「UFOタブー」の維持とそれに対抗する姿勢について
この記事の続き。
「UFOタブー」を政治的に維持するための手法には三つあるという。
一つは政府、科学界、メディアなど現実を公的に定義する権限を持つ人々による、UFOとは何かについての権威ある説明である。彼らは、主に次の四つの説明を用いて、UFOについて真剣に受け止めるべきではないと言うコンセンサスを強化してきた。
1 UFO現象には合理的(自然的、人為的)な説明が可能である。
2 UFOは国家安全保障上の脅威ではないから無視できる。
3 UFOは実在しないため、UFO研究は「疑似科学」にすぎない。
4 UFOは人間の空想や無意識が生み出した非実在(フィクション)である。
第二の方法は、1968年の「コンドン報告書」に代表されるようなUFOに関する政府公認の報告書により「疑似科学」のレッテルを貼ることである。
第三の手法は、政府や軍の関係者による広範な秘密主義であり、具体的な隠蔽工作が含まれる。
さらには社会的圧力と権力を用いて、UFOへの「信念」を公表する人々を嘲笑やゴシップ、忌避、人格攻撃などによって社会的に排除するという「規律メカニズム」により「沈黙のスパイラル」が醸成される。
これらの、政治、科学、メディアによって維持され、個人のレベルでも根深く存在する「UFOタブー」に対し、レスリー・キーンは「積極的不可知論 militant agnostics」という態度を提唱している。
これは、体系的に研究されるまでは、UFO(UAP)が地球外起源であるかどうかについての立場を留保するが、UAP現象を無視するのではなく、現実をありのままに見つめ、真に正体不明の物体として真摯に受け止めるという姿勢を意味する。
そしてそれは、単に「私には分からない」という消極的な姿勢(純粋な私的不可知論)ではなく、UAPという未知の事象についての我々の無知を減らすために、さまざまな証拠を収集し、科学的検証を推し進めていこうとする立場でもある。
アレクサンダー・ウェントは、これまでの最小限の科学的研究を超えて新たな突破口を生み出すためには、三つのことをしなければならないという。
1 個々のUFO事例ではなく、相対的なパターンに注目すること。
2 過去の報告の分析よりも、新しい報告を見つけることに焦点を当てること。
3 主観的な目撃証言ではなく、客観的な物理的証拠の収集に焦点を当てること。
レスリー・キーンは2010年の時点でこう述べている。
レスリー・キーンがこう書いてから10年以上の間に、アメリカ政府の方針は大きく転換し、メディアにおいても「UFOタブー」の力は(少なくともアメリカにおいては)徐々に弱まりつつあるように思える。
次回は、長らく笑い話とされてきたUFOが、ついにそのタブーを乗り越え、「ディスクロージャー」に至ろうとしている歩みを、レスリー・キーンの証言と共に振り返ろうと思う。