『「仮面浪人説話集」(生方聖己とされる)』 第17章
⚫ 終わりの始まり
扉を開けた瞬間、一斉に皆の視線がこっちへ
自分:「(うわっ、教室でか。人おおっ!!)」
まあ着いただけでよかった。教室の規模まで要求するほどの贅沢はしてはいけない。
にしても、こいつら本当にセンター試験本番を迎える者なのか?
もう少し緊張して、15分前ギリギリ滑り込みで飛び込んできたレアな浪人すら目に入らないくらい視界がぼやけてる人が居てもいいじゃないのか?
まあよく考えなくても、間違いなく見る。自分なら間違いなく見る。
だってセンター試験本番、普段時間にルーズな奴ですら今日は時間に余裕を持って行動しようと試みる、センター 試験本番に15分前ギリギリに滑り込んで、しかもやけに堂々としてる奴に視線を向けないわけがないだろう。
へー、本当にこんなやつがいるんだ、って感じで見ていたのは間違い ない。
まあ、“5分前行動”がしきたりとされている日本において、15分前って十分早いのだけど、そもそも開始30分前に集合って早すぎると思うのだが、まあ色々な配布物があるので仕方ないが。
自分:「(思ったよりみんな見るな。まあこうい時こそ堂々と。)」
自分の席まで割と遠かった。試験官に案内されながら進む。
自分:「(こいつらまさか、この自分がもう既に大学生だとは思わないだろうな。かわいそうだな、ここにいるほとんどの人は、本番に遅刻しそうになる、一見“もう推薦で決まってるけど学校の指示で何故だかセンター試験を受けさせられてるけど実は1年間かけて準備してきた受験ガチ勢の”自分に負けるのか。こっち見るな。黙れ!自分のことに集中しろ!)」
そんなことを思いながら歩いていたら、自分の席についた。そして座る。
本来の、朝余裕を持って会場に着き、日本史開始前に一通り文化を確認して、絶妙な緊張感を得て、万全の状態で挑む。という予定は勿論崩れたが、なんか辿り着けた嬉しさが上手く根拠のない自信に転換されたので、割と万全な状態っちゃ万全の状態で挑める事になった。
それに加えもうあまりない緊張感が、さらにそぎ落とされる事件が生じた。
自分が到着したのとほぼ同時に受験票の顔写真の上に貼るシールが配られた。
センターを受けた人は知ってると思うが、ただシンプルに既に貼ってある顔写真の上に貼る、保護シールのことである。
シールが配られて、「(うわーこんなんあったな去年。懐かしいな。あれから 1 年か。あの時 はまさか自分がもう一度センターを受けるとは思っていなかっただろうな。あれから受験 勉強という点だけに関しては成長したな)」など、物思いに更けながら貼っていた所、自分の前の席の少年が後ろを向く。
ん?
受験会場本番で見知らぬ人がこっちを向くとは何事であろうかな?
前の席の少年:「これってどう貼るんですか?」
己:「(なんだそんなことか、ここは浪人性の底力見せな)えっとね、そのシールをね・・・ ん・・・!?えっ(笑)(こいつが持っているのは保護シールではねぇ!なぜこやつ証明写真を手に持っておる!?(笑) しかもめっちゃ何かから剥がした跡がある・・・、あの一回貼り付けたものを剥がした際につく跡・・・もしやこいつ・・・!)
そう、その子は保護シールを顔写真に貼るのではなく、顔写真を保護シールに貼ろうとしていたのだ!!!(笑)
修正が効く間に彼に事実を教え、急いで、まだ顔写真に粘着力があるうちに受験票に貼りなおさせ、保護シールをその上から貼らせた。
いくらなんでもこれは笑わずにはいられなかった(笑)
ありがとう前の席の少年。
そうこうしているうちに試験が始まった。
第18章へと続く…
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