【4年生の想い】『憧れの場所からみる景色』大森美南
" 2024年1月6日 インカレ決勝
残り時間はあとわずか。
スコアは0-0。
私は途中交代でピッチに立った。
必死にボールを追いかけ、きっとスーパーゴールなんかじゃないけど、みんなの足が止まった瞬間に誰かのシュートのこぼれを決めるみたいな形でチームを日本一に導く。"
こんな未来を何度も想像していた。
スタメンを狙わないのは弱気な考えかもしれないが、ハイレベルなチームメイトたちに何一つ敵わない私がなんとか想像できたのがこの未来だった。
そして、この未来なら本当に自分が成し遂げる自信も少しあった。
自分のサッカー人生の最後にサッカーができずに終わる未来なんて、一度も想像したことがなかった。
ずっと憧れだったア女に来て、自分にとって輝かしい未来を目指すチャンスすらなくなってから、部活に行くのが本気でしんどいと感じる瞬間が増えた。
怪我をしてから半年が経つが、私がみんなに本気で弱音を吐いたことはいまだにない。悔しい気持ちをちゃんと言葉にして発したことがない。
それはみんなを信頼してないからとかではなく、落ち込んでても仕方がないと思ってしまうから。
たしかに、吐き出してすっきりすることもあるかもしれない。でもそれで頑張れるのは私だけ。
私の同期は過剰と言っていいくらいに仲間想いだ。そのおかげで今まで私が踏ん張ってこれたことは数えきれないほどある。
もしも今私が弱音を吐こうとしたら、みんなはどんなに時間がかかっても私の気が済むまで聞いてくれると思う。
そして一緒に泣いて、一緒に頑張ろうと引っ張り上げてくれると思う。本当に心強い存在だ。
でも、現実は変わらない。
もう早稲田のユニフォームを着てみんなと同じピッチに立って、大学サッカーという熱い闘いに挑むことはできない。
この一生晴らすことのできない悔しさを嘆いても仕方がない。
そんなことで同期や一緒に頑張ってきたア女のみんなをこれ以上辛い思いにさせられない。
自分の誕生日のお祝いをされているのに、怪我をした直後の私を見てみんなの前で泣いていた同期の姿が忘れられない。
もう復帰できないかもしれないと聞いて私の目の前で泣いていた後輩の姿が忘れられない。
早慶戦のメンバーに私を入れるかどうかの議題が上がった時、モチベーションビデオで私の動画がたくさん流れた時、ことあるごとに泣いていた同期の姿が忘れられない。
早慶戦当日、メンバーに入らないと決めた私の今シーズンの背番号を背負ってピッチに立ってくれた同期は、4年間1番一緒に頑張ってきたのに、私が怪我をした日はたまたまいなくて、電話でその知らせを聞いて泣いていた。
怪我をして、こんなにみんなを悲しませてしまうことが私にとって1番辛いことだと気づいたから、私はみんなの前で弱音を吐かなくなったのだと思う。
強がっているのかもしれない。
無理に明るく振る舞っている時もあるかもしれない。
でも、どんなにしんどくても、
ア女を離れようとは思わなかった。
ア女にいるのがしんどくて逃げ出しそうな私を引き留めてくれるものがあったから。
試合を重ねるにつれて、みんながチームのために必死になっている姿に励まされた。
どんなに疲れていても、最後までピッチで走り続ける選手たち。
ベンチで何もできないもどかしさを感じながらも必死に声をかけ続け、アップを続ける選手たち。
ピッチに立つことはなくても、誰よりもチームの勝利を信じてみんなに声をかけ続け、見守ってくれるスタッフ陣。
会場にすら来れないのに、チームの勝利を願って待っててくれる部員たち。
試合以外のところでも、みんなの言動にたくさん励まされた。
(本当は書きたいことたくさんあるけど、ここでは少しだけ)
私がリハビリを続ける中で、できることが増えるたびに褒めて励ましてくれるみんな。
もっとできることが増えて、パスなら一緒にできるようになるかもしれないってだけでも喜んでくれる後輩。
私と同じ怪我を何度も経験して、何度心が折れてもその度に立ち上がり、ピッチに戻ることを諦めない姿を見せてくれる後輩は、いつも私に「今日も頑張ろう」と声をかけてくれる。
私と同じ怪我をしたもう一人の後輩は、たくさんの人の期待を背負ってピッチに戻り、思うようにプレーできない悔しさを感じながらも、会場を沸かせるようなプレーをたくさん魅せてくれる。
試合に出る機会が少なくても、どんなに悔しい思いをしても、諦めたくなっても、ずっと一緒に頑張ってきたみんなが、私の目の前で必死に闘っていた。
みんながかっこよくて、輝いてみえた。
目の前にこんなに頑張っているみんながいるのに、そこを離れるなんてできなかった。
ずっと憧れだったこの場所は、今も憧れのまま。
本当なら自分も憧れの的になりたかった。
憧れが憧れのまま終わるのは悔しいことだけど、それでもやっぱり早稲田を選んで、ア女を選んでよかった。
憧れの場所に来れたからこそ、本気でそう思わせてくれる仲間に出会えたと思う。
引退を迎えた時、自分がどんな気持ちになるかはわからない。
日本一になっても、悔しさが勝ってしまうかもしれない。
だけど、私の憧れの場所は日本一の場所。
サッカーでも、チームとしても、日本一の場所。
それが私がこれまでに唯一憧れてきた早稲田大学ア式蹴球部女子という組織なのだ。
いよいよ、最後のインカレが始まる。
みんなと日本一の組織になるために、最後までア女の一員として全力で闘い続ける。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
4年間いろんな想いをしてきましたが、今は1番しんどい想いをしているかもしれません。
だけどなぜか、清々しい気持ちもあります。
ア女のみんながそうさせてくれました。
この最高のチームで闘う最後の大会がいよいよ始まります。
日本一に向けて、熱い応援をよろしくお願いいたします。
でもやっぱり、
もう一度みんなと本気でサッカーしたかったな。