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戸籍謄本などで法定相続人確定(北海道新聞連載㉔)

遺産相続手続きを経験した方から「大変だった」「面倒だった」という声を耳にすることがあります。
その理由の多くは戸籍関連の書類を用意する必要があるためだと感じています。

私自身、頭では分かっていても難しかった経験があります。
そもそも、なぜ戸籍関連の書類が必要なのでしょうか。


以下は90代の父親を亡くされた、70代のAさんと私の会話です。

Aさん 
相続手続きに関して
「銀行で父親名義の口座からの預金引出しや、口座の名義変更のため、父親が生まれてからの戸籍謄本を取るように言われたけど、そんなことって必要なの。

 
「法定相続人を確認するために必要なんですよ。」
「遺言書がなければ、法定相続人全員の協議で遺産分割をすることになるので、まず法定相続人を確定することが、相続の大切な基本になります。」

Aさん 
「でも自分以外に相続人はいないのに。なんで生まれてからの戸籍が…。」

 
「もし他にお子さんがいたら法定相続人になります。」
「本人の結婚や離婚、子供の結婚、法律が変わった時などに戸籍は新しく作られます。」
「全ての内容が新しい戸籍に記載されるわけではないので結婚した子や前妻との子はその当時の戸籍でなければわかりません。」

戸籍のほか、結婚、離婚などで誰もいなくなった「除籍」、法律が変わって新たに作られる以前の「改正原戸籍」が「戸籍等」と呼ばれ、少ない方でも5通くらい必要になることが多いのです。

Aさん 
「ふーん。本人の履歴がわかるってことだね。」
「父親が生まれたのは伊達か登別だったかな。」

 
「新しい戸籍には前の戸籍がどこにあるかが記載されているので、その市区町村へ請求することを繰り返していくのです。」

Aさん 
「自分でできるかな…。」

私 
「もちろんわからないところは市区町村に聞きながら進められます。」
「郵送での請求もできます。また、行政書士、司法書士ら「資格者代理人」と呼ばれる人に依頼することもできますよ。」

Aさん 
「でも金融機関等手続き先ごとに何部も用意するのが面倒だね。」

 
「5月下旬からは集めた戸籍等を法務局に提出すると証明書が交付されます。」

遺産相続に関連する銀行口座の名義変更、不動産登記の変更などで、法定相続人の証明がこの1枚で済む「法定相続情報証明制度」が始まる予定です。

Aさん 
「そうか、じゃあ、やってみるか。」

2017年(平成29年)4月19日(水曜日)北海道新聞掲載
「相続」

マイナンバーに戸籍情報の紐付ける方向で動いているようです。
実現にはかなり高い壁がありそうですが、法務省の情報によると令和5年にはシステムが動き出す予定。

実現すると相続手続きが劇的に改善されると予想します。

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