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【#Real Voice 2024】 「憧れにはなれない」 新4年・伊藤未羽

憧れ
最上級生になり、その定義をよく考えるようになった。
そこに早稲田のマネージャーチームとして目指すべき姿の指針がある気がして。


その度に、3年半前、当時高校3年生だった私がいとも簡単に人生を変えられてしまった「憧れ」を思い出す。


「早稲田大学ア式蹴球部のマネージャーは、『憧れられる』べき存在である。」
これは傲りでも慢心でもなく、歴代の先輩方が積み上げてきた矜持だ。


最上級生になった今、私は、どう見えているだろうか。
誰かの憧れになりたいのだろうか。

毎年部員ブログの順番が回ってくるたびに、書いては消してを繰り返している。これが本当に私の「RealVoice」なのか、なんとなくしっくり来ないから。


今年は今まで以上に難しい。
この1年はあまりに濃かった。
ここにはとても書けない、どこにもぶつけられない感情や自分でも驚くくらいの失望感もたくさん経験した。


それらすべてを踏まえた今の「RealVoice」は、まあまあ長くなってしまいました。
「伝わる人に伝わればいいや」じゃなくて「伝われ」って思いを込めて書くので、読んでもらえたら嬉しいです。


「迷い」

去年の部員ブログで「グータッチ」について書いてから、「グータッチ」が私の代名詞みたいになった。


初対面の他大学の人からも「あ、グータッチの人ですよね?」なんて言われることもしばしば。
ア式内でも、「お前のグータッチはパンチ」って言われたり、対抗してとんでもない強さで返してくる後輩がいたり、パーで受け止められるようになったり。


でも、2024シーズン当初から夏ごろまで、私のグータッチは、少し弱くなった。
十分強いよって声が飛んでくる気がするけど、物理的な強さというより、こぶしに迷いが生まれてしまった感覚。
意志のないグータッチ、ルーティン化してしまったグータッチ、そんなの無意味なやけくそでしかなかった。


「迷い」の正体はわかっていた。


その詳細を書くと優に1万字を超えてしまうので、それはまた別の機会にして、とりあえず一言でまとめると、
”人生で最も光の見えない暗闇の中にいた。”
当たり障りのないように書くとこんな表現が適切だろうか。


この場を借りて過去を嘆くとか、そんなダサいことをするつもりは全くない。
これが、ラストシーズンへの決意と意思表明になればいい。

運営30試合、チーム帯同11試合、応援13試合

2024シーズンの公式戦を振り返るとこんな感じ。
改めて数えてみるとチーム帯同が思っていた以上に少なくて、自分で驚いている。


2024年は、運営担当の仕事が、その仕事によって生まれる環境が、私を成長させてくれた。


「まあ、私がやるのが色々丸いよね」と引き受けた運営担当の仕事。
この2年間で、徐々に試合中の主戦場が両チームのベンチの間にある本部になっていった。
中立の立場でたくさんの試合を経験してきたからこそ誰よりも理解している。


「チームに帯同してベンチに入ることだけがマネージャーのすべてではない。」


気づけば、「どこでもがんばるので、必要なところに置いてください。」が口癖になった。


チーム付きでは、選手に負けない熱量で、
運営では、「私の質が早稲田の質」と肝に銘じて、
応援では、試合を通して声を出し続けて。
自分が今全力を尽くすべき場所で、全部捧げてきた。


これだけでまとめられてしまえば聞こえがいいが、正直それなりにきつかった。


仕事量が、とか、マルチタスクが、とかではなく、気持ちをどこにどうやって持っていけばいいのかわからない瞬間がすごく多かった。


2024シーズン最後のチーム付きは9/21のFC。あくまでも最優先は運営担当の仕事。
マネージャーの中で誰よりも早く、2か月近く残して、ひとつの意味でのシーズンが終わった。そしてこれが未だに直近のチーム付き。
上級生のなかで自分だけメインカテゴリーがなく、ベンチに入るときには今までよりも遠慮して一歩後ろに下がるようになった。


運営担当の仕事を通して、不満や文句をぶつけられることはたくさんあっても、建設的なフィードバックをもらったことはほとんどなかった。
言いたくなくても言わなきゃいけないことも、なんでこんなこと言われなきゃいけないんだって思うことも、たくさんあった。


「あれ、私ってなんのためにア式にいるんだっけ」ってよくない方向に何回か本気で思考が持っていかれそうになった。


でも、その度に一回落ち着いて思い出していたことがある。


1年目のリーグの一節、早稲田が20名ほどの部員で運営や補助学を担当した試合の締めで、OBの方に言われたこと。
「『大きい会場でも、忙しい運営でも、担当が早稲田なら大丈夫。』以前の早稲田はこう言われていた。今のメンバーにもこれを目指してほしい。」


「あ、多分これが『WASEDA the 1st.』だ。かっこいいな。」
未熟ながらにそう思ったのを今でもはっきり覚えている。


まだ自分が運営担当になるなんて夢にも思っていなかったこの時の記憶が、昨シーズンの私を支えてくれた。


きつさ、辛さ、苦しさ、そのどれもが「妥協」していい理由にはなりえない。
「迷い」はただの弱さだ。自分で越えるしかない。
早稲田で、ア式で、何かをするってそういうことだ。
むしろ苦しいくらいの方が成長できる、強くなれる。
「悲観は気分、楽観は意志」だと思えたら、成長のきっかけはいくらでも転がっている。
与えられた場所で、「WASEDA the 1st.」を体現する。


きっと2024シーズンは、こうやって思えるようになるための1年だった。


照らす

試合中の本部を、特等席だと思うようになった。
そう思うことが、自分のモチベーションになるはずだと。
実際に、本部からしか見えない景色がたくさんあった。


峻(新4年・谷村峻)が、誰よりも丁寧に試合後の挨拶をしていること。
下を向きたくなるような悔しい試合でも、納得のいかない結果の試合でも、本部にも相手ベンチにも。


「勝ったときにちゃんとやれるのは当たり前、負けた時にその人の、そのチームの本質が出る。」
峻の振る舞いを通して気づかされてから、改めて自分を見直すようになった。
まだまだ甘いな、と。


たとえチームの一員として戦っているわけではないとしても、私も「早稲田」の一員として映る。
だから、記録の確認、メディア対応、相手へのお礼、ベンチの片付け、最後まで隙なく、抜かりなく。
負けた時、悔しい時にこそ、最後の仕事まで自分の思う数倍丁寧に。


峻がくれたこの気づきをきっかけに、もっとみんなのことを知りたいと思うようになった。
みんなの価値観から学べること、みんなをもっと知ることで気づけることがたくさんあるはずだと。


秋から、後輩たちに時間をもらって、1on1をはじめた。(この1on1実施の背景には他にもきっかけがありますが、長くなるのでまた今度。)


健伸(新3年・武沢健伸)や凜誓(新3年・西凜誓)と話してから、目の前に落ちているゴミを見逃さないようになった。
尾崎(新2年・尾崎凱琉)って実は心優しいやつなんだなってちょっと感動した。
一心(新2年・瀧澤一心)の考え方を聞いて、初心を取り戻した感覚があった。
“チームのため”“先輩たちのため”って言ってくれる大翔(新3年・鈴木大翔)の活躍が見たいと改めて思った。
誰よりも楽しそうに、それでいて貪欲に、まっすぐサッカーに向き合う神田(新2年・神田拓人)の姿に引き込まれた。
「人少ない中設営ありがとう」って伝えたら「全然です!」って笑顔で返してくれる虎(新2年・秋山虎之亮)が眩しかった。


他にも、ここにはとても書ききれないくらい、素敵だなと思う瞬間がたくさんあった。
まさに「活力」をもらっていました。ありがとう。
(この1on1、最近ミーティングが多かったり寒すぎてみんな帰るのが早かったりで進捗が滞っているので、必ずプレシーズン中に全員と話したいと思います。声かけるので時間くれたら嬉しいです。)


ほんの少し視点を変えるだけで、ほんの少し意識を変えるだけで、こんなにも見える景色が変わる。


私のラストシーズンの目標のひとつは、「照らす」こと。
みんなが私に与えてくれた目標。


素敵だと思えることも、それを言葉にできることも、きっと幸せなことだから、それに気づいて終わりではなく、ちゃんと照らせるように。
誰かが他人から見えづらいところでがんばっていることが、誰かが内に秘めている想いが、意味のあるものになるように。


疑い、問い続ける

WASEDA the 1st.〜サッカー選手としても、人としても一番であれ〜
日々の運営担当や社会貢献の仕事、そして先日の100周年記念祝賀会。
この哲学の意味を考える機会がこの1年でとても増えた。
何か判断に迷った時には、「WASEDA the 1st.」の哲学により即した選択をとるようにした。


しかし、その度に思う。
「今の早稲田は本当に『WASEDA the 1st.』を体現できているのだろうか。」と。


口だけになっていないか。掲げるだけになっていないか。
「WASEDA the 1st.」は飾りじゃない。飾りにしてはいけない。
これは、哲学であると同時に、脈々と受け継がれるDNAであるはずだ。


2部にいる今だからこそ、もう一度その意味を問い直すべきなのではないか。
ずっと変わらない哲学にこそ、「強い早稲田を取り戻す」ための道標があるのではないか。
答えはひとつではないかもしれない。
それでも大切なことは、部員全員がこの哲学を体現しようと必死にもがくことではないか。




マネージャーである自分がこんな内容を部員ブログに書くことが正解なのかはわからない。
でも、私も早稲田大学ア式蹴球部の一員だから、外部の人と関わる機会の多い自分こそより強くこの哲学を意識しなくてはいけないと思うから、
そして何より、もう後悔したくないから。


3年間、笑って終わることのできたシーズンは一度もなかった。
誰かが泣いていた。誰かが謝っていた。
日常の些細な妥協が、逃げが、積み重なって最後に取り返しのつかない後悔になる。


「めんどくさい」って思われるかもしれない、もしかしたら、嫌われるかもしれない。


そんなの、みんなの涙を見るのに比べたら、「ごめん」って謝られても「ありがとう」としか返すことのできない無力感に比べたら、どうってことない。


来年、1部の舞台で躍動する後輩たちの姿が見れるように。
そして、同期と笑って引退できるように。


目を背けたくなるようなことにこそ、正面から向き合い続ける。
みんなのことを心から信じているからこそ、現状を疑い、問い続ける。
痛みから逃げない。
全ては、最後の最後に笑うために。


最後に

なんだか引退目前のブログみたいになってしまう気がして書くか迷っていたけれど、「想い」は生ものなので、色が変わる前に形にして残しておきたいと思う。
念のため断っておきますが、あえて“熱め”で書いています。火傷注意です。


奈琉と奏希へ

私にとって昨シーズン最大の原動力は、1年間試合に出続けてチームの中心を担う二人の姿でした。
2023シーズンは2人とも怪我もあった中で、やっと真骨頂に近い活躍を見れた気がしています。(奈琉のピッチ外での活躍も間違いなく2024シーズンのハイライトです。)
アウェーで運営に入ると、だいたい毎試合2人のプレーで本部付近がざわつきます。もちろん2人に限ったことじゃないけど!
それを聞いて1人で心の中でニヤニヤするのがアウェー運営の密かな楽しみでした。
奏希は前に「俺はみんなほどチームのことを考えられてるわけじゃない」って言ってたけど、全然そんなことないよね。
きっとその想いはプレーや背中を通して、十分すぎるくらいみんなに伝わっています。
2024シーズン、何度も何度も2人に前を向かされました。いつもありがとう。ラストシーズンもわくわくさせてください。


そして、山市へ。

私はあなたを日本一の主将にしたい。
勝った試合のあとでも険しい表情をしていることが多い、それくらいストイックな山市の、心からの「早稲田に来てよかった」の言葉を聞いて、思い残すことなく一緒に引退したい。
今、本気でそう思う。
だから、私の持てるすべての想いと手段をもって、そのための全力を尽くします。
引き続き、今まで以上に、本気で向き合いましょう。

自分の中の「Realvoice」を一通り言語化し終えた今、
もう一度、考えてみる。
「私は誰かの憧れになりたいのだろうか。」


私個人はきっと、憧れにはなれない。

そもそも理想像として映るには、あまりに泥臭く、熱く、不器用で、しかも後輩から舐められすぎている。


そうではなくて、ア式のマネージャーチームが、ア式という組織そのものが、大好きなみんなが、誰かにとっての憧れで、「活力」を与える存在であってほしいのだと思う。
かつて自分の目にそう映ったように。


「照らす」と同時に「疑い、問い続ける」こと。
一見相反するように思えるこれらに、相反するように思えるからこそ、拘り続ける。


それが、大好きなこの場所への私なりの恩返しの形。
この拘りが、「強い早稲田」取り戻し、新しい「憧れ」を生む、ほんの小さなきっかけになると信じて。

次回の部員ブログは、奏希(本保奏希・JFAアカデミー福島)です。
後輩から「最初は怖いと思ってたけど話してみたらめっちゃ優しかったです」と言われるランキング1位の、普段多くは語らない彼がこの部員ブログで何を語るのか、お楽しみに!

◇伊藤未羽(いとうみう)◇
学年:新4年
学部:文化構想学部
前所属チーム:東葛飾高校

【過去の記事はコチラ↓】


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