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ヨコオファンは今からでも、ドラッグオンドラグーン2をプレイすべきなのか?
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はじめに
ニーア オートマタは未だ売れ続けている。7年半過ぎた今、900万本突破だという。代わりのない特別なゲームとして未だ口コミでジワ売れしているのだろう。
900万人もの人がいれば、プロデューサー、ヨコオ氏の作る陰鬱で耽美的な世界観にほれ込み、ヨコオ氏のゲームはすべてプレイしたい! という情熱を持つ人が現れるのは自明の理である。僕もその情熱を持った人間の一人だ。
しかし、そのヨコオ氏のゲームの中で一つだけプレイを迷うものがあるだろう。それが本作、ドラッグオンドラグーン2である。なぜかというとヨコオ氏の関わりが「Video Edit」程度だからである。
ヨコオさんが音楽にもシナリオに関わっていない? それはヨコオさんのゲームなのか? プレイする必要があるのか? そんな素朴な問いに対して、最初はプレイを諦めてゲーム実況を見はじめたものの我慢できず、このゲームを購入して完全クリアに至った僕が、僕個人の思いとして答えていきたいと思う。
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ただし、詳細は語らないが大筋のネタバレはするので、多少のネタバレも嫌な人は素直にプレイしてほしい。多少のネタバレも嫌ということはプレイモチベがあるということだろう、それなら、百聞は一見に如かず、だ。
ストーリー:1周するだけなら悪くない、しかし
2025年現時点でも興味を持ったのならば迷わずプレイしてほしい怪作、ドラッグオンドラグーン(以下DOD1)というゲームがある。本編はこれの素直な続編である。もっともまともだったDOD1のAエンドとBエンドの間のような展開で、神とかいう人間をおもちゃにしながら世界を滅ぼすのが趣味の種族を封印するため、ヒロインともいえるレッドドラゴンが封印の女神を務めて主人公のカイムが生き残った世界線の続きである。
主人公は、ドラゴンに育てられた少年ノウェ。ドラゴンに育てられた割に結構普通な感性を持っている。幼馴染の相武紗季が声を務めるエリスと封印騎士団というなんか裏がありそうな組織で民を守っていたが、前作のラスボスだったはずのマナが成長してヒロイン枠として現れ「封印騎士団こそ悪です」みたいな感じを出すので「えっそうなの?」と迷いながら世界の真実を知っていく、というお話である。
実は1周目の感想はそんなに悪くなかった。
確かに、ノウェとマナの行き当たりばったり感には少々うんざりもするが、その二人はそもそもドラゴンや神の操り人形的な側面があるし、全体を通してノウェの親のブラッグドラゴン、レグナのシナリオ通り、とも見ることができる。封印を担うサブキャラはなかなかに魅力的で(ザンポの残念さが好きです、食べるのが趣味で味を封印されるのかわいそうすぎる)、ラストの甘ったるい展開も、一応すぐに察することができる理由がある。
1周するだけなら難易度EASYにして回復薬をガン積みすればそれほど難しくもないし、なにより9章のカイムとレッドドラゴンの最期は涙失くしては語れない。そう、一周目だけならよかったのだ。しかし……このゲームはまだ続く。
システム:2周目と3周目は真エンド閲覧に必須
このゲームには大きな賛否両論点がある。それは、システム上、チャプターセレクトを排したために周回必須であることと、実質的な難易度の削除である。2周目からは難易度選択は無意味になり、1周目をEASYでプレイしていた僕のようなプレイヤーからすると敵の強さが段違いに上がる。その上で、2周目はエンディングとサブシナリオが解放されるがそこまで分量は多くなく、3周目に至ってはほぼ追加要素無しでエンディングのみが変わる。
つまり、真エンド閲覧のために強制的に推奨難易度HARDを一からプレイさせることを押し付けるシステムなのである(3周目はVERY HARDとまではいわずHARD+ぐらい)。
それであれば、当然それ相応の対価が欲しくなるのが人情である。あっと驚くストーリー、もしくはミッションそのもの面白さのどちらかが必要だ。しかし、DOD2はどちらもあと一歩のところで終わっている。
ストーリーで言えば2周目こそサブシナリオの解放や1周目と大きく変わるENDがあるものの、3周目は1周目の亜種と言えるようなENDである。完全なハッピーエンドとか希望とかをうたっているわりにとある主要キャラは死ぬし、ハッピーエンドになる理由が説明不足。人類を脅かす存在を雑に根こそぎ排除してしまうのは、根本解決と言えば聞こえはいいが、言うなればDOD1の世界観の否定に感じてしまう。
ミッションについては、2周目でようやくこのゲームが作ろうとしている面白さに触れられたという実感はあったので、決して酷い出来ではない。エリスの突きでアンデット系のモンスターを正面から薙ぎ払っていったり、難敵の攻略法をおぼえて、敵の強攻撃をはじいて隙を突くのは楽しい(エリスの突きが△のみのデフォルト操作だったら1周目からもっとエリスを使っていたかもしれない)。
しかし、ミッション自体が面白くて自然に周回してしまう、とまでは言いづらい。やはり爽快感が足りないと思う。無双系を意識して敵が大量に配置されているのにもかかわらず、敵の行動が妙にいやらしく、操作キャラの死角からおおきく振りかぶって致命ダメージを与えてくるのはストレスがたまる。簡単にしたくないという強い意志は感じるのだが、エリスの突きやコンボ中に無敵判定ぐらいはあってもよかったのではないだろうか。
キャラクター:結構好き
・ノウェ(CV:勝地涼)
いわゆる流されやすい意志薄弱系主人公なのだが、あんまり正義面しないせいかそんなに不快感を感じなかった。どちらかというととんでもない生い立ち(両親も育ち方も)の割にまともに育ったんだなという印象。多分後述のレグナがなんだかんだ人間の赤ん坊の可愛さにやられてまっとうに育てたんだろう。DOD1のレッドドラゴンしかり、ドラゴン、達観してる風のくせにわりとそういうところがある。
任務に赴いていたら民を救う旅をしている綺麗なお姉さん(マナ)に惚れて、以降マナを行動原理にしたと考えれば人間性も一貫している。自分が所属していた組織、封印騎士団の人間を斬るのは確かに鬼畜ではあるものの、本作の封印騎士団はトップ含めて腐っているのであんまり罪悪感を感じない。シナリオに複雑さがないとはいえるかも。
棒読みはちょっと気になるけど、のちに活躍する勝地さんの青い時代の声が聞けるというのは歴史的価値がある、かもしれない。
・エリス(CV:相武紗季)
相武紗季さんが個人的に好きなところもあって、DOD2オリジナルのキャラでは一番お気に入りかもしれない。嫉妬深いところはあるが、狂気とまでは言えず、結局自己犠牲に走るあたりも健気な負けヒロイン的趣がある。幼馴染あるあるである。
この子も行動原理がノウェ大好きで一貫しており、今思うとDOD2はかなり恋愛体質な登場人物で成り立っているように思う。こんなひどい世界でも、人は恋をするのだ。
・マナ(CV:小雪)
マナも意志薄弱と言われているが、もう生い立ちが悲惨だし、その後も完全に利用されっぱなしの人間なので、立ち直ってよかったなあという感じ。DOD2のストーリーで記憶を失って人間性をリセットしてからも(それはあんな記憶、失いたくもなるよね)結局その後も環境に振り回され続け、最後にやっと自我を持ったかなあというところである。
ノウェが一目ぼれした理由はよくわからないが、その空っぽさに惹かれたのかもしれない。空っぽさを魅力に勘違いしてしまうのは、若さゆえですかね。あるある。
・レグナ / ブラックドラゴン(CV:原田芳雄)
実質本作の主人公。DOD1では全然喋らなかったが、本作では雄弁でレッドドラゴンよりも大分マイルド。人間になんて価値はない、ドラゴンの理想郷を作るぜ、と言いながらノウェを将来が約束されている公務員、じゃなくて封印騎士団に入れたりと父親としてまともに振舞っていて、二面性というか、多分ノウェがかわいくて仕方なかったんだと思う。ドラゴンは神と違ってだいぶ人間味があってかわいく、それがDODの魅力の一つだ。
本作のシナリオの根幹はレグナが動かしているので、僕としても思い入れが深く、だからこそCエンドにもやもやを感じた。僕にとってはBエンドが真エンドである。
・ユーリック(CV:小山力也)
幸薄美形の仲間。そこまでストーリーに深く関与しないので思い入れはそれなりだが、DOD2のマイルドな憂鬱さを象徴しているキャラクターだと思う。やはりどこかみんな人間臭い。
・カイム & レッドドラゴン
結局今回もほぼほぼ物語を動かしていた二人。相思相愛で、一番熱い恋愛パートを披露してくれているといっても過言ではない。この二人が出てくると物語がしっかりと締まるように感じるのは、本作のいい点でもあり、ヨコオさんをあえて外して色を薄めたのに結局……という意味では悪い点でもある。
音楽:DOD1の正統進化、良曲あり
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サントラのリンク:Amazon
DOD1が伝説級に頭のおかしいオーケストラサンプリングで、ゲーム勢より現代音楽勢に受けそうなものに仕上がっているのだが、今回は時の人だった中島美嘉を主題歌に起用して大分王道に舵を切っている。というか頭のおかしいことをやめている。素直にオーケストラを生かした曲群になっており「運命」などは抜群に格好いい。サンプリングの時はオーケストラの演奏者に白い目で見られたようだし、DOD1がやり過ぎていたともいえるので正当な進化だと思う。
<個人的良曲>
・運命:シリアスなピアノを基調としたオーケストラ。一聴して気に入る格好良さで、重要なボス戦でしっかり使われているのも好印象。
・「尽きる」~聖地にて~:物語の架橋でこの美しい旋律は……DOD1の尽きる、だ!という形で使われ方もばっちり。幽遠なハープが鳴り響き、王道のオーケストラアレンジで美しい印象になっている。尽きるって実は主旋律がきれいなんですよね。
とはいえ、MONACAではないのでニーアファンを誘うには少し弱いかな、というところはあるかもしれない。
総評:DOD1の公式同人的なゲーム。ただ・・・
総じて、非常に惜しい感じである。「DOD1より戦闘システムを改善したので、ミッションを楽しむために周回必須にした、きっと楽しんでもらえるはず!」という意思は感じるし、実際楽しいミッションもあるが、あと一歩爽快感が足りないのと2周までにとどめなかったところがやりすぎていて、「ヨコオ氏のゲームはすべてプレイしたい!」という僕のような人に対しても、無条件にオススメはできない。
そもそもヨコオさんがDOD2を作ったら恐らくカイムの物語の続きをやることはないので(ヨコオシリーズは基本的に時系列が飛ぶので、同じ登場人物が次回作で続投するのはDOD2のみである)、そういう意味でもDOD1のマルチ・バッドエンドにもやもやした人が作った同人ゲームという趣に感じる。一番感動すると言われているエピソードがDOD1のキャラオンリーのイベントなのも、同人感がある。
ただ、本質的にはヨコオさんをトレースしてはおらず、例えば、すでに紹介した難易度HARDで周回必須というのは、基本低姿勢のヨコオさんはやらないし、3周目の真エンドの面倒くさい人全部退場、にもヨコオさんらしさはない。加えて、敵を倒すことに罪悪感を感じさせてこないのも気になる。ヨコオさんのゲームでは無双っぽいシステムを取りながら無双"されて"いる側の命を奪っている感じがあり、無双しながらも陰鬱な気分になるのだが、DOD2ではあまり感じなかった。
良く言えば、ヨコオさんがいない分他の主要開発メンバの色が出ている。しかし、骨格はトレースせずストーリーを踏襲にするとちぐはぐにはなる。ストーリーを肉体、骨格を精神だと考えると、ニーアレプリカントのような関係性になってしまっているのかもしれない。
また、本作で僕が思い浮かんだのはドラえもんの最終回、である。泣けるとカルト的にネットで評判になったが、原作者藤子・F・不二雄さんはこうはしないだろうな、というものだった。まさしく、本作も同様である。
なので、ヨコオさんのゲームをすべてやりたい、と思っている人に対しては、これはヨコオさん味がだいぶ薄いのでそこまで頑張ってやらなくてもいい、というのが僕の回答である。ただ、ヨコオさんのゲームに関連するものはすべて摂取したい、という人であれば、本作は良質な公式同人として手に取って欲しいし、その価値はしっかりある、とも思う。
おまけ:やりたくなった人向けの2、3周目のコツ
最後にEASYで1周目をクリアした後、血を吐いて武器コンプまで頑張った自分の思うコツ、です。
・おすすめ攻略サイト
大変お世話になった。とにかくここを読もう。
▲ドラッグオンドラグーン2攻略@Wiki
このゲームは結構操作方法が複雑である。詰まったらこの「操作方法・ヒント」を熟読するとよい。
▲操作方法・ヒント - ドラッグオンドラグーン2攻略@Wiki
特にエリスの「突き」は必須のテクニック。個人的には△とスティックを同時に押す(スティックはスマブラのように前にはじく)感覚でやるとうまくいった。1周目でマスターしていたらさらに本作が楽しめたかもしれない。また、ドラゴンのL2方向転換(注目状態でL2を押すと注目している敵にドラゴンを向ける)も大事。注目しながら動くとプレイヤーキャラの動きが複雑になるので、回避しやすい。
・おすすめ武器
ノウェは「封剣・破天の旋律」一択。周りを吹き飛ばす呪文が非常に有用、というかコンボが無敵ではなく敵の攻撃で止まるので、範囲呪文開始時の無敵時間はかなり重宝する。僕は忘れていたが、2章の前半で買えるらしいので「女神の城」でお金稼ぎしてでも買うと攻略が楽になる。なお、「女神の城」はエリスの突きをうまく使えないと結構鬼畜ダンジョンなので注意。エリスは「封槍・破天の円舞」、マナは「斉天の赤杖」、ユーリックは「折れた鉄塊」……なんだけど、フリーミッション以外のストーリー周回は大体ノウェでゴリ押してOK、な気がします。
・フリーミッションの注意点
「女神の城」でお金稼ぎしたり「天時の直轄区:地上」でレベル上げしたくなるが、章によってはメインシナリオで上書きされてフリーミッションが選択できなくなるので注意。僕は3周攻略後武器コンプしたが、1章をクリアしないと一部のフリーミッションが出なかったり、4周目の最初はレグナが1章の状態に逆戻りするという超不親切システムのせいでストレスがたまった。同じ轍を踏まないで欲しい。
・武器コンプ
エンディングボーナスでたくさんお金がもらえるのと、結局3周しないと出ないフリーミッションがあるので、3周完了してから根こそぎ武器を買ってフリーミッションをコンプする方法がおススメ。前述のレグナ弱体化はきついので、そこは3周目の最後にやっておくとよい。
・ゴリ押し方法
うまいプレイなんてできない、でもクリアしたい。そんな場合ノウェは「封剣・破天の旋律」でやばい攻撃を喰らい始めたら開始モーションで無敵になって敵の集団から離脱+アンデットはエリスの突き連打がおススメ。あとは肉弾戦主体のミッションなら「ガードピアス+1」、遠距離戦主体のミッション(空中含む)なら「シェルピアス+1」は絶対装備しておこう。一撃死が減るので、あるなしで全然違います。
なお、最後までサイドステップはあまり使いませんでした。囲まれたらサイドステップできない。魔法で薙ぎ払うのが安全である。
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