【#IPSEC 2024 宇宙ビジネス最新動向解説】パースで語られた災害対策×宇宙技術の展望とは!?
2024年11月25日~28日、オーストラリア西部の都市パースで「Indo-Pacific Space & Earth Conference 2024」(IPSEC 2024)が開催されました。このカンファレンスは、今年で2回目を迎え、地球上と宇宙空間の双方で使用されるAIやロボット工学、光通信など、多岐にわたる分野をテーマに議論する場として注目されています。また、開催地であるパースが持つ天候の安定性や地理的特性を活かし、宇宙技術や光通信ネットワークのハブとしての役割を高める側面も担います。
ワープスペースからはCSO/米国CEOの森が参加およびパネルディスカッションに登壇、そして本記事の執筆を担当する川口も同行させて頂きました。そこで今回は現地の様子や注目すべきトピックをご紹介します。
1.APRSAFとの合同開催と日本企業の存在感!
今年のIPSECは、JAXA主催でアジア太平洋地域の宇宙機関が集まるフォーラム「APRSAF」と合同で開催されました。その影響もあり、日本企業の展示や日本人参加者が全体の約3割を占めるなど、日本のプレゼンスが非常に高いイベントとなりました。大学、政府、民間企業も地球観測、小型衛星開発、光衛星通信など、多岐にわたる分野からの展示が行われ、参加者も学生から政府関係者まで幅広い層が集まりました。
2. 災害管理×宇宙技術の展望
森は「Space Technologies for Disaster Management: Building Resilient Communities」(災害管理のための宇宙技術: 災害に強いコミュニティの構築)と題したパネルディスカッションに登壇。このディスカッションには各分野のエキスパートが揃い、多角的な視点から災害管理における宇宙技術の可能性が語られ、主に以下のようなテーマが議論されました。
広報不足の課題
まず第一にパネルディスカッションでは、オープンデータの利用促進が不十分である点が指摘されました。例えば、欧州宇宙機関の地球観測データ「センチネル-2」など、一般ユーザーがアクセスできるリソースでも一般の方々の認知度がいまだに低い現状を改善し、より多くの人に活用される仕組みを構築する必要性が議論されました。災害時の宇宙技術の活用
今回のパネルディスカッションでは医療や航空分野の専門家が参加したことで、異分野の視点からの意見が飛び交いました。たとえば、災害時に人が「宇宙へ避難する」という未来的な構想や、緊急事態時に安全な状態で「冬眠」する技術についてのアイデアが議論されるなど、実現可能性を探る興味深い議論が展開されました。
3.光通信におけるパースの重要性
パース含む西オーストラリアは快晴の日が多く、天文台や地上局が集中しているため、宇宙産業の拠点として知られています。さらに、地上の光通信ネットワークの要所であり、パースにある西オーストラリア国立大学(University of Western Australia)が計画するTerraNet計画など、今後光通信地上局のハブとしても期待されています。
ちなみに、ワープスペースの戦略パートナー企業であるLatConnect 60がパースに本社を構えていることから、同地域はワープスペースの事業展開においても重要なポジションを占めています。
IPSEC 2024は、宇宙技術が地球の課題解決にどのように役立つのかを議論する場として、新たな可能性を示しました。特に、災害管理における宇宙技術や光通信技術の応用については、多くの期待が寄せられています。次世代の宇宙産業を牽引する技術や知見がここからどのように発展していくのか、今後の動向にも注目が集まります。
(執筆:川口奈津美)