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涙のように
ずっと続くと思っていた
公園の夕焼け
クリーンセンターの時計台は
いつも門限を暖かく教えてくれた
ずっと続くと思っていた
カギを忘れて
家の前でお母さんの帰りを待つ
寂しさと苛立ち
買い物袋を持ったお母さんが見えた時の
安心感と家に入れる喜びに変わる瞬間
ずっと続くと思っていた
中学校の部活終わり
家が反対方向でも
彼女と一緒に下校した
夜の9時ぐらいに電話の約束をする遠回り
ずっと続くと思っていた
中3の夏休みから
毎年お盆に自転車で淡路島を一周した
みんなのスピードについて来れない
のろま
あいつは自分の自転車と
のろまの自転車を
ヒモで繋げて引っ張って
俺を追い抜いた
あいつとのろまの後ろ姿
海岸沿いのゆるやかなカーブを走っていく
ずっと続くと思っていた
違う制服で
待ち合わせもせずに
クリーンセンターの時計台が見える
殿津谷公園のベンチに集まった
青く光った夜の9時が
夜ごはんを食べるために帰らせて
青く光った夜の10時が
見たいテレビのために帰らせた
ずっと続くと思っていた
高校3年間の片想い
ただ夢中だった
無意識の純情
ずっと続くと思っていた
20歳になっても
自転車で淡路島を一周した
のろまは自分の自転車の荷台に
あいつの写真が入った写真立てを
倒れないようにヒモでくくりつけて走った
海岸沿いのまっすぐな道を
ゆっくり走っていく
みんなのスピードについて来れない
のろま
みんなが
自転車を停めて待つ
のろまが見えた
のろまは
待っていたみんなの前で
急にスピードを加速して
待っているみんなと一切目を合わさずに
猛スピードで通り過ぎていった
みんなが手を叩いて笑った
20歳になれなかった19歳のままのあいつ
あいつの写真とのろまの後ろ姿
海岸沿いのゆるやかなカーブを一緒に走っていく
ずっと続くと思っていた
21歳
夏
車で
神戸から宮崎へ
あいつの墓参り
2泊3日
あいつの墓参りが
みんなで行った
最後の旅行になった
みんなと
ずっと
楽しかった
ずっとみんなで
ずっとみんなで遊んでいたいと思った
けど
帰りの車
神戸に着いたのは夜中
地元の町をがよく見渡せる長い坂を下る
通っていた幼稚園
通っていた小学校
クリーンセンターの時計台
遠くには
小さく淡路島も見える
明石海峡大橋も光っている
車の中で
死んだあいつの好きな曲が流れた
ユニコーンの自転車泥棒
遠くにある
小さい淡路島を見てから
ワゴン車の一番後ろ
座席を倒して車の天井を見続けた
さみしくなった
終わるな続け
ずっと続け
気がついたら願っていた
家の前に着き
車から降りると
クリーンセンターの時計台が目に入った
青く光った時間は
涙のように温かく
ずっと続くと思っていた日々を
終わらせた
このままじゃ終わるだけだと
惜春
青春の終わりへと合図をかけてくる
沈んでゆく夕焼けに心を許すな
惜春を認めないなら
不自由ごっこで自由に暮らせ
大人の始まりへと指図をしてくる
沈んでゆく夕焼けに心を燃やせ
惜春を認めないなら
社会ごっこで遊んで暮らせ
死なない人はいない
夕暮れは命を削ってくる
死なない人はいない
夕暮れに命を焦がしている
仰げば尊しの余韻に呑まれて
未熟な色を激しく やよ励めよ
儚い刺激は青く
しぶとい傷みで赤に塗れよ
死なない人はいない
夕暮れは命を削ってくる
死なない人はいない
夕暮れに命を焦がしている
あぁ惜春を認めないのは
赤い春を生きているから
生きない人がいる
夕暮れと一緒に落ちぶれるな
素晴らしい日々は今日のはず今日のはず
沈んでゆく夕焼けに哀愁をなくせ