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【極短編】秋の味覚

最近の秋は異常に短い。

「一番好きな季節なのに……」
ポツリと呟く。

ようやく重い腰をあげ
扇風機の解体を終えた。

朝から洗って干しておいた
ハネや部品を片付ける。

扇風機と交替して
ファンヒーターを
出す。

仕舞う場所も
設置する場所も同じだ。

「よいしょっと……
 これで急に寒くなっても
 大丈夫っと」

誰もいないのに独りごちる。

立ち上がり窓の外を見ると
空はオレンジ色に染まり
遠くの山も緑の中に赤や黄色が
ポツポツと見える。

ぼんやり見ていると
ピンポーン
インターフォンが鳴る。

我にかえり
いそいそとドアを開けると
お向かいの女性が
レジ袋を持って立っていた。

「昨日ね、姉から太秋柿が届いたの。
 アキちゃん好きでしょう?
 お裾分け」

「ありがとうございます。
 ちょっと待ってくださいね!」

準備していた紙袋を奥から持ってきて女性に手渡す。

先日実家から届いた梨が入った紙袋だ。

「あらぁ、いつもありがとうね。
 主人が梨好きだから喜ぶわぁ」

毎年、同じ時期に繰り返される
このやりとり、同じ会話。

ご近所付き合いは、
ほとんどしていない私だけれど、
このやりとりは嫌いじゃない。

部屋に戻ると、
炊飯器からいい香りが漂い始めた。
ゆるゆると夕飯の仕度を始める。

今晩の献立は
キノコご飯にサンマに柿に梨
秋のごちそうだ

【お題: 秋の味覚】

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