過去のバラエティ番組のすゝめ②
【何でもアリ! 王道お笑いバラエティ】編後半です。
笑いの金メダル
先に言っておくと、この番組は筆者が初めて見たバラエティ番組です。要するに思い出枠。紹介しておいてアレですが、記憶が鮮明ではないので「この企画がスゴい!!」「あの回のあの芸人のアレは笑った」的な熱の入れ方が難しいです。ですが、コレが筆者にとっての”笑いの沼”へ浸かる入り口だと思うとやはり紹介しないわけにはいかないのです。通称”笑金”。
【見どころ・ウリ】一発屋のオアシス
ネタ披露が中心の番組なので、多くの若手芸人が出演し、この番組をきっかけに飛躍しました。しかしそれだけでなく、ネタの反響があった芸人にはプラスαで番組の中でレギュラー陣に混ざって企画コーナー等に参加したり、時には自分のコーナーを設けてもらえたりと、至れり尽くせりでした。
比較として同時期に放送されていたネタ番組の『爆笑オンエアバトル』や『エンタの神様』などはネタ披露のチャンスは用意してくれても、そこから先の御膳立てというものは特にありませんでした。あくまで”登竜門”であり、門を通った後は自分で何とかするしかないといった感じです。
この番組きっかけでブレイクしたのは何と言ってもヒロシ。司会のくりぃむしちゅーや三宅裕司に気に入られ、積極的に起用されました。さらには「投稿 あなたもヒロシ」「出張ヒロシ」といったコーナーなんかも設けられました。
他にも元々ブレイクしかけていたが、この番組での活躍でさらに飛躍したタカアンドトシ、ペナルティ、スピードワゴンなどもいます。タカアンドトシについては笑金終了後もくりぃむしちゅーと共に別で番組を持ったりしました。
笑金きっかけであろうとなかろうと、ブレイク芸人はとにかく積極的に出演させました。ネタ披露だけでなく、企画コーナーでも多くの出番を与えています。レイザーラモンHG、長州小力、ダンディ坂野、レギュラー、安田大サーカス、鉄拳、猫ひろし、まいける、ザブングルなどは出番が多かったです。
お分かりの通り、笑金で主に活躍した芸人は軒並み”一発屋”が多いのも特徴。若手のチャンスであるネタ披露も実力派なネタより、ショートネタやリズムネタなどの記憶に残りやすいインパクト系のネタが優勢な番組でもありました。
一発屋と言われてすぐに想像されるHGやダンディ坂野は勿論の事、タカトシやスピードワゴンなどの”本来は実力派”だった芸人達も「欧米か!」「あま~い」といった記憶に残りやすいフレーズで爪痕を残すことで笑金での出番を増やしていったのでした。他にもレギュラーメンバーだったますだおかだ岡田の「閉店ガラガラ」やチュートリアル徳井の”ヨギータ”キャラもこの番組発信だった様な。東京ダイナマイトもこの頃は変なエクササイズマシーンのネタを推してたよね。この5組は元々M1決勝進出の経験がある”正統派漫才師”だったのも興味深いところ。
つまり、この番組が与えた影響として”完成度の高いネタ”より、インパクト重視の芸人が強い時代になり、正統派な漫才師やコント師も他の武器としてキラーフレーズや濃いめなキャラを持っていなければ生き残れなくなっていった(様な気がします)。結果として、一発屋を生産し易い環境になり、次々と生まれては廃れていく、笑いの大量生産大量消費の時代の到来です。多くの若手にチャンスは与えられるが、飽きられるスピードもとんでもなく早い。
笑金発信で生まれたこの流れは、後を継ぐ様にして登場した番組『爆笑レッドカーペット』によってショートネタ全盛期に突入する事になります。
笑金→レッドカーペットの生産ライン。事実、笑金にも出演した芸人でブレイクへのリーチがかかった芸人は次にレッドカーペットで上がったりしてます。髭男爵、天津木村、アントキの猪木、どきどきキャンプ、Wエンジン、藤崎マーケット、いとうあさこ、バカリズムなど。いとうあさことバカリズムは生き残りました。
【オススメ企画・コーナー】
・ボケモン
→ポケモンのパロディ。芸人をモンスターに見立て、くりぃむ有田とゲストチームがトレーナー的な役割としてボケモンという名の芸人をチョイスしてネタ対決をさせるコーナー。色々と設定やらで装飾してますが、要するにただのネタ見せです。捻りやアイデア勝負はないゴールデン番組らしい企画ですが、シンプルに芸人のネタ見せなので、楽しめます。この時はまだ筆者も少年時代だったので大いに楽しんでました。
・お笑いブラックジャック
→一つ前に紹介した『ボケモン』の前身的なコーナー。トランプのブラックジャックの要領で審査員を笑わせた数の合計が21に近づけるようにするのがルール。前身なのに、こっちの方がゲーム性が高くて、企画としても捻りがあるのは今思うと謎である。
ボケモンもブラックジャックもワッキー無双だった気がします。結局、顔芸が最強。今でも覚えてるのは、ワッキーがお笑いブラックジャックで21に近づけるようにある程度審査員を笑わせた後に調整を図るためにネタ見せの残り数十秒は何もせず真顔で立ち尽くしていたら、その姿が面白過ぎて残りの審査員も全員笑ってしまいアウトになった事態が起こった件。有田もその事態に対して「そりゃ笑うよ。お前の存在自体が面白いんだもの」と芸人として最高の賛辞を送るのでした。
・ワンミニッツショー
→『爆笑レッドカーペット』の原型的なコーナー。制限時間1分のみでネタ披露というルールはインパクト重視のネタに拍車をかけた事は容易に想像出来ます。レギュラー陣が披露する分には罰ゲーム的扱いのコーナーでしたが、無名の若手にとっては登竜門的なコーナー。筆者は若井おさむ、えんにちが好きでした。勝ち抜き方式で、えんにちは5週連続勝ち抜いて賞金や笑金でのコーナー出演も与えられてました。他にもいとうあさこ、藤崎マーケット、弾丸ジャッキーなども出演し、登竜門をノックしました。そして程なくして同じ生産ラインの『爆笑レッドカーペット』でブレイクを果たすことになります。
(Mrワンミニッツの称号を持つ マイケル)
内村プロデュース
通称”内P”。放送終了後もファンには未だに根強い人気と復活希望が望まれる愛着番組。内Pイズムを受け継ぐ番組『有吉の壁』のレギュラー化により、内Pファンの熱は再び高くなっております。
筆者は放送終了後にその番組の存在を知り、ありとあらゆる手を尽くして3分の2程度は見ることが出来ました。リアルタイムに見ていない筆者でも深い愛着を持ってしまったので、当時のファンの熱狂ぶりは計り知れません。
【見どころ・ウリ】追い詰めれて花が咲く男達
(一応)内Pは毎回色んな目的を持って企画を進めますが、行きつくところほぼ全て大喜利です。王道なフリップ大喜利からシチュエーション大喜利、時には裸になってカラダは張ったりなど、THE・芸人的な事しかしません。トーク力はいらない、即興力・度胸・連帯性をもった芸人だけが内Pでは輝きます。
(コーナー「露天風呂だるまさんが転んだ」にて玉職人)
その頂点にいたのがさまぁ~ず。2人揃って大喜利力が番組内で群を抜いており、他人の回答から派生させる所謂”天丼”プレイが大得意。コレが内Pに連帯性を生み出しました。大喜利は個人戦に見せた団体戦だという事を内Pで知った筆者。そこに番組初期からさまぁ~ずと肩を並べる大喜利力と番組イチの見切り発車おじさん”Mr NO PLAN”ことゴルゴ松本。この3人が日替わりエースとして番組を初期から支えます。
相方のレッド吉田はゴルゴに比べて当初は目立って笑いを取る事は少なかったのですが、自らの志願で生まれた「今日のレッド」のコーナー以降、徐々に自分のスタイルを確立していきます。番組後期にはさまぁ~ずやゴルゴよりも笑いを掻っ攫うシーンも増え、日替わりエースは4人へとなっていきました。レッドは内Pを通じて芸人力を磨き上げ、そして開花をさせた、”追い詰めれて花が咲く”代表例と言えます。『有吉の壁』からもそろそろ”育成枠”みたいな立ち位置の芸人が生まれても面白いかもしれません。
(内P名物 レッドゾーン)
そして番組の象徴であるMCの内村光良。ウッチャンの傍若無人なMCにより多くの若手芸人が翻弄されます。しかし、グラサンをしても隠し切れない人柄の良さによってさまぁ~ずを始めとした多くの芸人に慕われ、傍若無人キャラにも関わらず若手が伸び伸びとする様子が伺えるのが愛着ポイントです。
何と言っても愛着度3万ポイントなふかわりょうは、ウッチャンに次ぐ番組内の古参レギュラーであり、番組のマスコット的存在。考える時間がそこそこある大喜利は得意なものの、即興力高めな大喜利となると明らかにスベリキャラへと化すふかわの存在は良い意味で足引っ張り要員であり、番組がガチガチになり過ぎないムードメーカーでもありました。イジられキャラというのは大事なポジションですが、彼のあしらわれ方と愛され方のバランスは多くの組織が参考にすべきです。「ふかわあっての内村プロデュース」と言っても過言ではないです。
【オススメ企画・コーナー】
・引き出し王決定戦
→ひとつのお題(シチュエーション)に対し何回ボケられるか、その「引き出し」の多さを見る企画。主にさまぁ~ずとゴルゴがプレイヤーとして参加します。ふかわとレッドは”引き出しが少ない”という事で、この企画ではMC内村の隣で解説役に回る事に。(とは言っても、ふかわやレッドもたまに大喜利に混ざるハメになりますが)
レギュラー陣以外のプレイヤー参加者もくりぃむしちゅー有田を呼んだりとちゃんと”お笑い実力者”しかこの企画には参加させない感があり、内Pの中では割とガチ感が強めです。(とは言っても、ひとつのお題に対して毎回2周したら手詰まり感が出てグダグダになるのがお決まりですが)
・笑わせ王
→あらゆる舞台セットで「笑わないポリシーを持つ芸人」を笑わせるコーナー。笑わせる対象としてバナナマン、有吉がよく出演していた。有吉にいたっては「笑わない王」の異名をもつが、同期のふかわ以外相手にはすぐに笑ってしまうオチ。
特にこのコーナーに強かったのはレッドや三村。突拍子もない勢い芸が受けやすい環境でした。そして三村はこのコーナーでムチャをしたばかりに膝を破壊してしまい、膝ぐんにゃりおじさんと化しました。名物「三村ダンス」も度々繰り出されますが、とにかく膝への負担が大きかったのでした。
(三村ダンス)
・今日のレッド
→レッド吉田が番組最後に一発ギャグを3つ連続で披露するコーナー。ちなみにレッドが出演していない回や出演していてもレッド以外の芸人がギャグを披露する「今日のなにがし」も存在する。「爆笑を取った事がない」という悩みをレッドが内村に打ち明け、そこから爆笑への飽くなき挑戦として設けれました。
ここから「パンパン!ここJAPAN!」などの名作ギャグが誕生し、自信をつけたレッドは「ウェスポン」「トン・トン・ワシントン!」「位置について、よーいドミニカ!」などのレッド語を武器に内Pで爆笑を取ることに。そしてレッド語を面白がったレギュラー陣が真似してレッド語を続け様に繰り出す件”レッドゾーン”が発生する事に。
筆者的に、内P以上に「面白い!」「あの企画は凄かった!」と思える番組はいくつか存在しますが、内P以上に”愛着が湧く番組”というものは存在しません。とにかく、そう思える番組です。