ドンブラザーズ ドン18話 ジョーズないっぽん の感想
毎度毎度、ギャグをやりながら細かい描写でキャラクターを補強していくのが上手すぎませんか?
タロウから一本とる手段も、力技で不意打ちを狙うジロウ、もやしを奪う小ちゃい勝負に持ち込む雉野、水鉄砲?での狙撃というタロウ相手になると俗っぽさと負けん気が出る猿原、びっくり箱を渡そうとするも罪悪感で自滅する鬼頭はるか、それぞれ個性が出ていて良かったですね。
みんな素直に筋トレするの、かわいいね…。
タロウがびっくり箱をもらって「女性にこういうものを貰うのは初めてだ」というくだり、タロウが言うと不思議と「女性にモテたい」願望みたいなものは感じなくて、異性を含む他者との関わりが無かった悲しみが全面に出てくるの、これもキャラ描写の成せる技…とおもった。
結局みんなでタロウの弱点を聞き出した上で隙を狙って攻撃しようとしたけど、これってソノイがタロウの弱点を(タロウ本人に)聞き出して倒したのと同じことを仲間たちがやろうとしている訳じゃないですか、でもお供たちは、「タロウが負けているところを見たくない」という気持ちでこれを拒んでくれて、そこはかなりグッと来ましたね。
仲間たちが不意打ちを辞めて謝ってるところを「ン…」みたいな感じで眺めるソノイがなんか面白かったね。お供たちが自分と同じ轍を踏まなくて良かったですね。きみ今回タロウの仕事手伝って人助けしまくっただけの良いやつだったなあ!!!
タロウ、ソノイ、お供たち(ジロウも含む)の善性が良く現れた、かなり良い回だった気がする。特にジロウはまだ闇落ちの可能性があって、君ほんとに大丈夫か?みたいな不安があるけど、その印象を覆すほどの劇的な描写が無くても少しずつ印象が和らいでいくの、やっぱ脚本がうめ〜と思った。
今回の、びっくり箱とかカブトムシのギィちゃんとか、タロウの「人間とは異質な者が抱える孤独」から来る悲しみって、昭和ライダー的なナルシシズムな訳じゃないですか、これまでのドラマでは、この悲しみが視聴者をタロウへ感情移入させる為のフックとして上手く機能していますよね。
でも、井上敏樹は過去に『仮面ライダーアギト』でこのナルシシズムを否定して、自分の使命にも悲しみにも無頓着で、精神的に自由で豊かなヒーロー、津上翔一を描いた訳で、そういう井上敏樹の作家性という意味でも、桃井タロウには悲しみから解放されて欲しい、お供たちと、脳人たちとも、賑やかにおでんとか食べて微笑んでいて欲しいですね。
自分の使命にも悲しみにも無頓着なヒーローって、鬼頭はるかのことじゃんね。「アギト(=タロウ)に生まれてしまった男」が、津上翔一的な素質を持った鬼頭はるかと触れ合う中で救われていく物語、ということですか?救ってくれ〜!
アギトに関連して、白倉Pの手掛けた平成ライダーでは、一つの大きな正義が存在するのではなく、それぞれに異なる正義を持ったキャラクターが衝突しあう物語が描かれて、今作でもドンブラザーズと脳人にそれぞれ異なる正義があったりして平成ライダーっぽいよな〜と思ってた。
でも、今回のエピソードでは、本来なら対立する立場であるはずのソノイや、精神的に善良とは言い切れないジロウも含めて、全員がそれぞれ善性を発揮するとこまでいってて、正義の面では噛み合わないままであっても協調することができる、というところまで描くのは、平成ライダーでは見られなかったかもな〜と思う。
このあたりは、やっぱり脳人という設定がうまいですよね。人間を愛する者同士の対立を正義と善の2つの軸で描くことができる。
ドンムラサメにも、獣人にも、正義があるのかもしれないね。これからの展開が楽しみですね〜!