
紅白戦でAからAサブに落とされても、何も感じなくなった。
監督には好かれてないから試合に出れないと勝手に決めつけた。
試合なんて負けてしまえと思うようになった。
気が付けば、もの凄くダサい人間になっていた。
冷静に考えてみると、
いや、冷静に考えなくても
自分の実力のなさを他へのベクトルに変換して言い訳していたことくらい分かる。
人は物事でうまくいかないと本質から目を遠ざけ周りや他に言い訳を探す。
それが1番楽な方法で自分への納得感を得られるから。
そういう生き物であると今まで21年間生きてきた私は感じている。
しかし、そこでいかに自分に、本質にベクトルを向けられるかで、
人としての強さが垣間見えると思う。
つまり、目標や夢を諦める理由は複数存在するが、
探すのは簡単で、自分を守ろうとたくさん出てくるということ。
それに対して続けられる理由は、絶対に成し遂げたいと思うその1つ。
誰が見ても明らかに簡単なのは、理由が1つである続けることなのに
自分を擁護したい自分と、その1つの思いが葛藤しあう。
みんなその1つの思いだけを追い求めて必死に頑張っているのに。
私は大きな目標、最終的なところを見すぎた、そこしか目を向けなかった結果、
目の前の小さな目標や感情を見失った。
だから、上手くいかなかった時に、脆く弱くなる。
何のためにサッカーしているのか。
試合に出たい。
活躍したい。
勝ちたい。
負けたくない。
楽しみたい。
やはり、この感情失くしては本気で取り組めないなと思った。
そうやって1つ1つ積み重ねて頑張った先に
何か大きなものが待っている可能性がある。
例え、待っていなくてもきっとその過程は無駄ではないはず。
ただ、この順番を逆にすることは出来ないということ。
だから私は、サッカーというスポーツの魅力にもっと夢中になって
がむしゃらにひたむきに取り組んでいきたい。
それが今の自分に出来ることだと思う。
今年はもちろん、厳しい戦いになるだろう。
昨年2部に降格し、1年での1部復帰が絶対条件だと言われているが、
そんな簡単な事ではない。
だが、それはチーム的にも役職的にも、当然個人的にも
必ず成し遂げたいことの1つである。
ただその厳しさの中に楽しさを持てるように、
1年後、
いやもう1年もない。
笑顔で大学サッカーを終えられたらいいなと思う。
そして、皆で笑って今シーズンを終えられたらいいなと思う。