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【#Real Voice 2024】 「もう一度、走り出すために」 2年・髙橋智裕
「お前、今シーズンサッカーした?」
何度この質問をされたことだろうか。正直、耳が痛い。これが1番聞かれたくない質問だった。この言葉を聞くたびに、心の傷をえぐられるようだった。理由は明白だ。今の自分の現状と向き合いたくなかったからだ。怪我によって無駄にしたと思えるこの1年と、向き合う勇気がなかったからだ。
だからこそ、ここで自分と向き合うためにこの文章を書く。拙い言葉かもしれないが、読んでいただけると幸いだ。
2023年12月
年内最後の大会で負った怪我。診断は半月板損傷だった。幸いにも傷は深くなく、手術は不要だった。痛みを抑える注射を打ち、辛いながらもリハビリを続け、比較的スムーズに復帰できた。だが、復帰して数週間も経たないうちに、また同じ箇所を痛めた。また注射を打ち、リハビリをして復帰。しかし結果は同じだった。
2024年8月
3度目の怪我。最悪の診断結果が待っていた。前十字靭帯損傷。そして半月板はもうボロボロだった。ドクターの言葉も変わった。
「手術という選択も無くはないよ」から、「手術をした方がいいかもしれない」に。曖昧な言葉だったが、私には手術を勧められているように聞こえた。いや、そう捉えたかった。普通なら手術の話に悔しさや絶望を感じるのだろう。しかし私の胸に広がったのは、ほんの少しの諦めと、それを遥かに上回る安堵感だった。もしかしたら、私はこの言葉を待っていたのかもしれない。6カ月を犠牲にしてでも、この負のサイクルから抜け出したかったのだ。
手術は無事終わり、長いリハビリ生活が始まった。それなりの覚悟はしていた。根気よくやってやるつもりだった。しかし現実は甘くなかった。まともに歩くこともできない。階段の上り下りもままならない。その一方で、同期たちは試合で活躍し、着実に成長している。何より辛かったのは、仲間たちが毎日楽しそうに練習する姿を、ケアル(リハビリ施設)の小さな窓越しに見つめることしかできなかったことだ。辛さや悔しさを「大丈夫」と自分に言い聞かせ、ポジティブに考えようとする私だったが、こればかりは耐えられなかった。筋トレに集中しても、どこかで他人と自分を比べてしまい、無力さに打ちのめされた。食事制限もいつの間にか解除し、鏡を見るのが怖くなっていた。次第に何もしない、何もしたくない日が増えていった。
そんな中、ある日グラウンドで聞いた言葉が、私の心に深く刻まれた。
「今を全力で取り組め」
その言葉はシンプルで、よくあるアドバイスかもしれない。しかし今の私には、その一言が胸に響いた。解散式でも林総監督(林義規総監督)と兵藤監督(兵藤慎剛監督)が同じことをおっしゃった。その瞬間、私はある先輩の姿を思い出した。
伊勢くん(4年・伊勢航)だ。彼はこの前卒部した4年生で、主将を務めていた。彼もまた、私と同じ膝の怪我を抱えていた。しかし彼は、自分のリハビリよりもチームを優先した。練習中は声を張り上げ、公式戦ではベンチから全力で仲間を鼓舞していた。できることは少なかったかもしれないが、その「少ないこと」に全力を注いでいた。
私は、そんな伊勢くんの姿をずっと見ていた。だからこそ、どんなに辛くても「今、自分にできることを精一杯やろう」と思えるのだ。彼の姿勢が、私の心の支えとなっている。まさに「今を全力で取り組む」という言葉の体現だった。
そして私の周りには、幸いにも多くの支えてくれる人たちがいる。稲葉さん(稲葉聖也チーフトレーナー)をはじめとする社会人トレーナーの方々、大晴くん(3年・中根大晴)、いちか(2年・天野いちか)などの学生トレーナー。そして横浜市スポーツ医科学センターの方々。なにより、両親。
彼らは、私がサッカーができないこの時期を、毎日毎日支えてくれた。どんなに辛い日でも、彼らのサポートがあったからこそ、リハビリを続けることができた。本当に感謝以外の言葉が見つからない。この恩に報いるためにも、私はこの環境に感謝し、今を全力で取り組む以外にない。そして、絶対に成長した姿を関東リーグで見せる。
伊勢くん、期待していてください。
怪我をするまでは、練習や試合が「当たり前」だと思っていた。毎日練習があり、疲れているときには「今日はやりたくないな」と思うこともあった。しかし、怪我をして初めて気づいた。練習ができる時間、試合に出られる時間、それらは決して当たり前ではない。リハビリの中で、たった1歩を踏み出すのにどれだけの時間がかかるのかを知った。歩くことすら困難な中で、時間の重みを痛感した。
だからこれからのリハビリ、そして復帰後の2年間、その1日1日を大切にしたい。たとえ小さな1歩でも、それを積み重ねていくことが、未来の自分をつくるはずだ。この1年は決して無駄ではなかったと、後になって胸を張って言えるように、これからも「今」を全力で生きていきたい。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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次のブログはたけし(伊藤猛志・ジュビロ磐田U-18)です!
あんなイカつい身体なのに、とても穏やかな性格の持ち主です。信じられないですね。今年はFCのエースストライカーとしてチームを牽引し、得点王にも輝きました。普段はゴールを取る事しか考えてなさそうな彼が、今回どのようなブログを書くのか気になりますね。お楽しみに!
◇髙橋智裕(たかはしともひろ)◇
学年:2年
学部:文化構想学部
前所属チーム:早稲田実業学校高等部
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