時計。
私は、ある時から時計が嫌いだった。
というのも、目覚ましの音が嫌いとか、そういう理由じゃなかった。
シンプルに、時計関連のトラブルがきっかけで、恋人と別れたというだけの話である。
ともかく、時計が嫌いな私は、部屋に一つも時計をおいていなかった。
え、不便じゃないかって?
暮らしてみればわかるが、メチャクチャ不便だった。
今何時なのかわからないからいつ出勤すればいいのかわからないし、
朝目を覚ますのでさえ大変だ。
でも、慣れてしまえば案外、どうにかなった。
職場の友人から電話をかけてもらえば出勤・朝の問題は解決するし、
飯のタイミングは、勝手に体内時計が出来上がってくれる。
……そう、そのはずだったのだけれど。
一つだけ対応できないモノがあった。
それは、『突然のスケジュール変更』である。
突然スケジュールが変更されると、
体内時計と友人からの連絡で自分を管理しているものだから、
どうしても変更に順応できないのだ。
おかげで、私は、『時計を使わなかったせいで』デートに寝坊し、
恋人と喧嘩、分かれてしまった。
LINEの通知で目が覚め、目に入った最初の文字が『さようなら』だった。
それ以来、私は時計を使うようになった。
そのかわり、この出来事がトラウマになって、
私はスマホを使わなくなった。
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