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【#Real Voice 2024】 「Random」 新4年・石井玲於奈

「悲劇のヒロインぶってんじゃねぇ」


高校1年の時にトレーナーから言われた言葉を思い出す。
実際には私は男だから「悲劇のヒロイン」ではなく「悲劇のヒーロー」なのだが。



昨年10月、左膝前十字靭帯断裂、半月板損傷


今回はこの怪我を負っての今の心境とかこれからの意気込みとか書いていくつもりだった。



が、


過去のブログを見返す。
「これは同情してもらいたいわけではない」
と冒頭に書きつつも、滲み出る私不幸でしょ感。


今回のテーマを怪我にした場合、トレーナーの言葉を否定できない気がしてきた。
だからやめておこう。



この1年は精神的に成長したと思う。
組織行動論がテーマのゼミ活動が大いに影響した。


今回は私が1番心に残っていることを紹介する。


ダニエル・カーネマンの名著「ファスト&スロー」の中にこんなことが書かれていた。


「私たちは、人生で遭遇する大半のことはランダムに起こっているという事実を、どうしても認めたくないのである。」


は?と思う方もいるだろう。
当然の反応である。なぜなら、人間は物事に意味や因果関係を見出すことが大好きだから。



けれど、この事実は私の心の安定に繋がった。特に、大きなプレッシャーがかかる場面で、この知見は非常に有用であった。




ここでみなさんに本書で取り上げられていたことを紹介したい。


男の子と女の子が生まれる順序は、明らかにランダムである。
それぞれの事象は互いに独立して起きるのであり、直近数時間以内にある病院で何人の男の子と女の子が生まれようと、次に生まれる赤ちゃんに影響を及ぼさない。
では6人の赤ちゃんが次々に生まれるとき、次の3つの順序を考えてみてほしい。


男男男女女女

女女女女女女

男女男男女男


さて、この中でどの順序が1番起こりそうであるか?




直観的に答えるなら「男女男男女男」ではないだろうか。「女女女女女女」は不自然に感じ、「男男男女女女」は少し作為的に思えるから。



しかし、実際にはどの順序も起こる確率はまったく同じである。


人にはランダムな状況でも規則性やパターンを見つけようとする傾向がある。「女女女女女女」のような順序を見ると、偶然ではなく何か特別な理由があるように思えてしまう。
これは、人が無意識に世界に一貫性を求め、規則性を特別視してしまう心理を表す典型的な例である。




イライラする出来事が起きた後に冷静な判断ができるのだろうか。
何か嫌な出来事が起きた後、その負のオーラをひきずったままでいいのか。
感情の切り替えが大切な場面は多く存在する。


みなさんがどうかわからないが、私の場合、「ランダムな出来事」と捉えたことで感情の切り替えがしやすくなった。



本書では、バスケットボールの「ホットハンド(選手が何本か連続でシュートを決め、いわゆる当たっている状態のこと)」についても興味深いことが書かれていた。


何千本の連続したシュートを分析したところ、シュートを正確に打てる選手とやや劣る選手はいるものの、入ったシュートと外したシュートの順番は、完全にランダムであることが確かめられ、ホットハンドは存在しなかった。



みなさんはどう思っただろうか。
私はこの結果を知れて慢心の気持ちがなくなった。なぜなら、上手くいっている時でも、それが実力や特別な要因と誤解することなく、偶然の連続に過ぎないことを心に刻んだから。


ランダムを理解することは、努力を無駄にすることではない。むしろ、「努力しても結果がすぐに出ないこともある」と受け入れることで、長期的な視点で成長を追求する姿勢を持つことができる。実際、日々のトレーニングや準備を怠らないことで、ランダムの中でもより良い結果を引き寄せる可能性が高まる。ランダムだからサボっていいわけではない。



サッカーだけでなく日常生活においてもすべて完璧にいくとは限らない。しかし、起きる出来事を受け入れ、自分がコントロールできる範囲に集中することで、よりリラックスした状態を保てるようになった。



メンタルについていえば、内田篤人さんも中田英寿さんとの対談でこう語っていた。


「僕はメンタルを強い・弱いで考えたことがないんです。どちらかというと、上か下かで考えています。心の上下の振れ幅をなるべく一定にし続けたいと思っていました。いい時も悪い時も一定に、試合で勝ってもはしゃがない、試合に負けても落ち込み過ぎないようにしていました。」


私はランダムによって心の上下の振れ幅を一定にしていく。


「ファスト&スロー」という本は、私たちが日々行っている意思決定や判断がどれほど非合理的かを教えてくれる。ランダムはその一部の例に過ぎない。
日常生活の判断力を上げたい人や心理学に興味がある人はぜひ読んでみてほしい。



ここで少し話は変わる。


中学3年の時、早稲田大学が関東リーグ1部優勝したことを知った。
頭もいいのにサッカーも強いのかと感動したのを覚えている。
高いレベルでの文武両道に憧れを抱いた。
そんな早稲田大学に入りたいと思った。


だから、高校は付属校に入学した。


今の早稲田はどうだろうか。
強い早稲田はどこいった。
早稲田のいるべき場所は1部であるはずだ。


サッカーのインカレ決勝の観客数は4500人ほどであった。
大学ラグビーの決勝の観客数とかと比べても圧倒的に少ない。
全国大会の決勝がこんな感じとは悲しくなった。


どうすれば盛り上がるのか。


自分たちにできるシンプルな答えを用意するなら、早稲田が決勝にいけばいいだけである。


昨年の早慶戦は国立で10000人を超えた。
このような規模でプレーすることができたのは、早稲田だけでなく慶応も含めた多くの人の力であると承知している。


ただこのような規模でできる力が早稲田にはある。
たしかに、2部で戦う早稲田にとってインカレ決勝の舞台には並大抵の努力ではたどり着けない。


ただそれを成し遂げられるメンバーはいると思うし、上手くランダムも働いてくれるだろう。


1部昇格はもちろんのこと、このくらい大きなことを成し遂げたい。
そして、強い早稲田を取り戻す。



「目標は大きいほうがいい。野心を抱かなければ戦う意味はないし、何も勝ち取れない。夢を見るのはタダだからね」



フェルナンド・トーレスもこういった名言を残している。
怪我している分際で申し訳ないが、私の理想の早稲田を述べさせてもらった。



これからも、「ランダム」を大切にして自分のスポーツと人生を極めていきたい。




次はこの方。
裏の抜け出しにキレがありすぎてオフサイドを取られてしまうが、ビデオで見返すと意外とオフサイドではないダン(瀧澤暖・コンサドーレ札幌 U-18)です。
大学ラストイヤーとなるエゴイストは何を思うのか。ぜひ読んでみてください。


◇石井玲於奈(いしいれおな)◇
学年:新4年
学部:商学部
前所属チーム:FC東京 U-18

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