【#Real Voice 2023】 「Everything」 2年・谷川宗士
2023年、夏。
20歳の僕は生まれて初めて海外へ行きました。行き先はフランス・スペイン。
目的は、異文化と世界トップレベルのサッカーの体験。
貴重な2ヶ月の体験と今後の決意を綴ります。
海外で1番強く思ったことは、日本の偉大さ。
渡航前には感じたことの無い、母国への感謝や誇り、愛情を胸に抱いた。
日本食、漫画、治安。
そして、サッカーにおいても同じように思った。
日本のサッカー選手は間違いなく愚直で上手い。
日本の国民性が表れている。
他人のミスをカバーしたり、最後まで諦めないなどの愚直な姿勢は日本では至極当たり前で、出来ない者が非難される。
しかし、欧州では真逆。「愚直さが要らない」ではなく、「愚直に出来ない」と言う方が近い。
誤解を生まないように言うと、性格が悪いのではない。
留学中に緊張している自分が伸び伸びとプレー出来る様に食事や自宅に誘ってくれた。喜怒哀楽は日本人より非常にストレートで、初めて海外に来た自分に充実した日々をもたらしてくれた。
英語には「愚直」に当たる言葉は存在しない。つまり、文字通り「愚かな真っ直ぐさ」というのは、日本人特有の性質で、世界から見れば珍しいものである事が分かる。
そんな自分の愚直さは海外のチームから高い評価を受けた。
「谷川が愚直?」と疑う人も多いだろうが、海外ではそれくらい希少性が高い。
そして、上手いに関しても日本人らしさがサッカーに反映されている。
少し話は逸れるが、日本が誇る産業といえば技術力と考える人は多いのではないだろうか。戦国時代の鍛治から、現代の自動車産業、電化製品など細部までこだわり抜いた職人達の技術力はMade in Japanを国際的なブランドに押し上げた。
日本人は器用さと先に述べた愚直さを活かして、大胆さこそ無いが地味な事をやり遂げられる民族だ。
話を戻すと、サッカーにおいても日本人の基礎技術は高いレベルにある。
幸いにも自分は小中高の所属チームで「止める蹴る」の基礎技術を徹底的に叩き込んでくれた指導者や仲間に恵まれた。
まだまだ上達の余地はあるがヨーロッパでも充分評価されるレベルまで達している事が証明出来た。
その一方で、海外の選手のスピードや理不尽なロングボールのトラップ、スーパーゴールなど大胆でしなやかな身体能力の光るプレーは彼らの足元にも及ばなかった。
そんな2ヶ月の中で思ったのは、
俺、今まで何やってたんだろ。
3歳からサッカーを続けてきて、海外でも基礎技術は通用する。プレースタイルもフィットできる。身体能力の差はあるにしても、何故か釈然としない気持ちになった。
その原因は、
自分はあまりにもサッカーを理解していなかったから。
サッカーへの根本的な感覚が世界とズレていた。
いや、薄々気づいていたけど、それを解決する努力をしていなかった。
サッカーを舐めていた。
欧州のサッカーには確実に戦争の名残りがある。
ボールに命をのせて、90分の戦争に挑む。
戦争、あるいは将棋のように戦略的なサッカーの存在を教えてくれる指導者もいた。
しかし、それを体現できるのは海外のプロくらいだろうと思っていたが違った。
同世代や小学生ですら同じプレーをしていて衝撃を受けた。自分がやってきたサッカーとは別物。
中学時代にお世話になった林田監督がよくサッカーとフットボールは違うものと表現していたが、この言葉が目の前で証明された。
自分が今までやって来たのがサッカーで、欧州サッカーがフットボールだった。
同じルールで世界共通の競技でも、その背景や狙いの深みは全く異なっていた。
さらに欧州ではサッカーを学問として捉えている面もある。
UEFA proライセンスという欧州最高資格の指導者ライセンスの取得には論文提出が必須で、その論文の内容はまさに兵法書。
育成年代でも文武両道など当たり前で、チームのスタッフは選手の学校の成績を把握している。
一方で、日本ではサッカーと学問が結びついているとは思えない。チームスタッフが選手の学校の成績を把握しているチームは、日本では所属したサンターリオFCと静岡学園以外に聞いたことは無い。
勝った負けた、誰が上手い、誰が速いなどの目先の次元でしか捉えられていない日本と科学的視点でフットボールを学問として研究している海外。
その差を目の当たりにして、今までのサッカーへの関わり方に大きな過ちを犯していた事に気づいた。
果たして、日本にサッカーを学問の視点として捉えることが出来る人は何人いるんだろう。
そもそも、いつまでサッカーだけしていれば良い風潮は続くんだろ。
なんで自分は何も変えようとしなかったんだろう。
こんな事を考えているうちに、
自分がこれから挑みたい目標ができた。
それは、未来のためにサッカーをする。
未来のサッカー少年少女達が、いつかこの日本でサッカーではなくフットボールをプレーできるように。
そのためには留学前とは全く違う視点で海外のサッカーを観る。観戦ではなく研究として。
情けない話だが、春学期はサッカーを観る時間をほとんど作れなかった。
しかし、秋学期は春学期の鬼畜時間割のおかげで年間上限単位数にすぐに到達。
というわけで、海外サッカーを学問として捉え、自ら落とし込めるようになりたい。
そして1番大事なことは、自分が結果を出すこと。
残念ながら日本では優勝しなければ誰も認めてくれない。
例えば、野球大国のアメリカを見れば、坊主などの強制的な指導に意味がない事は明らかだったが、慶應義塾高校の甲子園優勝でようやくクローズアップされた。
このように世界では証明されていたとしても、日本国内での結果が全て。この国で勝たなければならない。
ただ、有難い事に多くの人の支えで国内屈指の名門、早稲田大学に在籍し、ア式蹴球部にも所属している。
旧弊の打破には充分すぎるエネルギーと伝統がここにある。
この組織で結果を残し、この組織で新しいものに挑戦してこそ、存在価値がある。過去や現在のために闘うのではなく、未来のために全てを捧げる覚悟を持つ。
それで初めてア式の「日本をリードする存在になる」という素晴らしいVISIONを掲げられる。
そうだ。
未来のためが大事だ。
ア式蹴球部101期生として、111期生、その先の150期生のために何が必要か。2050年の日本サッカーやスポーツ界の為に、何が出来るのかを考え、行動できるようになりたい。
最後に
全面的にサポートしてくれた両親、家族。留学の背中を押してくれた林田監督。留学中、代理人として親代わりになってくれた直川さん。現地で右も左も分からない自分にアドバイスをくれた現地の日本人の皆さん。すぐに居なくなる自分を快く受け入れてくれ、英語力も磨いてくれた現地のチームメイト、スタッフの皆さん。日本が深夜にも関わらず、連絡をしてくれた友人達。
こんなにもたくさんの人に支えてもらい、寂しいどころか幸せでした。本当にありがとうございました。これからもよろしくお願いします。
そして何より、まともに活動すら参加出来ていなかったのにも関わらず、自分の勝手な留学を受け入れてくれた、ア式の皆さん。
自分史上最高密度の2ヶ月で学んだことを必ずア式に還元し海外に行かせてよかったと喜んでもらうために、そして未来のために、これからも全力でサッカーと向き合っていきます。
追記
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