ネタバレだらけの『ConneXion』考察①〈榛名真治〉
【A10TION!】
当記事はdTVで配信中のドラマ『ConneXion』について、ネタバレしかしていない考察記事になります。未視聴の方はドラマを見てから閲覧してください。また、一度見た方でも読んでいても良く分からない可能性があります。時間と心に余裕があればこのまま進んでください。
また、当記事を読むにあたって事前にこちらをチェックすることを強くお勧めいたします。
☆dTVドラマ『ConneXion』
☆note小説『ConneXion』
☆原曲『ConneXion』
LINE MUSICで期間限定で配信中!
また、補足としてこの記事も参考までに。
はじめに。考察なので文体がめちゃくちゃ堅いです。また、似たような接続詞を多用するので読みにくかったり、くどいと感じるかもしれません。ご了承ください。
この記事を書こうと思った経緯としては、単純にTwitterで《ConneXion 考察》と検索しても、自分以外に特にしている人がいなかったので、だったらやってやんよ!と勝手に燃え上がってるだけです。今回は杉本達監督に倣って、noteで考察を書いていきます。ですので、粗も多いと思いますが、よろしくお願いいたします。
〈榛名真治〉
真治は、『ConneXion』における主人公である。大抵の視聴者は主人公に共感、あるいは感情移入をしながらドラマを鑑賞する。
本編だけを見た場合、視聴者が彼に抱くイメージは《恋愛に臆病でAIに翻弄されるも、徐々に成長していく》という、巻き込まれ型主人公像だと思われる。ただ、note小説終章を読むと途端に彼のイメージは変わるのである。
《『ConneXion』のメインシステムオペレーター》。それが榛名真治の真の姿である。しかし、だからといって彼が全ての黒幕でしたー、というわけではない。これは本当に隠し要素であり、知らなくてもドラマ本編は楽しめる。ただ、知っていた方がより楽しめるという、今作最大のギミックだと言えよう。
ミステリ用語に《信頼できない語り手》というものがある。これは大方、語り手が悪党だったり、実は犯人だったりする場合に使われるものだ。しかし、今回の真治は一歩間違えればそうなりかねない状態だ。なぜなら、彼はただ巻き込まれた一般人ではなく、『ConneXion』の生みの親だからである。なんだよ、お前全部知ってんじゃん!何キョドってんだよ!と言われてもおかしくはない。だが、そうはならなかった。
理由としては2つ。1つ目は《『ConneXion』は2年前に政府に買収されていた》から。2つ目は《真治のマッチングには悠琉がハッキングして関与していたから》である。これにより、『ConneXion』は真治が作ったものとは別物となり、彼を大いに混乱させたのである。
note小説終章で、真治が『ConneXion』を完成させたのは3年前、序章で政府が『ConneXion』を500億円で買収したのは2年前であると明言されている。そして、1.5章で現在の『ConneXion』に政府が国民に秘密裏で導入したID管理のシステム・クロー(本編に出てくる透明の腕輪)の技術が充てがわれた結果、高精度のマッチングが可能になったのである。
そして政府は当初の思惑通り、政略マッチングをしながら《特定婚姻法》を施行。ただ、そこに赤社悠琉という、政府関連のゴシップ記者兼ハッカー兼真治の面倒を見るのが大好きな幼馴染が現れたことにより、事態は急転する。
まんまと『ConneXion』はハッキングされ、悠琉の知り得る情報から導き出した、真治の好みのタイプそうな女性を探し出し、マッチングさせたのである。さらに、リコメンドモードにも何かしらしたのか、中学生時代の思い出を語る様に仕向けたのである。
そして極め付けとなった、以前と同じ映画館でのデートの指定。自分の知る『ConneXion』とは違う事に動揺した真治の口から出たのは「AIは僕の事をどこまで知ってるんだろう?」。これは決して嘘ではなく、真治の本音だったのであろう。
このセリフにより、真治は我々視聴者と同じく『ConneXion』って何ぞや?AI管理社会怖いな…!という気持ちになり、完全に真治は巻き込まれた一般人、という印象を抱くのである。なんなら、真治の過去を知る悠琉や、やけに意味深に真治を見つめる将の方がもしかしてAIに関わってるのでは?と怪しく映るのである。誰も彼が『ConneXion』の生みの親であるとは思いもしないのだ。
では、なぜそんな隠し要素が仕掛けられたのか?それは恐らく、「逃げるな。自分と向き合え」という、悠琉からのメッセージから読み取れる。『ConneXion』自体が真治の分身であり、いくら変わり果てていようが、それと向き合い、そして乗り越える事により、彼が真に成長したという物理的証拠となるのだ。この点は、note小説終章で大体語られているのでそちらを確認していただきたい。
ちなみに、本編で真治が『ConneXion』に関与していると示唆されるセリフは存在している。例えば2話で、デートの採点結果をする際に出た「僕のような人のためのサポートシステムとして導入したんだ」。何も知らない視聴者からだと『ConneXion』は個人ごとに違うサポートシステムを入れることが出来るのかな?くらいにしか思えない。現に私がそうだった。
そして他にも、3話後半に出てきた「相性度95%しかマッチングしない仕様になってるから」というセリフ。このあと将が「そうなのか?随分詳しいな」と続けるが、そりゃそうである。ここまで分かりやすいフラグをスルーしてしまえるほど、真治はきちんと《信頼出来る主人公》だったのである。
もちろん、ちょっと意地悪なミスリードもある。例えば、なぜか昔の彼女に浮気されて別れた事も書かれていた悠琉のプロフィールに対し、真治のプロフィールは(悠琉曰く)5歳児以下のものだった。
しかし実際は、中学時代に好きだった子をデートに誘い、高校時代には一度女性と付き合った経験があった。そしてKicky Seek Myriad Inc.に就職した後は『ConneXion』メインシステムオペレーターとなったという輝かしい実績もある。しかし、それらの記述が一切無い。恐らくAI婚活をするにあたって、意図的に真治が改竄したのでは無かろうか。それでも《神音大学 システム理工学部 入学》という、ささやかな伏線は残していたのではあるが…。
……さて、これらを踏まえたうえで4話終盤の「君は僕の分身みたいなものだよね?」からのシーンを見てみると、さらに450倍しんどくなるという鬼畜仕様である。比喩じゃなくてガチで言ってたんだね、真治…。ふーん、おもしれードラマ…。
他にも、『ConneXion』メインシステムオペレーターとしての動きはあるが、それはまた将と悠琉の考察の中で触れていく。正直、この記事は真治の考察・前編であり、将と悠琉の考察の合間に真治の考察・中編&後編を交えていくので、そちらもぜひ見ていただけたら幸いである。以下、その他に本編内の描写で気になった部分について。
・真治が明日海=ローギアだと気づいた件
1話にて「あの声どっかで聞いたような…」というセリフはあるが、2話終盤でいきなり明日海に「ローギアさんですよね?」と話しかけたシーンは、正直かなり驚いた。 3話冒頭でほぼ同じようなやりとりがあるが、そちらではまだいつもの真治らしさがある。
もちろん前者のシーンがないと、真治は明日海の働くEndless Road CYCLE STATIONに行く理由がなくなるのであるが、声だけでローギアさんだ!と気づき、そのまま本人の返事も待たずに話し続けるのは意外だった。まぁ、ファン心理で考えれば目の前にいつも見ているチャンネルの配信者がいたら、つい興奮してしまうのも無理はないが。もし人違いだったら、この後しばらく落ち込むのではないか…?とハラハラした場面であった。
・総括
ここまで書いてきたが、個人的に真治は非常に庇護欲を誘うキャラクターだと思っている。悠琉の言葉を借りるなら、「引っ込み思案、根暗、諦め体質、嫌われたくない症候群などなどネガティブの権化のような奴」なのではあるが、それを演じるのが良い意味で人間らしさの塊である横尾さんなので、そこで大きなギャップが生まれる。もし横尾さんが悠琉を演じていたら、恐らくこのギャップは生まれていなかっただろう。ただのブチギレくんになりかねない(笑)
5話の真治は特に好きである。将にフられたことを話す明日海を見て、恐らく叶わない恋だと分かっていながらも、瞳を潤ませながら彼女を見つめるシーンは何度見ても切なくなる。その後のカフェでいつも悠琉が座る席に移るシーンも、明日海に告白するシーンも、パーティー会場で明日海に「大丈夫、自分に正直に」と語りかけるシーンも、本当に大好きである。
だからこそ、6話で真治が将にブチギレるシーンで得られるカタルシスも大きかった。俳優・横尾渉、ここに極まれり!考えれてみれば、真治が明日海にフラれた一因は将なので、そりゃずっとうだうだ言われたらいくら温厚な真治でも怒りたくなる(笑)
そしてやはり、真治を演じるのが横尾さんで良かった…としみじみ思うのが、2話と3話のアドリブデートである。恐らく5年前の彼だったら、この一連の流れを上手く演じきれずに終わっていただろう。ここまで面白いエンターテイメントとして昇華出来たのは、彼自身が良い意味で成長したからこそであろう。私なら、いきなり求愛ダンスをやってください!と言われたら頭が真っ白になるだろう…。
最後に。物語のラストは、複数あるパターンの中から横尾さん自身が選んだものだそうだ。もしかしたら、明日海と結ばれるルートもあったかもしれない。それでも、真治が、横尾さんが選んだのは「昔も今も、そしてこれからも僕たちは僕たちのままでいたい」というものだった。もう真治はその願いが叶っているだけで、心から笑顔になれていると私は思う。
それでもいつか、将が言った「次はお前が笑顔になる番」が描かれる日を、そして3人でステージに立って、『ConneXion』を披露する姿が見られる日が来るのを、ずっとずっと心待ちにしたい。
続きの考察はこちら↓