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インゴ・スワン「リアル・ストーリー」(89)

高速道路を疾走する彼の車の中で、私はハルが私の言うことに何でも耳を傾けていることに気づき、少し驚きを覚えた。その時、私は実際に生身の人間と話しているのだと感じた。パソフは非常に繊細で鋭敏な「心」を備えていた。

「精神的な情報処理グリッドの複製 duplicating of mental information processing grids」という言葉の意味を表現するのは少し難しい。これを経験した人が何人いるかわからない。この現象は比較的まれだと思う。要は、タンゴを踊るには2人必要だということだ。

ほとんどの人は何らかの障壁を持っているので、実際には他の人の話を聞いていない、または聞くことができない、ましてや複製することなどできない。結局のところ、聞こえないものを複製することはできない。

生身の人間は他人の精神活動を複製できるし、実際に複製しているというのが、私の研究による確信である。もちろんこれには、自分の参照フレームから外れて、それらのフレームが無効化される恐れなしに、そのフレームから抜け出す技術が必要である。

実際、パソフは聞くことができ、複製することができた。鳥に羽があるのと同じように、これは彼にとって自然で永続的なものだったことを私は後に知った。そしてもちろん、これらの能力が彼を私が出会った中で最も並外れた人物の一人にしたのである。

私が明確にしておきたいのは、パソフは私が「真の傾聴」と呼ぶ、並外れて高度に発達した能力と、模倣に対する防御的な恐れのない能力を持っていたということだ。

パソフが、私たちが取り組む「超能力」現象を科学、政府、政治、諜報機関の最高レベルにまで持ち込むことを可能にしたのは、これらの能力だったと私は思う。

彼はしばしば克服できない困難に打ち勝った。私たちが取り組むことになる現象に人々が同意するかどうかにかかわらず、これら特性の1つだけでも、偉大さの証である。真の傾聴がないと、他人の真似をうまくすることはできない(高度なテレパシー能力者でない限り)。一方、外交術は、通常は苦い経験を犠牲にして習得しなければならない術である。

ハルがそれに気付いたかどうかはわからない。私が述べることは彼が読んだときに少し驚くかもしれない。彼が私の話に耳を傾け、私の言うことを真似できると気付いた瞬間から、それが価値のあることであろうと今であろうと、私は彼の手の中で粘土かパテになった。

どんなに鈍感な人でもこれを理解できると思う。なぜなら、あらゆる場所のあらゆる階層の人々が、誰でもいいから本当に自分の話を聞いてくれる人を見つけるために多大な犠牲を払うことを私は知っているからだ。

真の傾聴は稀だが、間違いなく真の偉大な人間の顕著な特徴である。このトピックについては、今後さらに深く掘り下げる必要がある。なぜなら、これはリモートビューイングの開発と指導にとって非常に重要であることがわかったからだ。

私自身は、真の傾聴の要素を少し持っている。だが私は非言語的な方法で観察し、感じ取るのが好きだ。ほとんどの人は誰かに本当に話を聞いてもらいたいと思っているが、一方でそのようなことを心苦しく感じるため、観察され、感じ取られることを好まない。ただのおしゃべりとして聞くのは心苦しく感じない。


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