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インゴ・スワン「リアル・ストーリー」(158)

第 55 章「空間を通過する想念」

第 53 章の終わりで述べたように、私は1972 年 9 月 15 日に「歩行性」肺炎と診断され、2 週間寝たきりだった。本当に具合が悪く、衰弱していた。最初の3日間は意識が朦朧としていたが、ゼルダは 4 時間ごとに私を起こして、処方されたペニシリンと大量の水を飲ませてくれた。

ペニシリンはすぐに効いたが、私はまだ寝たきりだった。4日目くらいから、1942 年に出版されたヒューバート・ウィルキンス卿とハロルド・M・シャーマンの共著による本『空間を通過する想念 THOUGHTS THROUGH SPACE』を読み直し始めた。

この本は、どんな基準で見ても、20 世紀で最も優れた文書の一つであることは明らかだ。特にヒューバート・ウィルキンス卿は、北極と南極の史上最も偉大で大胆な探検家の 1 人であり、航空分野でも数々の偉業と記録を残した人物である。

だがこの本は急速に忘れ去られてしまった。その理由はこれから解明しなければならない。

考えられる理由の一つは、ウィルキンス/シャーマンの実験は第二次世界大戦が始まる前の 1937 年から 1938 年に行われたにもかかわらず、この本自体は戦争の最も激戦期である 1942 年に出版され、その間に超心理学というテーマはほとんど関心の対象ではなかったことにある。

もう一つの理由は、この本が長距離テレパシーに関するものだったことだ。このテーマは西洋世界の近代主義的な科学的考え方から嫌悪感を持って受け止められた。

しかし、実験は超心理学の観点からは圧倒的な成功を収めた。だからこの本が超心理学界で忘れ去られた理由を理解するのは困難である。この本が超心理学界で忘れ去られたのは、超心理学者が誰もこの本を読んだことがなかったからにすぎない。

統計的超心理学のミクロPSIの側面を考慮すると、この本はミクロPSIに反するある種のマクロPSIの記録であり、また実用的な応用が可能であることを明らかに予兆するものでもあった。

ヒューバート卿とハロルド・シャーマンの活動は、彼らによってテレパシー的性質と特徴づけられた。しかし実際には彼らの実験のうちテレパシー的であったのはのほんの一部だけだった。それは、彼らの実験の大部分が1971年にアメリカ心霊研究協会で確立された遠距離リモートビューイングのモデルと明らかに一致するからだ。もちろんテレパシーとリモートビューイングは共によく理解されていないものの名称にすぎないのだが。

ウィルキンスはシャーマンから遠く離れた場所へ行き、シャーマンは時折ウィルキンスのいる場所、彼が何をしていたか、彼の周りで何が起こっていたかを「見て」説明していた。

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