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笑いの祭典ザ・ドリームマッチが帰ってくる。あれこれ語ってみる 過去編②

前回の続き。③M1、キングオブコント世代達の参入 

からです。最後に筆者的ドリームマッチ傑作選も紹介します。

③M1、キングオブコント世代達の参入

前回の記事の伏線回収が多めになっています。

筆者は前回の記事内で第1~5回までは前期、第6~10回と真夏の若手芸人祭りの2回分は後期と呼んでいました。テーマでお気づきの方も多いでしょうが、M1、キングオブコント世代達の参入がターニングポイントです。

今やお笑いの登竜門であり、売れるための王道。大会の魅惑に憑りつかれ、売れること以上にその大会で優勝することを目標にする芸人も現れる程です。そんなショーレースの存在以前以後で芸人のネタ作りにおけるスタンスと技術が大きく変わるのは言うまでもありません。

前期出場の芸人達もおそらく第一にネタが評価され売れっこになった人達でしょう。しかし、M1やキングオブコント程の多くの人間を巻き込んだショーレースが以前に存在したでしょうか?芸人の参加規模や大会の歴史、視聴率などの話題性、どれを取っても他のショーレースとは一線を画します。なんと言ってもお笑いなのに、演出にポップさを極力排除した全体の”ガチ感”。これが緊張感を増幅させ、大会に重みと魅力が生まれました。

そして、この2つの大会の存在のおかげで漫才とコントのクオリティが格段に上がったことでしょう。前期に感じた粗削りなネタが多く、舞台設定とボケのキャラだけ決めておいて後は流れのままにという傾向から、M1、キングオブコント世代達の参入により徐々にネタが洗練され、クオリティや構成で勝負するペアが増えました。

逆に前期で必須だった本番中のアドリブ要素が薄くなったとも言えます。あくまで傾向ですので、これに優劣をつける必要はありません。好みの問題だと思います。

ちなみに筆者は正直、前期の方がグッときたペアが多かったです。最後に紹介する傑作選もおそらく前期のネタの方が比重が大きいでしょう。ネタのクオリティ重視の人は後期の方がオススメです。

第5回までを前期としたのは、参加者のほとんどがM1、キングオブコントへの出場未経験者だからです。タカアンドトシ(第3回)やハリセンボン(第4回)などのM1経験者も混ざっている回もありますが、全体の1~2割程度です。ニューカマー枠でがっつり後輩なので、ネタ作りはおそらく先輩方に任せてるでしょうし。前期最後の第5回はバッファロー吾郎、TKO、バナナマン、ブラマヨと4組が2大大会の経験者であり、後期への兆候を見せます。

そして、過去最多の31人の芸人が出場となった第6回は2大大会経験者が25人も。ちなみにFUJIWARAもキングオブコント2008に参加し、準決勝まで進出してますので経験者側としてカウントしてます。ドリームマッチ初出場も21人なので、ここで一気に主力が入れ替わります。前期の常連組だった松本人志、さまぁ~ず、雨上がり、キャイ~ンなどがここから参加しません。ダウンタウンは司会でいます。そしてスピンオフの真夏の若手芸人祭りの2回分はいずれも2大大会経験者の芸人がほとんどです。

クオリティや構成で勝負するペアが増えていきます。その兆候は早速第6回から。例えば、 

・バナナマン設楽×おぎやはぎ矢作ペア

ショートコントのオムニバス形式です。「ちょっとイラつく友人を関係を崩さずに傷つける方法」というテーマで最初は軽い傷つけ方から徐々にエスカーレトしていき、「最後は嫌われても良い、相手を直接傷つける方法」へとたどり着きます。最初に設楽がテーマの語り部役をしたり、4つの章に分けて傷つけ方を披露したりと前期にはあまり見られない構成の妙で勝負してます。

ショートコントのオムニバス形式というジャンルがそもそもレアケースなのですが、比較対象として、実は前期に似たような試みを披露しているペアがあります。第4回のガレッジセールゴリ×ココリコ遠藤ペアです。ドリームマッチでは彼らが初めてショートコントに挑戦しています。しかし彼らの場合、一応テーマは「バカ」らしいですが、特に統一感はなく、自分たちのやりたい事を全力でバカらしくやるって感じです。設楽矢作ペアが披露したネタと比べると、構成の妙で勝負しにいったとは言い難いです。

しかし、設楽矢作ペアにはなく、ゴリ遠藤ペアにあった要素があります。

”アドリブ”

です。本番中、ココリコ遠藤がショートコントの合間に入れていた動きに勝手にアレンジを加えてゴリを困惑させてました。組み合わせを決める段階では遠藤の役割はツッコミだったのにね。ネタ作成者はゴリですが、合わせの段階で遠藤が自分もボケたい!て言いだしたらしいです。まさか台本にないことまでやるとは。。。

しかし、これもドリームマッチの醍醐味!前期はそんな事態が目白押し!

他にも

・東京03×サンドウィッチマン伊達

そもそも4人という人数がレアケース。どうやら東京03が今までに書いたネタの中から「3人では出来ないけど、4人なら出来るネタ」があるから、それを披露したって具合です。東京03のネタ自体がもうクオリティの塊みたいなものです。伊達は人数合わせ感が強かったですが。

構成やクオリティとは少し別の話ですが、普段の東京03が披露するネタのテイストとは少し違ったのが興味深いです。普段の東京03は”誰にでも起きうる日常の中の葛藤”にフォーカスを当てるネタが多いです。しかし、伊達を加えたドリームマッチで披露したネタは「世間を偽る仮の姿での生活を優先するあまり、職務をたらい回しにするエージェント」といった少しSFチックであり、フィクション感が普段より強めでした。構成やクオリティが高いM1、キングオブコント世代がいつもと違う実験的なネタを披露することもドリームマッチの醍醐味の一つです。

これらの2つの例の他にも筆者的にクオリティや構成で勝負したペアを紹介します。

・第7回 サンドウィッチマン富澤×フットボールアワー後藤ペア

→「結婚して子供が生まれたら」と「結婚の許しをもらうために親に挨拶」という、滅茶苦茶やり尽くされた設定ですが、序盤のボケを終盤に伏線回収するなど、構成やクオリティが鬼高かったネタです。第7回の優勝ペアでもあります。伏線回収系の漫才はここ数年、”和牛”などが披露して、M1でウケやすいネタとしてトレンドと化しましたが、それを2011年の時点で披露してるのですから、ぱねぇ。。。

・第9回 TKO木下×サンドウィッチマン伊達

→「ボクサーの対戦VTRをスローモーションで振り返る」といったコントでです。笑いどころのほとんどをVTRに詰め込んだ構成は攻めてました。ただ、ウケはイマイチでした。ラウンドガールの演出といい、伊達を飼い殺した感は否めません。ネタを書いた木下がドリームマッチという舞台を利用して実験的なコントを披露したので紹介しました。紹介する中で唯一ちゃんとスベッてしまったペアです。他は概ねウケがいいものなので、クオリティが高い笑いを見たい人は是非。マニアックな人はコレも。

・第9回 ジャルジャル福徳×笑い飯西田

→当時のジャルジャルは完全にコント師であり、笑い飯は生粋の漫才師です。「無人島に流れ着いた二人」という入り口はかなりベタな設定ですが、汚らしい西田とずっとスタイリッシュな福徳という対比で笑いを生み出しました。そこから西田が毒キノコを食べる件があり、少しホラーテイストを加えたことでコントにちょっとしたストーリー展開があったのがポイントです。なんと西田は珍しくテレビでのコント披露はほぼ初らしいですが、風貌を上手く利用した汚らしさとツッコミが見事でした。

・第9回 ジャルジャル後藤×インパルス堤下

→コント師×コント師のペアなので、当然披露したのはコントですが、堤下の早口で間の早いツッコミの影響か、終始漫才っぽい掛け合いになってました。最後はあたかもセンターマイクがあるかのように漫才師の振る舞いをして堤下の「もういいよ」でシメ。少しメタ的要素もある漫才コントならぬ、”コント漫才”という新しい?ジャンルでした。どっちも意味一緒かな?

・第10回 ナイツ塙×ノンスタイル石田

→唯一見てない第10回ですが、記事を書くにあたってこのペアは動画がアップされてたので見ることが出来ました。両方ネタ作成者であり、漫才師でボケという被りまくりの2人ですが、テンポは真逆です。ノンスタイルはハイテンポ、ナイツはローテンポです。石田が主にツッコミ兼たまにボケ、塙はずっとボケという役割分担でした。そして肝心のテンポは普段の両方のテンポのままで掛け合わせました。ツッコミがハイテンポ、ボケがローテンポで心地いいズレ漫才になりました。はい、つまりはオードリーっぽくなりました。ノンスタイル、ナイツ、オードリー・・・アレ?2008年M1グランプリ決勝3組が・・・。 第10回の優勝ペアです。

第2回若手芸人祭り オリエンタルラジオ中田×小島よしお

→お勉強が出来て、キレキレの動きがウリの2人です。受験生と塾講師という配役でボケツッコミの垣根はなく、リズム感重視のコントを披露しました。2人の共通項であり、ウリを全面に出した!という感じです。あまりM1、キングオブコント世代って感じがしない2人ですが、トップバッターということを逆手にとって勢いのまま披露したことが印象的でした。

第2回若手芸人祭り オードリー若林×ノンスタイル石田

→第10回の組み合わせと打って変わって、ハイテンポ同士のペア。なお、オードリーの場合、若林がハイテンポで、春日がローテンポです。漫才はとてもハイテンポで小気味良く石田がボケ、それに合わせて徐々にエンジンが掛かっていく若林のツッコミ。設定はベタですが、掛け合いが絶妙で素晴らし過ぎました。これはコレで心地いい漫才です。文句なしの優勝ペアです。


最後に筆者的ドリームマッチ傑作選を紹介して終わります。第10回は見てないので省いてます。


筆者的ドリームマッチ傑作選

・第1回 ココリコ田中×さまぁ~ず三村ペア

→第1回の優勝ペア。田中の鬼気迫るけど分かりづらい説明にひたすら振り回され続ける三村が痛快です。三村をあそこまで引き出せた時点で優勝は明らかでした。


・第1回 キャイ~ンウド鈴木×ガレッジセール川田ペア

→「マジで大丈夫か」枠同士で組まされたペア。しかもどちらもネタを書かない方。しかし、蓋を開けてみると、新たな発見がありました。銀行強盗のリハーサルをする2人というベタ過ぎる設定ですが、ウドはまんまの感じでボケまくり、川田は一応ツッコミますが、基本的にウドの提案に賛同したりと”バカ”が目立ちます。ガレッジ川田はかなりの天然らしいので、素なのかも。。。計算がないからこそ生み出せた、芸能界屈指の天然ペアによる奇跡のドタバタコメディ。少し今っぽさを感じるので、再評価されそうなペアです。


・第2回 ロンドンブーツ1号2号淳×ダウンタウン浜田ペア

→第2回の優勝ペア。トップバッターなのに優勝したっていう、地味に凄い功績つきです。普段が”ドSな司会キャラ”という2人。今回はネタを書く淳が主導権を握って普段見ることが出来ない”いじられ浜田”を存分に見せてくれました。以降からTBS(リンカーンや水曜日のダウンタウン)は浜田をいじりまくる事に快感を覚えたような。ネタのクオリティや構成で勝負したのではなく、”人”を見せたペアです。テレビ的で面白かったです。


・第3回 志村けん×さまぁ~ず三村ペア

→第3回の優勝ペア。志村けんの往年のネタに三村がお邪魔してみた。途中で役割が入れ替わるという前期には珍しい構成の妙もありながら、後半に三村が志村をしばいて、罵る!という前回のペアを彷彿とさせる立場逆転劇があります。構成やクオリティで勝負すると見せかけたアドリブとリアクション勝負。ナイスなバランス感覚ペアでした。


・第3回 ダウンタウン松本×タカアンドトシ(トシ)ペア

→これも一つ前のペアと同様に大先輩であるダウンタウンのネタに、トシの「欧米か!」テイストを盛り込んでみた、という漫才。ダウンタウンのネタなのに松本の方がアガッていて、トシの方が冷静でキレキレに突っ込んでいるというね。トシすげぇな。


・第4回 ガレッジセールゴリ×ココリコ遠藤ペア

→前期と後期を比較する時に出したペア。その時は少しディスが入りましたが個人的には面白かったです。結婚式の入場曲から水戸黄門のテーマに変わるヤツは筆者が飲みの席でギャグの無茶ぶりをされた際にやったら爆笑を取れた思い出がありますので、感謝してます。あっ、でも高田延彦の件はイマイチです。


・第4回 さまぁ~ず大竹×出川哲郎ペア

→第4回の優勝ペア。基本、大竹と組んだペアは軒並み面白いですが、大竹に振り回されて一番魅力が引き出されたのは出川でした。「出川さんを殺しながら生かす」という大竹の発言通りのコントでした。


・第5回 雨上がり決死隊宮迫×ネプチューン堀内ペア

→ドリームマッチを振り返る段階で一番異質だった事に気づいたぺア。ドリームマッチに抗い続ける男、宮迫と予測不能のファンタジスタ、ホリケン。コント師二人が披露したのは漫才。そしてホリケンはフィーリングカップルの時はツッコミ役。もう「なんでやねん!」な要素が詰め込まれ過ぎです。


・第5回 さまぁ~ず大竹×ブラックマヨネーズ小杉ペア

→天才大竹と現役No1ツッコミ小杉のペアだから、つまらないわけがない。出川の方がいつも以上に魅力を引き出されていたが、小杉はツッコミの能力が高すぎたのでコレが当たり前ぐらいに思ってしまいました。


・第5回 ダウンタウン松本×ウッチャンナンチャン内村ペア

→第5回の優勝ペア。大物同士でドリームマッチ感が一番強い。しかし、そんなネームバリューに甘えず、ネタの構成や演出の下準備など、とにかく凝っていた。そして面白かった。高すぎるハードルを越えてきた2人はやはり”生きる伝説”だった。


・第5回 キャイ~ンウド鈴木×次長課長井上ペア

→隠れた名作ペア。特に井上については一つテーマを設けようかと悩むぐらいにドリームマッチにおいては名脇役だと思う。筆者的に全体を見ても1,2を争う程の相性の良さを見せくれた2人。井上はツッコミという役割ながらツッコミ過ぎず、暴走するウドを転がし続ける姿が痛快。この他に井上はエドはるみ、ロッチ中岡と”変な人”と組むことが多いことから「猛獣使い」と河本から称されてる。まさにその通りで「マジで大丈夫なのか」枠を一番使いこなせるのは彼ではないだろうか。井上はもう一回ドリームマッチに出てほしい。バイきんぐ西村と組ませてみよう。


・第6回 バナナマン設楽×おぎやはぎ矢作ペア

→前期と後期を比較する時に出したペア。ネタを書いた設楽らしいSっ気たっぷりな役に矢作が傷ついてゆく。汗かくタイプのツッコミ(日村、三村、小杉など)との相性は間違いないが、矢作みたいなタイプのツッコミもおいしくできるんだから、恐ろしい。


・第6回 東京03×サンドウィッチマン伊達ペア

→上記で書いてるので、短く。構成の妙を最大限に発揮させたネタ。流石は東京03。伊達もツッコミは流石だが、伊達じゃなくても良かったかな。


・第7回 バナナマン設楽×キングオブコメディ高橋

→高橋の素の変な部分を見逃さずにネタに盛り込んだ設楽のドS。設楽も大概に猛獣使いだが、井上と違うのは設楽の場合、相方を猛獣に仕立てあげてることかな。パーケンの黒い部分が当時は面白かったが、今見るとブラックユーモアが強いかも。


・第7回 サンドウィッチマン富澤×フットボールアワー後藤ペア

→第7回の優勝ペア。上記で書いてるので、短く。漫才においてはコレと若林石田ペアの2強だな。どちらもM1優勝出来るレベル。


・第7回 野生爆弾川島(くっきー)×おぎやはぎ矢作ペア

→くーちゃんのシュールな世界観全開なんだけど、それに難なくハマる矢作も矢作だなって。矢作ってカメレオン系芸人だよね。ガラスのけ破りと野菜炒めは今見ても笑う。


・第9回 渡辺直美× 小籔千豊ペア

→第9回の優勝コンビ。新喜劇で培った、ベタを突き詰める事に長けてる小籔と強烈なキャラの渡辺直美のコント。前期っぽい。しかしシンプルイズベスト。第8回の秋山×小藪のそんな感じだった。


・第9回 サンドウィッチマン富澤×バイきんぐ小峠ペア

→コレもシンプルイズベスト。サンドウィッチマンとバイきんぐのネタってそういう感じだもんね。構成に奇をてらい過ぎない。強力なボケと強力なツッコミで笑いを作る。さまぁ~ずっぽいよね。サンドウィッチマンはさまぁ~ずに影響を受けたらしいけど、バイきんぐはどうなんだろ。


・第1回若手芸人祭り エドはるみ×次長課長井上

→フィーリングカップルでは残りもの同士だが、面白かった。”猛獣使い”の井上がエドはるみの猛烈アピールを上手くあしらう。何気にエドはるみの演技が上手い。


・第1回若手芸人祭り バナナマン設楽×ブラックマヨネーズ小杉

→小杉にひたすら喋らせ泳がせるというまた違った手法でドSを発揮。小杉はツッコミなのに設楽より言ってることがおかしくなっている時があるのはブラマヨの漫才っぽさあるよね。


・第2回若手芸人祭り キングオブコメディ今野×ノンスタイル井上ペア

→変な顔同士のペア。ツッコミの井上のナルシスト部分もきっちり生かしてあるし、最後の「それでも浦島太郎かよ」ってセリフもキレイな落ち方だった。掛け合いの所々に上手さが光る高品質なネタだったのが意外。もっとグだるペアだと思ってた。


・第2回若手芸人祭り ノンスタイル石田×オードリー若林ペア

→第2回若手芸人祭り優勝ペア。上記で書いてるので、短く。本人たちの言葉通り、ホントにやっていて楽しいが伝わってくる。息がピッタリ。




 




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