尹錫悦大統領談話(2024.12.12)
尹錫悦大統領は12日、約30分に及ぶ談話を発表した。この談話では、なぜ非常戒厳を宣布することになったのかについて比較的具体的に説明されており、少なくとも大統領が何を考えてこのようなことをしたのかについてある程度理解することができる。
特に、選挙管理委員会がハッキングの危険性があるにもかかわらず、システム点検に応じなかったという部分はかなり興味深い(パスワードがめちゃくちゃ適当なのも実際に「ありそう」な感じがあってリアル)。
与野の対立が先鋭化しているからといって戒厳令を出すこと自体、擁護できないが、「謎の戒厳令」を解き明かすためにも、大統領の言葉にも耳を傾ける必要があると思う。
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尊敬する国民の皆様、
私は今日、非常戒厳に関する立場を明らかにするためにこの場に立ちました。
いま、野党は非常戒厳の宣布が内乱罪に該当するとし、狂乱の剣舞を踊っています。
本当にそうでしょうか?
果たしていま、大韓民国において国政の麻痺と国憲紊乱を繰り広げている勢力は誰でしょうか?
この2年半の間、巨大野党は国民が選んだ大統領を認めず、引きずり下ろすために退陣と弾劾の扇動をやめませんでした。大統領選の結果を承服しなかったのです。
大統領選挙以後から現在まで、実に178回に達する大統領退陣・弾劾集会が任期初期から開かれました。
大統領の国政運営を麻痺させるためにわが政府の発足以降からいままで、数十人の政府公職者の弾劾を推進しました。
弾劾された公職者らは何らかの過ちがなくても訴追から判決宣告時まで長期間、職務が停止されます。
弾劾が発議され、訴追が成立する前に多くの公職者が自進辞退をしたりもしました。弾劾の乱発で国政を麻痺させてきたのです。
長官、放通委員長などをはじめ、自身ら(共に民主党代表の李在明を指すのか)の不正を調査した監査院長および検事を弾劾し、判事を脅迫する事態にまで至りました。
自身らの不正を覆い隠すための防弾弾劾であり、公職紀綱と法の秩序を完全に崩壊させているのです。
それだけでなく、違憲的特検法案を27回も発議して、政治扇動攻勢を加えました。
挙句の果てに犯罪者が自ら自身に免罪符を与えるセルフ防弾立法まで推し進めています。
巨大野党が支配する国会が、自由民主主義の基盤ではなく自由民主主義憲章秩序を破壊する怪物になったのです。
これが国政の麻痺、国家の危機状況でないとしたらなんだというのでしょうか。
それだけではありません。いま、巨大野党は国家安保と社会の安全まで脅かしています。
例を挙げると、去る6月、中国人3人がドローンを飛ばして釜山に停泊中だった米国空母を撮影して摘発された事件がありました。
彼らのスマートフォンとノートブックからは、少なくとも2年以上、韓国の軍事施設を撮影した写真が発見されました。先月には40代の中国人がドローンで国情院を撮影して捕まりました。この人は、中国から入国するや否やすぐに国情院にいってこのようなことを行ったことが確認されました。
しかし、現行の法律では外国人の間諜行為を間諜罪として処罰する道がありません。
このような状況を防ぐために刑法の間諜罪の条項を修正しようとしましたが、巨大野党が頑強に立ちはだかっています。
前政権当時に国情院の対共捜査権を剥奪しただけでは足りず、国家保安法の廃止を試みています。国家安保を脅かす間諜を捕まえるなということではないですか?
北朝鮮の不法な核武装とミサイルの威嚇・挑発にも、GPSかく乱とごみ風船にも、民主労総間諜事件にも、巨大野党はこれに同調したのみならず、むしろ北朝鮮の味方をしてこれに対応するために孤軍奮闘する政府のあら探しばかりしました。
北朝鮮の不法な核開発による国連対北制裁も先に解除しなければならないと主張します。
いったい、どの国の政党で、どの国の国会なのかわかりません。
(野党は)検察と警察の来年度の特別経費、特別活動費の予算は0ウォンに削減しました。
金融詐欺事件、社会的弱者対象犯罪、麻薬捜査などの民生侵害事件の捜査、そして対共捜査に使われる緊要な予算です。麻薬、ディープフェイク犯罪の対応予算までも大幅に削減しました。
自身らに向けられた捜査の妨害を越え、麻薬捜査、組織暴力団捜査などの民生事犯の捜査まで阻んでいるのです。
大韓民国を間諜天国、麻薬の巣窟、組織暴力団の国にするということではないですか?そのような人々こそ、国を崩壊させようとする反国家勢力ではないですか?
そうしておきながら、自身らの特権を維持するための国会予算はむしろ増やしました。
経済も危機非常状況です。巨大野党は大韓民国の成長動力まで消し去ろうとしています。民主党が削減した来年の予算の内訳を見ればそれがよくわかります。
原発生態系支援予算を削減し、チェコ原発輸出支援予算は実に90%を削減してしまいました。
次世代原発開発関連予算はほぼ全額を削減しました。基礎科学研究、量子、半導体、バイオなど未来成長動力予算も大幅に削減しました。東海(日本海)ガス田ボーリング予算、いわゆるシロナガスクジラ事業(ガス田探査事業)予算も事実上、全額削減しました。青年の就職支援事業、脆弱階層・児童資産形成支援事業、子供手当にまで手を付けました。産業生態系造成のための核心成長ファンド、強小企業育成予算も削減しました。
災害対策予備費は実に1億ウォンを削減し、パンデミック対備のためのワクチン開発と関連のR&D育成予算も削減しました。
このようにいま、大韓民国は巨大野党の議会独裁と暴挙によって国政が麻痺し、社会秩序が攪乱され、行政と司法の正常な遂行が不可能な状況です。
国民の皆様。
ここまでは国民の皆様も多くのことを知っていらっしゃるでしょう。
しかし、私が非常戒厳という重大な決断を下すまで、これまで直接にはどうしても明らかにできなかったさらに深刻なことが多くあります。
昨年の下半期、選挙管理委員会をはじめとする憲法機関と政府機関に対して、北朝鮮のハッキング攻撃がありました。国家情報院はこれを発見し、情報の流出と電算システムの安全性を点検しようとしました。
他の全ての機関は、自身の参観の下に国情院が点検することに同意してシステム点検が行われました。しかし選挙管理委員会は、憲法機関であることを掲げて頑強に拒否しました。
しかしながら選挙管理委員会の大規模採用不正事件が起こり、監査と捜査を受けることになるや、国情院の点検を受けると一歩退きました。しかし、全てのシステム装備のごく一部分だけ点検に応じ、残りは応じませんでした。システム装備の一部分だけ点検しましたが、状況は深刻でした。
国情院職員がハッカーとしてハッキングを試みたところ、いくらでもデータの操作が可能であり、ファイアーウォールも事実上ないのも同じでした。パスワードも極めて単純で「12345」のようなものでした。
システム保安管理会社もとても小さな規模の、専門性が極めて不足した会社でした。
私は当時、大統領として国情院の報告を受けて衝撃を受けました。
民主主義の核心である選挙を管理する電算システムがこのようにむちゃくちゃなのに、どうして国民が選挙結果を信頼することができるでしょうか。選挙管理委員会も国情院の保安点検過程に立ち会って見守りましたが、自身が直接データを操作することはないという弁明ばかり繰り返すだけでした。
選挙管理委員会は憲法機関であり、司法関係者らが委員となっており、令状による押収捜査や強制捜査が事実上不可能です。自ら協力しなければ真相究明が不可能です。
去る24年4月、‘総選挙に先立って問題のある部分に対する改善を要求しましたが、まともに改善されたのかわかりません。
だから私は今回、国防長官に選挙管理委員会の電算システムを点検するよう指示したのです。
最近、巨大野党(共に)民主党が自身の不正を捜査し、監査するソウル中央地検長および検事、憲法機関である監査院長を弾劾するといった時、私はもはやこれ以上ただ見守るわけにはいかないと判断しました。何かしなければならないと考えました。
彼らはいまや、遠からず司法部にも弾劾の刀を突きつけるだろうことが明らかです。
私は、非常戒厳令の発動を考えるようになりました。
巨大野党の憲法上の権限を乱用して違憲的措置を引き続き繰り返しましたが、私は憲法の枠内で大統領の権限を行使することにしました。現在の亡国的国政麻痺状況を社会のかく乱による行政・司法の国家機能崩壊状態と判断し、戒厳令を発動するが、その目的は国民に巨大野党の反国家的不善を知らせ、これをやめるよう警告することでした。
そうして自由民主主義憲政秩序の崩壊を防ぎ、国家機能を正常化しようとしました。
事実、12月4日の戒厳解除以降、民主党が監査院長とソウル中央地検長などに対する弾劾案を保留するとし、短時間の戒厳を通じたメッセージが一定部分、効果があったと考えました。
しかし2日後、保留するといっていた弾劾訴追をやってしまいました。
非常戒厳の名分をなくすという意味でした。
最初から私は国防長官に、過去の戒厳とは違い、戒厳の形式を借りて昨今の危機状況を国民に知らせ、呼びかける非常措置を行うと言いました。
なので秩序維持に必要な少数の兵力のみ投入し、実武装はせず、国会の戒厳解除議決があればすぐに兵力を撤収させると言いました。
実際に国会の戒厳解除議決が行われるや、国防部庁舎にいた国防長官を私の事務室に呼び、即刻兵力の撤収を指示しました。
私が大統領として発令した今回の非常措置は、大韓民国の憲章秩序と国憲を崩壊させようというのではなく、国民に亡国の危機状況を知らせ、憲章秩序と国権を守り、回復させるためのものです。
小規模だが兵力を国会に投入した理由も、巨大野党の亡国的行動を象徴的に知らせ、戒厳宣布放送を本国会関係者と、市民が大挙押し寄せることに備えて秩序維持のために行ったのであり、国会を解散させたり機能を麻痺させようとしたのではないことは自明です。
300人未満の実武装していない兵力であの広い国会の空間を長期間掌握することはできません。
過去のような戒厳を行おうとすれば数万の兵力が必要であり、広範囲な事前議論および準備が必要ですが、私は国防長官に、戒厳令発令談話放送で国民に知らせた後、兵力を移動させよと指示しました。
そのため10時30分の談話放送を行い、兵力投入も11時30分から12時を少し超えてなされたものであり、1時を少し過ぎて国会の戒厳解除決議が行われると即刻、軍の撤収を指示しました。
結局、兵力が投入された時間は1~2時間程度に過ぎません。
もし国会の機能を麻痺させようとしたなら、平日ではなく週末に戒厳を発動したことでしょう。
国会の建物に対する断電・断水措置から行ったでしょうし、放送送出も制限したことでしょう。
しかしこれらの何もやりませんでした。
国会で正常に審議が行われ、放送を通じて全国民が国会の状況を見守りました。
自由民主憲章の秩序を回復し、守護するために国民に亡国的状況を呼びかける不可避の非常措置を行いましたが、死傷者が発生しないよう安全事故防止に万全を期すようにさせ、兵士ではなく下士官以上の先鋭兵力のみを移動させるようにしたのです。
私は今回の非常戒厳を準備しながら、ただ国防長官とだけ議論し、大統領室と内閣の一部の人事には宣布直前、国務会議で知らせました。
各自の担当業務の観点から憂慮される反対意見の開陳も多くありました。
私は国政全般を見る大統領の立場から現状況ではこのような措置が不可避だと説明しました。
軍関係者は皆、大統領の非常戒厳発表後、兵力移動指示に従ったのであるため、彼らにはまったく過ちがありません。
そしてはっきりと申し上げますが、私は国会関係者の国会への出入りを妨げないようにさせ、そのため国会議員と極めて多くの人波が国会の庭と本館、本会議場に入り、戒厳解除案件の審議も行われたのです。
それにもかかわらず、(野党は)何としても内乱罪をつくり上げて大統領を引きずり下ろすために数多くの虚偽扇動を捏造しています。
いったい、2時間の内乱というものがあるのでしょうか。
秩序維持のために少数の兵力を一時投入したことが暴動だというのでしょうか。
巨大野党の虚偽扇動によって弾劾を急ぐ理由がなんでしょうか?
ただ一つです。巨大野党代表の有罪宣告が迫るや、大統領の弾劾を通じてこれを回避し、早期大統領選挙を行おうということです。
国家システムを崩壊させてでも自身の犯罪を覆い隠し、国政を掌握しようというのです。
これこそ国憲紊乱行為ではないですか?
私を弾劾しようと、捜査しようと、私はこれに堂々と立ち向かいます。
私は今回の戒厳宣布と関連して法的・政治的責任問題を回避しないとすでに申し上げました。
私は大統領就任以降から現在まで、ただの一瞬も個人的人気や大統領の任期、保身に執着したことがありません。
保身の考えがあったなら、国憲紊乱勢力と敢えて闘うこともなく、さらに今回のような非常戒厳を宣布することはなかったはずです。
5年の任期を守ることだけにしがみつき、国会と国民を無視することができませんでした。
私を選んでくださった国民の意志をないがしろにすることはできませんでした。
毎日のように多数の力で立法暴挙を続け、ひたすら防弾にのみ血眼になっている巨大野党の議会独裁に立ち向かい、大韓民国の自由民主主義と憲政秩序を守ろうとしたのです。
その道しかないと判断して下した大統領の憲法的決断であり、統治行為がどうして内乱になり得ましょうか。
大統領の非常戒厳宣布権の行使は赦免権の行使、外交権の行使と同様、司法審査の対象にならない統治行為です。
国民の皆様、
いま野党は私を重犯罪者に追い込み、直ちに大統領職から引きずり降ろそうとしています。
もし亡国的国憲紊乱勢力がこの国を支配すれば、どんなことが起こるでしょうか?
違憲的な法律、セルフ免罪符法律、経済失策法律などが国会を無差別に通過し、この国を完全に壊すでしょう。
原発産業、半導体産業をはじめとする未来成長動力は枯死し、中国産太陽光施設が全国の山林を破壊するでしょう。
われわれの安保と経済の基盤である韓米同盟、韓米日共助は再び崩れるでしょう。
北朝鮮は核とミサイルを高度化して、われわれの生を一層深刻に脅かすでしょう。
そうなればこの国、大韓民国の未来がどうなりますか。
間諜が大手を振って歩き、麻薬が未来世代を壊し、組織暴力団がのさばる、そのような国になるのではないでしょうか。
今まで国政の麻痺と国憲紊乱を主導した勢力と犯罪者集団が国政を掌握し、大韓民国の未来を脅かすことだけはどのようなことがあっても防がねばなりません。
私は最後まで闘います。
国民の皆様、
国政麻痺の亡国的非常状況で、国を守るため、国政を正常化するために大統領の法的権限で行使した非常戒厳措置は、大統領の高度な政治的判断であり、ひとえに国会の解除要求によってのみ統制することができるものです。
それが司法部の判例と憲法学会の多数の意見であることを多くの方々が知っています。
私は国会の解除要求を即刻受け入れました。
戒厳発令要件に関して他の考えを持っている方もいますが、国を生かそうとした非常措置を、国を壊そうとする内乱行為とみることは、様々な憲法学者と法律家らが指摘しているように、われわれの憲法と法体系を深刻に危機に陥れることです。
私は尋ねたいです。
いま、あちこちで狂乱の剣舞を踊る人々は国がこの状態になるまでどこでいったい何をしましたか。
大韓民国の状況が危うく、危機に置かれているという考えも全くなかったのでしょうか。
公職者にお願いします。
重大な安保状況とグローバル経済危機から国民の安全と民生の守護に、動揺することなく邁進してください。
国民の皆様、
この2年半、私はひたすら国民をみつめ、自由民主主義を守って再建するために、不義と不正、民主主義を装った暴挙に立ち向かってきました。
血と汗で守ってきた大韓民国、われわれの自由民主主義を守る道で皆が一つになってくださることを、切なる気持ちで呼びかけます。
私は最後の瞬間まで国民の皆様と共に闘います。
短い時間ですが、今回の戒厳で驚き、不安であっただろう国民の皆様にいま一度謝罪します。
国民の皆様に対する私の熱い衷情だけは信じてください。
ありがとうございました。