空色のブラウスが連れてきたもの・その2
この日、私のイライラはMAXだった。
理由はステレオの音と臭いだ。
その音と臭いを放つ本人は、全く気にしていないから更に腹立たしくなったし、苛立ちを上手く伝えることができない自分にもイライラしていた。
人とのコミュニケーションに私は自信がない。だから困っている音と臭いについて、本人を不快にせず伝えることができないとその日も思った。使う言葉を間違えてしまいそうだった。
だから何も言わないことを選択した。
外は大雨。
大雨だけど、この場所を離れるしかリフレッシュの方法はない。
そして、私は車に乗り込んだ。
どこかへ行くのなら山の向こうの「うた種」さんだ。
もなか市で買った空色のブラウスのボタンを探しに行こう。
外出は正解だった。
私好みのボタンは見つけたし、もう一つ大きな発見があったのだ。
うた種さんの敷地に「OPEN」という札のかかってる小さな小屋が目に入った。
何屋さんかな?
建物の中が見えないから、久々にドキドキしながらドアを開けた。
暖かな空気と共に、目に飛び込んできたのは壁一面の本だった。
私は本を読むのが不得意なのに本屋は好きだし、本を買うのも好き。
だから、目に飛び込んできた風景は私の心を踊らせた。
「いらっしゃいませ」
店主であろう人が言った。
「雨もいいですね。」と私が言うと
「そうですね。落ち着いていいですね。」
と返事をくれた。
「すこし見せてください。」
私はひとこと言って、小さな室内の楽しそうでカラフルな本達を見回した。
本達は輝いて、ニコニコと私に微笑んでいる。
自然の本、エッセイ集、詩集、美術書、絵本などなど。
「素敵ですね。たくさん本を読まれるのですか?」
私は尋ねたくなって聞いた。
「本は好きですが、読むのは遅いんですよ。」
それから店主さんと、ゆっくり会話を交わす。
なんだか気持ちの良い時間が流れる。
そして、店主さんがオススメしてくれた本を持ち帰ることにした。
ネットでポチっと買う時代、
会話をしながら、買い物をする贅沢を久しぶりに味わった。
もう私は、ほんの少しもイライラしていなかった。
それどころか、とってもホカホカと良い気分になっていた。