【朗読】トライアングル/むくみ
【作者】むくみさん 【朗読者】いしもともり
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むくみさんの短編小説
「トライアングル」を朗読させて頂きました♪
ステキな作品を読ませて頂き感激です✨
https://note.com/futomomo_mukumi/n/n89e8e736eb89
*****************
【本編】
同窓会からの帰り、自転車を漕ぐ山村の背中に私は額を預けた。
山村の背中は広くて温かくて、懐かしい匂いがする。
「大丈夫か?」
山村の声が風に乗って聞こえて来る。
「大丈夫ー。」
山村に届くように、叫ぶ。
「高校生に戻ったみたいやな。」
その言葉に胸がいっぱいになった。
「ずっと言えへんかってんけど、言っていい?」
「何を?」
「山村のこと、ずっと好きやったー。」
酔ったフリで、目一杯元気な声で言った。
「知ってた。」
「えっ?」
山村は私の気持ちを知らないと思っていた。
「俺もお前のこと好きやったー。」
山村は私より大きな声で叫んだ。
なんの冗談?
山村は高2の夏からミドリと付き合い、28歳で結婚した。
ミドリは2次会には出ずに帰って行った。
「コンビニ、寄ろっか。」
山村の優しい声が聞こえてきた。
コンビニの灯りが眩しかった。
山村に顔を見られるのが嫌で、私は外で待っていた。
山村はレジ袋をカゴに入れると、自転車を押して歩き出した。
私は後ろをついて行く。
山村の背中にギュッと抱きつきたかった。
山村の背中を思いっきり殴ってやりたかった。
切なさと怒りが入り混じり、ぐちゃぐちゃになった胸の中。
公園のベンチに並んで座ると、山村はレジ袋からパック入りの林檎ジュースを取り出し、私に差し出した。
これ…
私が放課後に毎日飲んでたやつ。
なんで覚えてんの?
気付けば頬に涙が伝っていた。
「ずるいわ。」
「ごめん。」
「俺、本当はお前の事が好きやってん。でもミドリに告白されて、ミドリと付き合ったらお前とも仲良くなれるかなって。」
「いつ知ったん?私が好きやって。」
「卒業式の日。ミドリに聞いた。」
「その時にミドリと別れたらよかったやん。」
「別れたら死ぬって言われて出来ひんかった。」
でも結局、山村はミドリを選んだ。
ミドリは家で山村を待っている。
見上げると夏の大三角形が見えた。
この林檎ジュースを飲んだら帰ろう。
この恋の残り火は、林檎ジュースと一緒に飲み干した。
「トライアングル」を朗読させて頂きました♪
ステキな作品を読ませて頂き感激です✨
https://note.com/futomomo_mukumi/n/n89e8e736eb89
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【本編】
同窓会からの帰り、自転車を漕ぐ山村の背中に私は額を預けた。
山村の背中は広くて温かくて、懐かしい匂いがする。
「大丈夫か?」
山村の声が風に乗って聞こえて来る。
「大丈夫ー。」
山村に届くように、叫ぶ。
「高校生に戻ったみたいやな。」
その言葉に胸がいっぱいになった。
「ずっと言えへんかってんけど、言っていい?」
「何を?」
「山村のこと、ずっと好きやったー。」
酔ったフリで、目一杯元気な声で言った。
「知ってた。」
「えっ?」
山村は私の気持ちを知らないと思っていた。
「俺もお前のこと好きやったー。」
山村は私より大きな声で叫んだ。
なんの冗談?
山村は高2の夏からミドリと付き合い、28歳で結婚した。
ミドリは2次会には出ずに帰って行った。
「コンビニ、寄ろっか。」
山村の優しい声が聞こえてきた。
コンビニの灯りが眩しかった。
山村に顔を見られるのが嫌で、私は外で待っていた。
山村はレジ袋をカゴに入れると、自転車を押して歩き出した。
私は後ろをついて行く。
山村の背中にギュッと抱きつきたかった。
山村の背中を思いっきり殴ってやりたかった。
切なさと怒りが入り混じり、ぐちゃぐちゃになった胸の中。
公園のベンチに並んで座ると、山村はレジ袋からパック入りの林檎ジュースを取り出し、私に差し出した。
これ…
私が放課後に毎日飲んでたやつ。
なんで覚えてんの?
気付けば頬に涙が伝っていた。
「ずるいわ。」
「ごめん。」
「俺、本当はお前の事が好きやってん。でもミドリに告白されて、ミドリと付き合ったらお前とも仲良くなれるかなって。」
「いつ知ったん?私が好きやって。」
「卒業式の日。ミドリに聞いた。」
「その時にミドリと別れたらよかったやん。」
「別れたら死ぬって言われて出来ひんかった。」
でも結局、山村はミドリを選んだ。
ミドリは家で山村を待っている。
見上げると夏の大三角形が見えた。
この林檎ジュースを飲んだら帰ろう。
この恋の残り火は、林檎ジュースと一緒に飲み干した。