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今から、すごいと思ってたnote語らせて:0023


爆薬をしこたま積み込んだ車が、アクセルべた踏みでジャンプ台を駆け上がって飛び上がって、富士山の頂上に突っ込んで大爆破!山の形をすっかり変えてしまった。
…みたいな衝撃を、このnoteを読んだ時受けました。


美しかった富士山の形がもう凹んじゃって、取り返しがつかない事が起こったのに、どこかスカッとしてしまった。


ぶっ飛んでて面白いし、恐ろしいし、どーーしようもなく哀しい話。


今年の1月にこれを読んだ時、すぐにでも感想を書き始めてはいたのですが、作者の方はnoteでは既に活動されていないので「感想書いてもいいのかなぁ。迷惑にならんかなぁ」と思ったりもしました。

ただ、やっぱりどうしても書きたかったのと「世の中もう何が起こるか分かんないし、そもそも一生会う事もないだろう人に感想を読んでもらえ…るかもしれない手段があるなら、その時点で奇跡なんですよね」と踏ん切りをつけて書いてみたので、勝手をどうかお許しください。

タイトルにも書いた通り、半年たった今でもすごいと思ってるし、ふとした時に思い出します。
(以前コンテストタグとしてあった「今から推しのアーティストを語らせて」からもじりました。あのコンテストの記事も軒並み情熱的で、今でもたまに読み返して参考にしています。)



あらすじ:

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特撮怪獣オタクの男は、特撮の世界に女性が入り込むことが許せなかったが、ある日新しいウルトラマンシリーズにて、自分が最も愛する怪獣ゴモラに女性が乗り移り一体化して操られているのを憤慨し、その役を担っていたアイドル最中もなを殺すことにする。


一生を賭けた好きな物がある事は、とても素敵なことです。
で、自分の一生が入り込む趣味って、生きてきた癖やコンプレックスがあるから、歪んだ偏りの思考を抱えちゃってる事もままあると思います。
でも、そういう好きと自分の混ざり合った思考の末に、超えちゃいけない一線を超えてしまった時に起こるとんでもない爆発と虚しさの物語でした。


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ネタバレありの感想

要所要所で怪獣の小ネタも散りばめてふふっと笑いを誘う。作者さんの怪獣愛が半端ない。

アイドルのもなちゃんを殺すと決めてからの怒涛の展開がもうとんでもない。「えっ、マジで殺しに行くの?マジで?夢オチじゃなくて?」と何度も思いました。


一度決断してしまった男の行動力と、「そんな頑張れるんならもっと別の方向にエネルギー使ったらええやん!」とつっこみたくなる爆発力が、哀しくなるほどに生き生きしてるんですよね。
人間でなく、特撮の世界に身を完全に沈めて一体化してしまった。
特撮としての格好いいトドメを刺そうと油断したところで倒れ死に伏す。

実際死んだかは分かりませんが、その危機に対しても男は現実の己の死よりも、ゴモラと自分を同一視した虚構が特撮のゴモラの予定調和として終わる結末に満足してうふふと笑う。この笑いがまたとんでもなく気持ち悪いし怖ろしい。

後味も悪いし割と救いようもないしばんばん人も死ぬのに、そこにある種の爽快感を感じてしまう。



これは自分も相当ひねくれてる人間なので、そこら辺の感性もあるかもしれないなと思います。ある意味では自分を省みる事のできる小説でもあります。

ちょっと話は変わりますが、南国の漁師さん達が鯨を海中で捌くシーンをテレビで録画して、ずっと「美味しそうだな」って眺めていた時期があって。

大量の血とか脂が海を真っ赤に染める勢いで容赦なく噴き出して、その血にまみれながら解体していくわけです。
本能がバチバチに刺激されるけど、どっかで頭が冷えきって取り組まないと足元を掬われそうになる感じが、この小説を読んでいて思い出しました。


何かを愛するあまりに踏み外してしまう人間の危うさみたいな。倫理とか道徳って割と呆気なく情に呑まれてしまってどうしようもない時があります。

何をもって男がそれほどまでに女性蔑視に陥ってしまったのかは作中語られてはおらず、またそこが重要というよりも、愛情に対してそれを何らかの形で発露できないまま、どこかに攻撃的になることでしか身を保てなかった男の哀しさが、痛々しいし身につまされる。(で、ここで共感してしまう分、自分も男の側に転がることだってあるかもしれないと、それが怖い。)

何かに愛情を向けるとき、それが一線を超えていないか。少なくとも超えてしまったら、せめて気づいて引き返せるか。
踏む外す一歩手前でこの話を思い出せたらいいなと思います。



P.S もなちゃんかわいい。格好いい。やっぱり彼女の言った言葉が最強なんですよね。
アイドル活動している自分を客観的に見て、化物になってしまった男にも自分なりの考えを言えるのは、彼女がアイドルという夢のような職業を、現実と向き合いながら築き上げてきたからなのでしょうか。あんな状況でよく言えたよと思います。


追記 2020年8月18日

1か月前に書いたnote感想文の表紙を変えてみました。前の方の表紙も格好良かったんですが、実はこの小説読んだとき、あまりの面白さに表紙の装丁とか…ファンアートみたいに勝手に作っちゃったんですね。

自信がないし、そこまで勝手にやってもいいかなぁ…とか、その時はヘッダー画像にしなかったんですけど、今もう一回写真に入れてみたら、なんか悔しくなるくらい格好いいんですよ。

すみません、差し替えました。

…それくらい好きな、僕に影響を与えてくれた作品です。この作品を書いてくれて本当ありがとうございます、とそれだけ伝えたくて書きました。



#怪獣 #note感想文  #小説感想 #テイル

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