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かっちゃん

幼なじみのかっちゃん


かっちゃんと遊んでいる時、


かっちゃんの話した言葉をよく聞き返していた


その度に、かっちゃんのお母さんが


「あいうえお教室で、もっとガンバらなアカン」


と、かっちゃんに言っていた


僕は、なんの教室なんか知らなかった


かっちゃんは、言語障害があった


「#%&*@♪/▽☆∞まことくん」


「まことくん*∥#@☆♭%$″∞≒>」


「まことくん」


僕の名前だけは、一度も聞き返したことはなかった





かっちゃんと遊ぶ時は


かっちゃんの家でファミコンや積み木や塗り絵、アンパンマンやライブマンを見たりすることが多くて


たまに団地の裏の草むらにバッタを取りに行くぐらい


一緒に外で遊ぶことは少なかった


かっちゃんは心臓の病気で体が弱かった


外に行く時も陰のある所で休憩しながら遊んだ


かっちゃんは幼稚園の時も小学生の時も体育の時間や運動会もずっと見学していた


小6の時に体育で鉄棒のテストがあった


その時、クラスみんなが驚いた


かっちゃんは、体操服を来て参加していた


ニヤニヤしながら見ている子もいた


かっちゃんの出番


心配そうに見ている子もいる


ひ弱な少し猫背の小さい体で鉄棒の前に立った


かっちゃんが人前に立っているのを見るのは初めてだった


緊張しながらも集中している感じだった


かっちゃんは、先生のスタートの合図よりフライング気味で、いきなり逆上がりで体をあげた


そのまま鉄棒の上で腕を突っ張らして


足を振り子のように


いち、

に、

さんっ、

ぐるっ


それは一瞬で


頭は逆さま


鉄棒を足だけで


ぶら下がっていた


ニヤニヤしていた子も思いがけない光景にあっけにとられていた


クラスみんなの驚きや心配を無視して


かっちゃんは、頭を振り子にして体を大きく揺らす


クラスみんなの気持ちは追いついてない


大きく体を揺らす


どんどん大きく揺らす


勢いよく足が鉄棒から離れた


体が回転


地面に着地


勢い余って後ろに少しだけ体が反ったがピタッと耐えて止まった


大技成功


一瞬、時が止まったように静まり返った


クラスみんなが「すげー」と歓声


体育の授業が終わって興奮がおさまらないまま駆け寄って聞いた


「かっちゃん、なんで、こんな大技できるん?」


「なんかできそうやからやってん」


はっきりとした口調で言った

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