うれしくない黄色信号。
人間のからだはほんとうによくできていると思う。からだには信号機みたいなものがあって、「大丈夫」とか「注意しましょう」とか「止まりましょう」と事前に知らせてくれる。なにがすごいって、とくに黄色信号だ。赤でもない、青でもない、「そろそろ赤になるよ、気をつけて!」の黄色信号。これがあるおかげで多くの事故を未然に防いでいるのだろう。
ぼくはいま、わりと大きめの血豆が、口のなかにできている。
もちろんなんの脈絡もなく血豆ができることはない。子供の頃のように転ぶことも、ケンカをすることも、プロレスごっこをすることも、ドッジボールが顔面を強打することもなくなった現在、どうして口のなかに血豆ができるのか。
「噛む」のである。
ラーメンを食べているとき、頬の裏側を噛んでしまう。カツ丼を食べているとき、舌を噛んでしまう。そういう不随意な不注意によって口腔内を噛み、それが血豆になるのだ。
この血豆が人差し指の爪くらいの大きさまで膨らむこともあり、そうなるとなかなか生きづらい。なのでそういう時は、患部にティッシュを当て、その上から指でグッと血豆を押し潰す。この方法があまり良くないことはわかっているし、少なからず心にダメージを負うので、できれば避けたいと思いながら、次の方法をぼんやり模索中である。
それにしても、なぜ口のなかを噛むのか。
ぼくの場合は「疲れ」が原因だ。心や身体が疲れていると自律神経の働きがおかしくなり、噛み合わせるべき歯がズレてしまう。前後左右に歯がズレた状態でものを咀嚼するから、頬や舌を噛んでしまう、ということらしい。
要するに血豆は、「ちょっと疲れてるぞ、気をつけて!」の黄色信号なのだ。
大きな事故を起こす前に、自分を守るべく教えてくれているわけだ。正直に、冷静に、現実を伝えてくれる黄色信号。えらいし、すごいし、ありがたい。
でも、一つだけ言いたい。
黄色信号よ、もうちょっとやさしいかたちで黄色信号を出してくれてもいいんじゃないかなぁ、と思うのである。
(小林)
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