【装う】「弱い頃」のユニフォーム
球技を楽しむ春がやってきた。
スーパーラグビー、Jリーグ、プロ野球……スポーツニュースも賑わいを見せ始めている。僕のスケジュール帳も徐々に、観戦日程で埋まり始めている。
故に、この時期は出費がかさむ季節だ。交通費、チケット代、そしてグッズ代。売店の「新発売!」という罪なポップを見る度に、財布との相談は続いていく。
そんなグッズ代で毎年悩むことがある。
今年はユニフォームを買うべきか、否かである。
ユニフォームは大体一着あたり数千円する。レプリカならば1万円は優に越える。スポーツに興味が無い人が見れば「高いなあ」と思うだろう。
ただ、自分の場合は金額の多い少ないが問題ではないのだ。
「ユニフォームを買うことで、応援しているチームが不振に終わったらどうしよう……」
◆
僕がユニフォームを買うと、そのチームはシーズンを散々な成績で終える。
そういう傾向があることに、数年前僕は気がついた。
例を挙げよう。
これは昨シーズンの話だ。勤務地が都内に代わり、仕事終わりに行けるスタジアムにも変化が生じた。
じゃあ、野球だったら神宮に行こう! それを見越して、僕はヤクルトのファンクラブに入った。外野自由席のチケットが貰えたり、グッズを買えばポイントが貯まるといった特典はもちろん、「ユニフォームがついてくる」というのにも惹かれた。白と黄緑を基調としたデザインも良かった。
結果、この年のスワローズは96敗もしてしまったのである。
◆
こうやって散々な成績を残したあと、僕は思うのだ。
「ユニフォームを買うから負けるのだ。今シーズンはユニフォームを買うのは我慢しよう!」。
我慢した結果、どうなるのか? なんと、応援するチームは突然強くなるのだ!
優勝争いの興奮、そして歓喜と感動。これらを浴びるに浴びた僕は、シーズンを終えて再び思う。
「この感謝の気持ちを、チームにお金を払うことで伝えたい……。よし、奮発して新しいユニフォームで今年は頑張るぞ!」。
かくして、失敗は繰り返される。
確かに、自分は意図的に弱いチームをピックアップし、追いかける節がある。そういうことを好んでやっている。だが、勝ち運は五分以上はあるという自負がある(ソースは僕の馬券的中率)。
なのになぜ、ユニフォームを買うと応援するチームは負けるのか。シーズンを散々な成績で終えるのか……。
◆
僕のタンスの一角は、そのチームにとって辛い時期のユニフォームで占められている。改めてこれらを取りだし、眺めているうちに、ふと気がついた。
「弱い頃」のユニフォームは「強い頃」の思い出とセットになっているのだ。
どんなスポーツチームにも栄光時代と暗黒時代はある。時期の長短はあるにせよ。
僕がユニフォームを買う時というのは、これから強い時期がいつまでも続くだろう、と勝手に浮かれている期間と合致していた。
そういう浮かれた気持ちから目を覚まさせるために、ユニフォームを買うのだ! と、見えない何かが仕組まれているのではないか?
僕にとってユニフォームは、弱くても情けなくても、そのチームを暖かく見守るべきであるという教訓の象徴と言えるだろう。
なので、買い続けたユニフォームは、大切に残しておかなければならないし、なるべく着続けていかなければならないのだ。
◆
さてさて。そろそろプロ野球も開幕だ。
ひとまず、今年もスワローズのファンクラブは継続する。でも、ユニフォームを貰わないコースを選ぼうと考えている。理由はあくまでも「去年と比べてダサいから」ということでお許し願いたい
どうもです。このサポートの力を僕の馬券術でウン倍にしてやるぜ(してやるとは言っていない)